スカイライトコンサルティング インタビュー
Jリーグの東京ヴェルディへの資本業務提携やインドでの3Dプリンターを使った事業展開などで脚光を浴びているスカイライトコンサルティング。
今回のインタビューでは、同社が躍進を遂げている理由から採用基準、将来の展望にいたるまで、羽物社長に直接お話を伺いました。
現在、成功している日系のコンサルティングファームでは、コンサルティングビジネスとあわせて、事業会社への投資や経営を行なう「ハイブリッド型」の会社が目立つようになりました。
コンサルティングサービスの拡大によって、比較的短期の売上を追う傾向が強い外資系のコンサルティングファームとは異なるユニークな成長戦略と言えるでしょう。
培ったコンサルティングスキルを活用して、社会へインパクトを与える事業に長期的な視点で取り組む羽物社長のお話は、「コンサルタントのキャリア」を改めて考える上で役立つエッセンスが満載されています。
キャリアビジョンについてお悩みの方、ピッタリくるファームが見つからないと感じている方、新規事業支援に関心をお持ちの方はぜひご一読ください。
⇒スカイライトコンサルティングの企業情報はこちらをご覧ください。
Index
#1 事業投資、事業開発、社会貢献――コンサルの枠を超えた「広義のコンサルティング」とは?
CEG 渡辺:
本日はどうぞ宜しくお願い致します。
スカイライト 羽物:
どうぞ宜しくお願い致します。
CEG 渡辺:
まずは、御社の事業内容と特徴についてお聞かせ頂ければと思います。
御社はコンサルティングサービスと併せて、「ビジネスイノベーション」というスポーツビジネスへの投資、インドでの3Dプリンターを活用したベンチャー企業の立上げ、起業コンテストといった新しい取り組みもされていますよね。これはどのような意図からなのでしょうか。
スカイライト 羽物:
スカイライトコンサルティングは名称のとおり、コンサルティングが主力の事業です。このお話をする際、広い意味でのコンサルティングと狭い意味でのコンサルティングというお話をよくしています。
狭義のコンサルティングとは、お客様からフィーを貰って、お客様から与えられた課題に応えていくこと。業務改善やシステム導入、法令対応などがこれにあたります。コンサルタントが働き、1ヶ月の単価があり、それが翌月に入金されるといった短期的なキャッシュフローで回るビジネスモデルです。利益もそこで確定するモデルになります。
一方、広義のコンサルティングとは、何らかの課題を解決して、結果として経済的に成り立てばいいというもの。事業開発やビジネスイノベーション、社会貢献もこれに該当してくると思います。
このようなものは、短期的な利益には直接結びつかず、弊社側である程度リスクを取ることになります。リターンを得られるとしても長期のスパンになり不確実性が高くなるからです。そういう長期的視点も持って取り組んでいる点は、弊社の特徴だと思っています。
長期の事業開発になると、他の企業様と組むこともあれば、弊社独自でやるということもあります。
CEG 渡辺:
コンサルタントが培ってきたスキルを活用して、従来のコンサルサービスの枠を超えて、社会に役立つ幅広い活動に取り組んでいく仕事――羽物社長のおっしゃる広義のコンサルティングに、高い関心を持つ方が急速に増えています。
御社がこのような領域に進出しているのは、社会的な変化やクライアントのニーズの変化など、背景に何があるのでしょうか。
スカイライト 羽物:
もともと、コンサルティングの枠にとらわれずにやっていこうというのが、創業時からの発想です。
我々はアクセンチュア出身のメンバーが中心になってつくったという経緯があり、だからこそアクセンチュアで出来なかったこともやろうという気持ちがあります。自分たちがリスクを取って投資するとか、事業開発をするというのは、当時のアクセンチュアの枠組みの中ではやりづらいことでした。そのような、やりたかったけど出来なかったことをどんどんやっていこうよ、という考え方はもともとありました。
しかし、やろうと言ってすぐにたくさんできるわけでもありません。
まずは企業向けのコンサルティングをしっかりやる。狭い意味でのコンサルティング事業をしっかり伸ばして行く。その上で、何かビジネスの芽があったら、リスクを取ってやっていくということを、方針としました。
このように活動する中で、我々自身も知見が深まり、いろいろなネットワークも出来てきました。
CEG 渡辺:
もともと創業時から、新しいコンサルティングや広義のコンサルティングを視野にいれていらっしゃったのですね。
スカイライト 羽物:
はい、そうです。弊社では「起業チャレンジ」という取り組みを行っています。20代のリーダーを主対象として、起業家を輩出しよう、応援しようというプログラムです。ビジネスプランを書いて応募していただく、ビジネスプランコンテスト形式をとっています。
