[Strategy&インタビュー]最上流の経営課題に取り組む戦略ファームの実像に迫る
グローバルで33万人のスタッフを抱えるPwC。Strategy&は、そのPwCグローバルネットワークにおいて、戦略コンサルティングを担うチームです。
同チームの前身はコンサルティングファームの先駆者として知られるブーズ・アンド・カンパニー。2014年のPwCとの統合以降Strategy&と改称され、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)における戦略コンサルティング領域の専門チームとして活動しています。PwCのメンバーファームとなったことで、最上流の戦略案件に強みを持つエキスパートチームとして、多くの企業から指名されています。
今回はパートナーの唐木明子氏とマネジャーの建川友宏氏に、Strategy&の特徴やカルチャー、求める人物像などについて、お話を伺いました。
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Index
♯1 “聞くこと”を大切にするコンサルティングファーム
コンコードエグゼクティブグループ(以下、CEG)西谷戦略コンサルへの転職は引き続きとても人気が高く、当社にキャリアのご相談にいらっしゃる方が志望されるケースは年々増えている印象です。
しかし、知っている戦略コンサルティングファームは数社のみで、貴社の説明をすると「総合ファームの戦略部門と思っていた」と驚かれる方が珍しくありません。
本日は、Strategy&というチームがPwCコンサルティングのなかでどのような存在なのか、そしてどのような組織なのかなどを中心に、お話を伺わせて頂ければと思います。まずはお2人の自己紹介をお願いします。
Strategy& パートナー 唐木 明子氏
Strategy&唐木明子様(以下、唐木) パートナーの唐木 明子です。Strategy&の前身であるブーズ・アンド・カンパニー(以下ブーズ)時代から在籍しており、実は西谷さんとは、ブーズ時代の同期で、ほぼ同じタイミングでの入社でしたね。
CEG 西谷そうですね、入社日が1ヵ月ほどしか変わらなかったのではないでしょうか。懐かしいですね(笑)ブーズからStrategy&になって変わったことや変わらなかったことも含めてお聞かせいただけたらうれしいです。
Strategy&唐木わかりました。ブーズに至るまでの経歴ですが、まず新卒で外資証券会社に入社しました。
実はもともと企業の経営支援をしたいと考え、投資銀行部門を希望していたのですが、法務部門に配属された形となります。それでも当初は、金融改革に伴う法務対応について、日本代表直下でプロジェクトを推進するなど、経営に近い仕事もあったので、面白さを感じていました。しかし、社内の体制変更でそうした業務は少なくなってしまったため、やりたかった企業のアドバイザーとしての道に進むべく外資系戦略コンサルティングファームに転職しました。
業務内容も刺激的で、同僚にも恵まれましたが、ハードワークで精神的にはきつかったですね。しかし、2年間は頑張ろうと決めていたので、その期間は全力で走りました。
そのあとは1社目の上司から声を掛けてもらって投資銀行に参画し、現在の職は、2社目時代の同僚が先にブーズに転職していて、その方がご紹介くださいました。人に恵まれて職を得ているような経歴ですね(笑)。
ブーズ入社後、統合によりStrategy&と名前は変わりましたが、金融やヘルスケアのクライアント企業を担当した後、現在に至るまで消費財・小売りを中心に経営課題の解決をご支援しています。
CEG 西谷お人柄が伝わるエピソードですね。唐木さんであれば他のコンサルティングファームからも引く手あまただと思いますが、Strategy&に在職される理由を教えてください。
Strategy&唐木ブーズに入社を決めた理由は“聞く姿勢”にすごく共感したからでした。実は転職する前に、クライアント側として、ブーズにコンサルを依頼したことがありまして。さまざまなコンサルティングファームの方に相談し、どのファームに依頼しようかと悩んでいるときに、ブーズのコンサルタントの“聞く姿勢”に好感を抱きました。こちらの話を聞く前に、膨大な量の資料を準備してきてくださったファームもありましたが、ブーズは「まずは聞く」という姿勢が印象的でした。何ら先入観を持たず、こちらの話を聞いたうえで的確に回答をいただき、伴走してもらうパートナーとして手ごたえを感じました。この姿勢はStrategy&となった今も引き継がれていると感じます。