3~4チームぐらいに絞ってから、それぞれに1ヶ月から1ヶ月半程度、弊社のコンサルタントがついて、プランをブラッシュアップしていきます。
CEG 渡辺:
コンサルタントの方がそんなに手厚くサポートされるのですか。しっかりとした丁寧なプログラムですね。
スカイライト 羽物:
そうなのです。もちろん、ブラッシュアップと言っても、コンサルタントが一方的に意見を言う訳ではありません。「そもそも、なんでこれやりたいの?」とか、「このサービスっていいと思うんだけど、誰が買ってくれると思っている?」といった問いかけをするのです。それによってさらに深く考えてもらうために、ブラッシュアップ・ミーティングを行なっています。
最終的にはビジネスプランにまとめて、全役員に向けてプレゼンをしていただきます。そこで高評価となると、最大300万円の賞金を出します。そのお金は、会社をつくる資金にしてもらいます。設立された会社の資本金のうち、15パーセントは我々のシェアになるのですが、「85パーセントはあなたにあげちゃいますから、会社をつくって始めてください!」というプログラムにしています。
CEG 渡辺:
太っ腹ですね(笑) 。しかも、コンサルタントがついてサポートしてくれるというのも、これまた太っ腹ですね。
スカイライト 羽物:
私のお腹も、(物理的に)太っ腹ですからね(笑)。
このプログラムは、今年で10回目となっています。2007年に最初の募集を開始して、第1回目の受賞が2008年です。リーマン・ショックの直前くらいに開始したわけです。
当時は、アクセラレーターなどのインキュベーションする人たちが、日本にまだほとんどいませんでした。じゃあ、我々がそういうことをやってみようか、ということでスタートしました。
CEG 渡辺:
コンサルティングファームに在籍する方から、「将来起業したいのですが、良いアイデアがないんですよね・・・」というご相談を受けることが多々あります。ですが、御社であれば、最先端のビジネスプランを見ることも出来ますし、多くの起業家と間近に触れあうことも出来ます。起業家を目指す方にとって、肌感覚も含めて、多くの刺激を受けることが出来る環境のように思います。
スカイライト 羽物:
プランをいろいろ見られることより、「リスクを取ってやっていいんだ」という感覚を持てるのが大きいと思います。
ビジネスアイデアに巡り合うかどうかは、その人によりますし、ひょっとしたら誰かが思いついたアイデアに参加するかも知れません。事業をやっていくことは巡り合わせの連続です。「あの時、あいつに出会ったから、今はこんな事業をやっているんだ」と言うこともありますよね(笑)。それでいいのかなと思っています。
CEG 渡辺:
「やっていいんだ」という感覚は、起業する上でとても重要ですよね。
スカイライト 羽物:
スカイライトでは、起業チャレンジだけでなく、人工知能などの最先端の動きに関する調査も行なっています。このような活動を通じて、認識が広がり、新しいことに取り組んで良いという環境ができてきていると思います。
#2 スピーディーに事業を立ち上げる、スカイライト流の“動く”コンサルティング
CEG 渡辺:
次に、御社のコンサルティングサービスについてお聞きしたいと思います。現在はどのようなテーマのプロジェクトを行なっているのでしょうか。
スカイライト 羽物:
コンサルティングのテーマとしては、多種多様なものがあります。
例えば、マーケティングを改善したい、営業活動を改善したい、といった営業的なこともあれば、ものづくりのプロセス改善、さまざまな業務の効率化といったテーマもあります。PMI(企業合併後の統合プロセス)でのシステム統合や工場の新設に伴う対応まで、実に多種多様です。
CEG 渡辺:
御社は、新規事業の立ち上げのコンサルティングでも有名ですよね。
スカイライト 羽物:
ありがとうございます。今、新規事業に取り組まないといけないと考えている大企業は増えていますね。
たとえば、これまでモノ作りに専念しているようなメーカーさんも、直接EC(イーコマース)で売れないかと考えていたりする。メーカーさんから見れば、ネットで売ることは、全く別の事業をつくるようなものです。サイトで商品をどう見せるのか、どうプロモーションするのか、在庫管理はどうするのか、発送をどうするのか、などなど一気通貫で新しくきちんとつくりこまなければいけません。
このように新しい事業をプランして、その実現に向けて関係者を動かすというプロセスを踏んでいくことを考えると、大企業内にスタッフが足りていないと感じています。
CEG 渡辺:
興味深いお話ですね。どのようなスタッフが不足しているのでしょうか。
スカイライト 羽物:
アイデアを実現させるには、まず実行計画に落としこむ必要があるわけです。検討事項は自社内にとどまらず、他社との提携、決済、物流、サイトをどことシンジケーションして見せていくかというように山ほどあります。かなりのパワーがかかります。