CEG 西谷それでは、建川さんにも自己紹介をお願いできますか。新卒で入社されたとお伺いしております。
Strategy&建川友宏様(以下、建川)はい。2015年の新卒としてStrategy&に入社をしましてさまざまな業界を経験させてもらいました。最近は製造業のチームに所属をしていまして、自動車会社などのモビリティ領域やエネルギー領域を中心に担当しています。
CEG 西谷建川さんはなぜStrategy&に入社を決めたのでしょうか。
Strategy&建川私の場合は、総合商社とコンサルティングファームを軸として就活をしていました。理系でしたが、研究をしながら専門性を磨いて仕事をするというよりも、ビジネスに関わっていきたいという思いがありました。その中でコンサルを選んだのは、コンサルティングファームで働くことで、課題解決など、ビジネスで役立つ汎用的なスキルを身に付けることができるだろうと考えたからです。社会人になり、数年後に、やはり商社に行きたいという思いが出てきたらそのときに転職してみるのも良いと思いました。ただ、実際に入社してみると、コンサルタントという仕事が非常に自分に合っていると感じます。さまざまな業界に関わることができ、日本を代表するような企業が抱える課題解決に貢献できるので、飽きがこないエキサイティングな仕事だと思います。
CEG 西谷仕事内容だけでなく、キャリア構築の観点もふまえて、1社目にコンサルティング業界を選択されたのですね。戦略コンサルの中でも、Strategy&を選んだ理由は何だったのでしょう。
Strategy&建川面接をして頂いた際に、各社のコンサルタントの方々にお会いできますよね。そのときに「この人と働きたい」と憧れる先輩方が多いと感じたからです。先ほどの唐木の話を聞いて私も共感しました。コンサルは頭の良さや経営課題の解決のスキルなども必要ですが、心を開いてもらうようなアプローチができることもプロジェクトを成功させるためには必要でしょう。Strategy&ではそうしたアプローチをできる方が多いです。きっとそれは「まずは聞く」という姿勢を徹底しているからですね。
♯2 グローバル30万人のナレッジを活用できる強さ
CEG マネージングディレクター 西谷 有生
CEG 西谷それでは、PwCにおけるStrategy&の強みについて、ご説明いただけますか。
Strategy&唐木 Strategy&は100年の歴史のあるブーズ・アンド・カンパニーがベースになっています。そのため、「コアストラテジー」と呼ばれる最上流の戦略テーマのコンサルティングに特化しており、キャリア構築や採用、育成なども、ブーズ時代の体制をできる限り保っています。
ただ、PwCに加わったことで、戦略コンサルとしての価値を保ちながら、各法人と連携し、PwC全体で質が高いサービスを提供できています。また、PwCにコアストラテジーを専門とするStrategy&が入ったことで、他の総合ファームにはない強みが生まれています。
CEG 西谷PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)におけるStrategy&の位置づけについても教えてください。
Strategy&建川まず、PwC Japanには、コンサルティングファーム以外にも、法務や監査など、さまざまなプロフェッショナルファームがあり、約10,200人のスタッフが在籍しています。つまり多様な知見を持つプロフェッショナルが多数在籍しているということです。そういったノウハウを活用しながら活動できるのは、Strategy&の強みです。
Strategy&唐木グローバルでは、およそ33万人のプロフェッショナルが在籍しています。プロジェクトを遂行する時には、この33万人のナレッジを活用できるということが、どれだけ大きなインパクトを生み出すか、ブーズがPwCのメンバーファームになったときに感じました。
CEG 西谷ありがとうございます。Strategy&の強みや他のチームとの連携についても教えてください。読者の方の関心も高いと思います。
Strategy&唐木Strategy&はブーズを継承するチームであり、コアストラテジーを担当します。その上で、領域別の戦略テーマの検討や、実行に至るまでの支援を、他の戦略チームが担っています。具体的には、M&Aを通じた事業再編や異業種連携を専門とするX-Value & Transformation、DXなどのトランスフォーメーション戦略の策定から実行までを支援するTransformation Strategy、テクノロジーの知見をベースとして新たな事業やサービスの構築をサポートするTechnology Strategyといったチームです。
Strategy&とこれらのチームは密に連携しているため、コアストラテジーの部分から実行に至るまで、一気通貫での支援が可能になっています。
CEG小寺最上流の戦略課題まで対応できる、経営戦略コンサルティングのプロフェッショナルがいると同時に、PwCネットワークとしてシステム周りまで一気通貫で改革できる強みを持っているStrategy&だからこそ、お任せしたいという案件も増えてきているのではないかと思います。
Strategy&唐木そうですね。ご依頼が多くなっているのは、おっしゃる通りです。ただ人がいなければ、ご依頼をお受けできないので、ぜひ、良い人に来ていただき、チーム体制をより強化したいですね。
♯3 DX、サステナビリティ、地政学… 新たな課題の解決を支援
Strategy& マネジャー 建川 友宏氏
CEG 西谷最近ではDXを担う人材のニーズが急増していると感じます。PwCコンサルティングとしても、そのような案件のニーズが増えていると思いますが、Strategy&はDXのような案件にも関わるのでしょうか。
Strategy&建川そうですね。ただ、一部分のプロセス改善ではなく、従来のビジネスそのものをデジタルの活用により変革するようなご支援が増えています。具体例としてグローバルで事業展開している日系のクライアントから欧米企業と比べて生産性や売り上げの伸びに課題があり、その要因の一つが、デジタル化の遅れではないかということで相談を受けました。このような時、Strategy&の戦略コンサルタントが、最新のデジタル技術を使って課題を分析し、今後どのような変革ができるかクライアントとともにアイデアを出し合いデジタル投資の意思決定を支援します。その後、具体策の立案から実行のフェーズにおいては、DXなどのトランスフォーメーションを支援するTransformation Strategyのコンサルタントやストラテジーコンサルティング部門以外のコンサルタントが連携します。
CEG 西谷やはりStrategy&やPwCコンサルティングの特徴は、他チームとの連携があるということですね。
Strategy&建川そうです。申し上げた案件も戦略チームと他チームのコラボレーションで、初期段階ではStrategy&のコンサルタントだけで進め、実行フェーズに進む中で徐々に他チームへと移行していきました。また、短期の案件でも、業界専門のチームなどと、コラボレーションをする機会は多いです。
CEG 西谷Strategy&だけで完結するような案件は、多くないということですね。
Strategy&唐木そうですね。最近では、 DXだけでなく、サステナビリティや地政学といった領域の案件も増えています。PwCの各法人は独立しているのですが、X-LoS(Cross Line of services)という部門や組織の壁を越えて協働するカルチャーが根付いているため、さまざまなメンバーと連携をしながら遂行するプロジェクトも増えています。
CEG 西谷サステナビリティや地政学などは昨今の世界情勢を色濃く表していますね。企業が抱える課題のテーマ自体が複雑になり、多様化しているため、PwCさんの強みである専門チームとの連携により、クライアントへますます価値が高いサービスを提供できるということでしょうか。
Strategy&唐木その通りです。サステナビリティの領域では、経営レベルでサステナビリティを推し進めるための議論をするケースが増えてきています。これまでのように、何か社会に良いことを還元する、というような姿勢ではなく、経営戦略として本業でサステナビリティを追求する姿勢が各社ともに出てきています。Strategy&は、ESGなどの観点も含めて、最上流の戦略サポートを行うほか、具体的な施策の検討から実行に至るまで、サステナビリティの専門チームと連携しながら支援しています。
また、リスクマネジメントの中に、地政学の項目が入っていない日本企業はまだまだ多いというのが現状です。しかし、皆さんもご存知の通り、経営戦略を考えるうえで、地政学を無視できない時代になっています。諸外国における紛争や緊張の高まりを受け、企業も大きな課題ととらえています。Strategy&はPwC Japanの地政学リスクチームと連携し、支援をしています。Strategy&単体、あるいは地政学リスクチーム単体で対応するには難しい案件です。このようなプロジェクトを経験するたびに、PwC Japanとしての強みを実感しますね。
♯4 “Sleeves rolled up(腕まくりをする)”が合言葉
CEG 主席エグゼクティブコンサルタント 小寺 礼香
CEG 西谷Strategy&にとって、PwCのネットワークが大きな強みだということがとてもよく理解できました。
ここからは、他の戦略コンサルティングファームとの違いを教えてください。やはり、100年の歴史を持つ戦略コンサルであるブーズのノウハウを継承しているということは大きな優位性だと思うのですがいかがでしょう。
Strategy&唐木そうですね。先ほど、体制のお話をさせて頂いた際に“ブーズの体制が残っている”とお伝えしましたが、世界最古の戦略コンサルティングファームであったブーズのノウハウはしっかり継承されています。それだけでなく、ブーズ時代の仕事への姿勢も変わっていません。Strategy&の合言葉は“Sleeves rolled up(腕まくりをする)”。ブーズ時代から100年以上引き継がれているのです。理想論としての経営戦略ではなく、実現させ、継続することを強く意識したコンサルティングをおこなっています。戦略の実現性を高める観点から、クライアントの持つケイパビリティに着目した支援を提供する点も特徴的です。Strategy&独自のアプローチである”Fit for Growth”も、注力すべきコア事業を見極め、ノンコア事業で削減したコストをコア事業へ効率的に投資するといったケイパビリティ構築による成長戦略の一つです。きれいごとや実現不可能な理想を押し付けるのではなく、そのクライアントだからこそできる、やるべきである戦略を提案できるのが私たちの強みだと思っています。
CEG 西谷クライアントとともに課題を解決していく姿勢について伺わせてください
Strategy&唐木戦略コンサルというと、先生がやってきて、何か言いたいことを言う、というような印象を持たれがちですが、Strategy&のコンサルタントはクライアントのさまざまな立場の方から“Listen”しますね。徹底的に聞き、言うべきことは言う。そのためには信頼関係が重要ですから、できる限りクライアント先、つまり現場に行くようにしています。一部の経営層の意見のみに基づいたトップダウンではなく、経営層から現場担当者までとことん話を聞き合意形成を図る「巻き込み型」の課題解決も、Strategy&の強みの一つです。結果として、全社的な意識改革や推進力強化にもつながっています。
CEG小寺コンサルでは過去プロジェクトのナレッジや、初期仮説をある程度は前提にしつつ検証を進めることも多いイメージをお持ちのかたもおられると思います。Strategy&は、そうしたアプローチとは異なるということでしょうか。
Strategy&唐木そうですね。課題解決に忠実であろうとすると、仮説ありきにすべきではないですよね。初期につくった仮説通りには終わらないのが一般的です。もちろん、初期仮説は立てますが、クライアント先で一緒にプロジェクトを進めるにあたりさまざまな現状を目の当たりにし、初期仮説にこだわらず柔軟に方向性を変えられる点に、私たちの強みがあると考えています。
CEG小寺なるほど。ナレッジの横展開や仮説を証明するためのプロジェクトになってしまうということはなく、クライアントの現状をしっかり見て、聞く姿勢がStrategy&の強みなのですね。
Strategy&建川その通りです。実は社内の人材育成でも同様のことがいえます。新卒で入社した職員に対しても「あなたはどう思う?」と必ず聞き、意見を求めます。クライアントと対する場面でも、マネジャーがすべてを説明するのではなく、入社1、2年目の職員にも発言を任せる人が多いです。
若手にとっては、良い勉強になりますし、一緒に働いていて心地良い人たちが集まっている会社だと感じます。
♯5 長い目線で人を育てるというカルチャー
CEG 西谷建川さんは新卒で入社されて仕事をする中で、Strategy&の人材育成について、どのように感じられたのか教えてください。
Strategy&建川育成を大事にするという核になる部分は、私が入社した当時から全く変わっていないです。評価方法の360度評価もまったく変わりません。
人を育てるというカルチャーが根付いており、Up or Outが前提というよりも、長い目線で人を育てているように感じます。
また、1年に1回の評価だけではなく、プロジェクトごとにコンサルタントとしての成長をサポートしてもらえる仕組みも以前と変わらず運用されています。プロジェクト内での自身の役割や目標について、上長と話し、プロジェクトが終わったあとにはその目標に対するフィードバックをもらう。次のプロジェクトの開始時には、前回のフィードバックに基づいて、強化すべき点をメンバーに共有してからスタートします。これを繰り返す中でできそうなところは任せてもらえますし、難しいところはフォローしてもらいながらチャレンジを続けることができます。Strategy&をファーストキャリアとして選択して、とてもよかったと思います。
Strategy&唐木360度評価を全員に対して徹底的に行うことは、Strategy&の大きな特徴だと思います。たとえば私の場合、直近でマネジャー1名の評価を担当していますが、その人が1年間一緒に働いたメンバー全員から話を聞きます。約20~30人くらいだと思いますが、パートナークラスから入社間もないメンバーまで詳細にインタビューを行います。それをレポートとしてまとめ、マネジャーより上のメンバーが全員出席する会議で議論し、評価を作り上げていきます。
CEG 西谷このような評価方法を実現するには、かなりエネルギーを使うので、覚悟がないとできない仕組みですよね。
Strategy&唐木おっしゃるように、覚悟も必要ですし、多くの人が関わるので、ミニプロジェクトを1人で回しているようなものなのです(笑)。
CEG 西谷メンター制度についても伺ってよろしいでしょうか。メンターとコンサルタントとの関わり方は具体的にはどのようになりますか。
Strategy&建川入社した日からメンターがつきます。メンターは、戦略コンサルタントとしてのスキル向上やプロジェクトでの課題などの相談はもちろんのこと、キャリアや働き方などについても相談できる先輩のような存在ですね。
CEG 西谷メンターが担っている役割は大きいですよね。私もメンターにはとてもお世話になりましたが、建川さんがメンタリングを受ける側だったときはどういう印象でしたか。
Strategy&建川実は私自身、引き続きメンタリングを受けています。メンターには本当に感謝しかないですね。入社した当初は、プロジェクトに何も貢献できずにかなり悩みました。悩みの渦中にいるときは、広い視野で物事を見ることがなかなかできません。しかし、メンターから長い目で見たアドバイスなどをもらいながら、プロジェクトに携わってきた結果、プロジェクトに貢献してステップアップできました。
私自身は現在、4人のメンバーのメンターを担当しています。最低でも月に1回は、話す時間をとっています。また、コロナ禍においてはFace to Faceでミーティングを持つことができず難しさもありましたが、現在は週1回必ず出社をするようにしています。プロジェクト外のメンバーと関わる機会にもなりますので、問題のない範囲でオンラインとオフラインを組み合わせながら、メンバーと関わるようにしています。私自身がメンターの方にサポートして頂いたように、私もメンターとして、これからもメンバーに貢献ができたら嬉しいと思っています。
♯6 進むインクルージョン&ダイバーシティの取り組み
CEG小寺PwC全体で力を入れられているインクルージョン&ダイバーシティ(I&D)について、Strategy&の状況と、出産を経て活躍されている唐木さんとしてはどのように捉えておられるかをお伺いさせて頂いてもよろしいでしょうか。
Strategy&唐木そうですね、年々目に見えて良くなっています。しかし、まだまだI&Dに関しては課題が多いことも事実です。女性の数を増やすというような表面上のI&Dではなく、抜本的な取り組みにしていくため、2021年にI&D推進チームを組成しました。パートナーが4名、ディレクターも2名入り、かなり多くのメンバーで構成しています。組織やカルチャー改革をどのように進めるかを議論し、さまざまな取り組みを進めています。
I&Dで重要なのは、トップダウンとボトムアップ両面からの取り組みです。トップだけではなく、メンバーもさまざまな意見を出し合いながら進めています。その効果もあってか、育児をしながら活躍する女性マネジャーもいますし、男性が数ヵ月にわたり育児休暇を取得することも一般的になってきました。
CEG小寺事例が具体的ですね。プロジェクトのキックオフのときに、育児で対応できない時間帯をシェアし合うという取り組みもなさっておられるとお伺いしました。
Strategy&唐木はい、そうです。私も保育園に預けている子どもを迎えに行く時間を共有しています。子育て中は急な用なども入るので、その時間調整をお願いすることもあるのです。メンバーの方も、同じように育児や介護など含め、プライベートの用事で動けない時間がある場合は、無理せずに共有してもらうことで対応しています。
CEG小寺唐木さんのチームはとても働きやすそうですね。
グローバルな視点で、I&Dで取り組んでいる課題はどのようなものがあるのでしょうか。
Strategy&唐木問題として表面化していませんが、国籍や文化の違いから、活躍の場が限定されているメンバーがいるのではないかという課題の解決に向けて動いています。ジェンダーや国籍、価値観の違いを受け入れ、それを価値として活かしていくような組織を目指しています。
♯7 コンサルタントの希望を反映させる「アサインルール」
CEG小寺昨今、コンサルティング業界において、マネジャーへのプロモーションが早くなっているというお話もお伺いしますが、Strategy&ではいかがでしょうか。
Strategy&建川一人一人のキャリアやスキルアップを最優先にしています。Strategy&の評価は基本的には1年に1回ですが、場合によっては半年に1回というケースもあります。例えば、3年ではなく2年半でプロモーションすべき人であれば、そのタイミングでもあり得ます。
CEG小寺なるほど、一人一人の成長をタイムリーに評価していただけるということですね。成長という観点では、どのプロジェクトにアサインされるかということも重要と思われます。アサインはどのように決まるのでしょうか。
Strategy&建川現在は入社いただいた後、まずはコンサルティングスキルの習得をしっかりチームでサポートするため、担当のインダストリーをしばらくの間1つに絞っています。新卒の方と中途の方で多少期間は違いますが、だいたい半年から1年弱ですね。例えば製造業のチームに所属したら、製造業のクライアントのさまざまなプロジェクトを経験します。その時は、コンサルタントとしての基本スキルの習得をする時期です。それが終わりましたら、さまざまなインダストリーの案件にアサインされていきます。
最近は、スタッフが出した希望に対してマッチングをする仕組みを採用しています。この業界を経験してみたい、というようなインダストリーが軸となっている希望もありますし、プロジェクトをマネジメントしたい、定量分析のスキルを磨きたい、などという獲得したいスキル軸での希望もあります。すべての希望がマッチすることは難しいですが、希望している項目の中で半分は合致する…など、できるだけ個々の希望に沿ってアサインするようにしています。
CEG小寺そこまで細かく希望を考慮できるということは、メンターとは別にアサインマネジャーがいらっしゃるということでしょうか。
Strategy&建川そうですね。メンターとは別に、アサインメント担当のスタッフがおり、調整をしています。
その他、早く専門分野を決めたい人はどうするのか、という質問もいただきます。専門分野に関しても、希望を出せるようになっています。希望を出さなければ、いろいろな業界のプロジェクトにアサインされます。担当したい業界があるということであれば、その希望を叶えられるアサインが検討されます。かなり自由度は高いと言えますね。
CEG小寺戦略ファームで専門分野を早めに決められるというのは珍しいですね。
Strategy&建川そうですね。若手でもすでに専門業界を決めている人がいます。自分次第ですね。
CEG 西谷入社直後、最初に担当する業界を選ぶときにも、コンサルタント側の意向は反映されるのでしょうか。転職後、最初にどのようなプロジェクトに関わるのかについては、転職を希望する方には、関心があると思います。
Strategy&建川転職直後であれば、その方のバックグラウンドなどを考慮して決めています。もちろん、希望を聞いて考慮もしますが、もともと土地勘のある業界を担当するほうが、コンサルとしての基礎スキルを高めることに集中できると思います。
CEG 西谷なるほど、コンサルスキルの基本を習得した後、希望のインダストリーに取り組めるということなのですね。
♯8 コンサルタントに必要な「合理性」と「柔軟性」
CEG小寺今回の取材で、ブーズ時代の最上流の戦略案件の強みに、PwCの強みが掛け算され、より広く深くクライアントの課題解決に貢献できるようになったとわかりました。さらに、人材育成や評価の面では他に例を見ないほど細かくサポーティブな仕組みがあることも、転職を検討される方にとって大変魅力的だと感じております。
お二人の考える、Strategy&で活躍できる人材像や求める人材像を教えていただけますでしょうか。
Strategy&建川合言葉が“Sleeves rolled up”ですから、クライアントと一緒になって、現場に入って課題解決をしたいと思われる方が良いですね。
入社時点でスキルがそろっていないため不安だという方でも、Strategy&は育成の仕組みは充実していますのでご安心ください。育成体制を最大限に活用して成長していきたいという、向上心のあふれる方とぜひご一緒したいなと思います。
新卒で入社した私から見ると、それまでのご経験という非常に強い武器を持っている中途採用の方は大変うらやましいです。そこに、コンサルタントとしての武器が加わることで、よりクライアントに貢献できる優秀なコンサルタントになれるでしょう。前職のノウハウや経験は活かしつつも、レバレッジをかけるために、必要であればアンラーン(過去の成功体験に固執せず、新しい考えを吸収する)の姿勢もとりながら、柔軟に変化できる方が活躍できるのではないでしょうか。
Strategy&唐木私は、この業界で成功するには3つの要素が必要だと考えています。
1つ目は、知的な意味でレイジー(腰が重い)ではないということです。飛び道具的な知恵を瞬発的に出すことは必要ではありません。クライアントが長期にわたって課題を解決した状態でいるために、何が必要かを深く考え続ける姿勢が重要です。論理的には正解でも、ステークホルダーを考えると正解ではないかもしれない。変化が大きい現実に向き合い、課題を直視して考え続けることは、面倒なことなのです。それを面倒だと思わないで、丁寧に向き合えるかどうかはとても大切です。
2つ目は、人と一緒に働けることです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、コンサルはチームワークで行う仕事がとても多いのです。人と働くことを楽しめて、それによって価値をお互い引き出し合えることが重要ですね。
そして3つ目は、自分の手柄を人に渡せる人です。コンサルタントは、クライアント企業が大幅な変革をなしたとしても、自分が関わったとは言いません。コンサルという仕事はどこまで行っても、アドバイザーだということをわきまえている必要があります。先ほど、建川が話をしたプロジェクトは話題になりました。しかし、建川が「これは自分が主導して進めたプロジェクトだ」などと公の場では言いません。大きな変革を成し遂げたのは企業の経営者であり、企業の皆さんだからです。世の中の一般的な評価ではなく、クライアントに喜んでもらえることをしたいと思えることが重要ですよね。
CEG 西谷深く納得しながら聞いておりました。貴社だけでなく、コンサルタントになりたい方、全員に届けたいメッセージです。面接では、かなり人物面を重視されているのかなと感じておりますが、いかがでしょうか
Strategy&建川ケース面接の際に重視しているポイントは、答えが合っているかどうかではなく、合理的なディスカッションになっているかということです。限られた時間の中で、初めて議論するテーマについて、ディスカッションパートナーに意見を言えるかどうかが第一関門です。その意見の方向性に違和感を覚えた際には指摘します。指摘されたことを理解したうえで議論を重ね、アイデアをより膨らませられるかという点が評価ポイントですね。ご入社いただいた後、アサインされたプロジェクトチームで活躍していただく際に必要不可欠なスキルだからです。言われたことをやるというよりも、まずは自分で考え、意見を言ってほしい。そして、その意見の修正や方向転換を厭わないかどうか、思考の柔軟性や合理性を面接では確認しています。
Strategy&唐木私も建川と同じポイントを見ていますが、面接での会話で確認しています。現職の仕事内容やStrategy&の志望理由といった、当たり前のことを聞いているだけなのですが、現在担当している仕事を選んだ理由や、人生において成し遂げたいことなどを聞いていくと、その方が本当に考えていることがわかってくるんですよね。
CEG 西谷Strategy&の面接では、会話を重視されているということですね。
Strategy&唐木そうですね。面接は、相互理解の場ですから、会話のキャッチボールがスムーズに続くかどうかは大切だと思います。その他に、面接の最後の10分で当社側に質問をいただきます。その内容で、人となりがわかるので、大切な時間だと思っています。
Strategy&建川そうですね。やはり、Strategy&のコンサルタントと話していただいて、雰囲気を感じていただくのが良いです。Strategy&は面接においてもまず聞くことを重視していますし、会話の中で出たアイデアに対して「この視点から見た場合はどう?」といった別の切り口も提案するよう意識しています。コンサルタントとのディスカッションを通じて、ご自身の考え方の新しいアイデアを得る機会にもなると思います。もしも転職をお考えの方で、Strategy&の面接を受けようかどうか、迷っているという方がいらっしゃいましたら、ぜひ1度受けてみていただきたいなと思います。面接は会社の中の人間と話せる好機ですから、有効に活用してもらえるとうれしいですね。
CEG小寺面接においても、双方向のコミュニケーションを大切にされているのですね。それでは最後に、貴社を志望される方へのメッセージをいただけますでしょうか。
Strategy&建川私はStrategy&に入って本当に良かったと思います。仕事柄、多くの企業を見てきましたが、自信をもって良い会社だなと思っています(笑)。働きやすく、仕事を通じて成長でき、やりがいもある。しかも、一緒に働く人が大変魅力的です。今、PwCコンサルティングだけでなく、Strategy&自体も成長期にあります。会社を大きくしていく中で、より多くの皆さんとご一緒できることを楽しみにしています。
Strategy&唐木日本は岐路に立っていると思うことがあります。COVID-19によってDXが遅れているのが露呈しました。それだけでなく、少子高齢化の解決法がない、財政がひっ迫しているという課題もあります。また、経済成長をもたらす産業が育たず、外貨を稼げていないということも大きな課題です。
ですが、私たちはそういった課題を解決できる立場にいます。日本の20年後、30年後を思い描き、それを実現させていくことに喜びを感じる人にはStrategy&でご活躍いただいて、より良い日本、世界をともにつくっていっていただけるとうれしいです。
CEG 西谷Strategy&の取り組みや仕事内容だけでなく、カルチャーや価値観まで、非常に理解が深まりました。本日はありがとうございました。
編集後記
“Sleeves rolled up(腕まくりをする)”という言葉に表されるように、Strategy&はブーズ時代から、クライアントとともに課題解決をしていく姿勢をとってきました。PwC Japanグループに入ってからも、その強みを活かしながらグループ内のチームと協働することで、より実現可能性が高い戦略の策定を可能にしています。
パートナーの唐木さんが話していた、コンサル業界で成功するための3つの要素「知的にレイジーではない」「人と一緒に働ける」「自分の手柄を人に渡せる」は、企業アドバイザーとして、クライアントについて考え抜き、戦略という価値に昇華させるStrategy&のコンサルティングファームとしての在り方を如実に示していると言えるのではないでしょうか。
インタビューは唐木さん、建川さんの話しぶりによって、和やかな雰囲気で進みました。穏やかな中にもクライアントに徹底的に寄り添い「絵に描いた餅」のような戦略は策定しないという強い覚悟が感じられました。
唐木さんが「私たちは、日本や世界が抱える、さまざまな課題を解決できる立場にある」と言うように、多様な課題を解決して、より良い日本や世界を作っていきたいという志を持つ皆さんに、チャレンジしていただければと思います。
東京大学法学部卒。外資系投資銀行で社内弁護士として金融自由化対応を担当した後に外資系戦略コンサルティングファームに入社。その後、投資銀行や事業会社を経て、ブーズ・アンド・カンパニー(2014年にPwCに統合)に参画。
消費財、小売を中心に、金融、製造業その他幅広い業種のクライアント企業に対して、事業戦略、新規事業創出戦略、グローバル化などのテーマを中心に支援する。
東京大学工学部卒。Strategy&に新卒で入社。製造業、製薬、消費財、小売り、金融・保険、総合商社、中央省庁等、幅広い業界のクライアントに対する支援経験を持ち、現在は自動車/モビリティ・エネルギー・製造業を中心としたコンサルティング業務に従事。主な支援テーマは、長期ビジョン策定、中期経営計画策定、事業戦略策定、新規事業戦略、市場参入戦略、事業リスク対応など。