アイデアを思いついた人は、素晴らしいアイデアマンですが、ではその人が実行に移すための検討をすべて一人でできるかというとそれは難しい。アイデアマンは、たくさんアイデアを抱えていたり、社内で重要なポジションに就いていたりして、時間を割けないのですよね。
CEG 渡辺:
分かります。
スカイライト 羽物:
そうすると、アイデアを出した人の意向を汲みながら、計画を練っていく人が必要ですが、そこを担える人材が圧倒的に不足しています。さらに、計画に落とすだけでなく、実現しなければいけません。複数部署を巻き込んでいく力も必要です。
CEG 渡辺:
大企業にはたくさんの社員がいますが、そういったことができる人材は少ないですよね。
スカイライト 羽物:
決められた業務をきちっとやれば良いという訳ではありませんので。
アイデアを発案した方から、そもそものところを上手に聞き出して骨子を整理した上で、アライアンス先や影響のある部門との交渉、進捗管理に至るまで推進していく必要があります。
CEG 渡辺:
まさに、コンサルタントの仕事ですね。
スカイライト 羽物:
そうなんですよ。スカイライトでは、このようなプロジェクトをたくさん行なっています。
CEG 渡辺:
「クライアント企業の人材もMBAの知識を身に付けてきているから、コンサルタントは要らなくなる」と10年以上前からずっと言われています。
しかし実際には、コンサルティング業界はますます拡大しています(笑)。このような事業推進は、知識があれば出来るというものではありませんからね。
スカイライト 羽物:
MBAで分析手法をたくさん学ぶということは、もちろん素晴らしいことなのですが、それだけでやっていける訳ではないです。
現代は事業サイクルがものすごく短くなっています。ある事業がうまくいったとしても、半年後にはもう駄目になっているかもしれません。ある事業がうまく立ち上がっても、どんどんブラッシュアップしたり、その周辺で新事業を立ち上げたりしないと、どんどん廃れていってしまうのです。常に走り続けなければいけません。
しかも、事業レベルで新しいものをつくり続けられる考えや動きが必要です。事業の本質が分かって、設計もできて、リスクも分かって、分析的に考えられる人が、さらに動くというパワーを持ってなければなりません。MBAの知識だけでは難しく、実際に動かすというスキルが必要だと思います。
CEG 渡辺:
そうですよね。現在のコンサルタントは、一昔前のようなレポートをつくれば終わりという仕事とはだいぶ変化してきています。実際に動けることや組織を動かせることこそが、価値になっています。
スカイライト 羽物:
そうですね。お客様の企業も、成果を求めるという面が強くなっています。
また特にネット系の事業は、スピーディーに立ち上げて、ブラッシュアップしながらユーザーを飽きさせないように引きつけるといったアプローチが必要です。動き続けられることが大切なポイントになりますね。
CEG 渡辺:
御社では ITコンサルのプロジェクトも多いのでしょうか。
スカイライト 羽物:
ITやシステム領域のコンサルは、数ある領域のうちのひとつですね。
CEG 渡辺:
システムの開発は行なうのでしょうか。
スカイライト 羽物:
スカイライトでは開発はやっていません。経営者とベンダーさんの橋渡しをしているようなケースが多いです。
ITコンサルティングというと、SAPを導入するとか、あるいは、スクラッチから開発するという、開発ベンダーに近いイメージを持たれる方が多いですが、弊社の場合はこれとは異なります。
現代の企業は、業務にはシステムが必ず絡んでいます。業務を変えるためには、システムの変更も当然必要となります。
そこで、我々がユーザーさんの要望をベンダーさんにお伝えして、直してもらうところを担当しています。
もしくはそれに合わせて、パッケージを導入することやクラウドサービスを使うことを検討する場合に、効果的な使い方を解きほぐしてユーザーさんに伝える仲立ちのような役回りをしています。
CEG 渡辺:
そのようなIT領域のプロジェクトでは、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。
スカイライト 羽物:
ベンダーさんが開発するケースでは、要件を取りまとめてベンダーさんに渡して、その後、ベンダーさんのプロマネとは別に要件どおりできているかをチェックすることもあります。
もちろん、完成後はユーザーさんが新しいシステムを受け取りますが、それも実は容易ではないのです。例えば、新しいシステムの受け入れのためには、しっかりとデータ移行や業務移行をしなければいけません。そのために必要な関係者への周知や研修も必要です。在庫の棚卸しはいつまでにやるのか等々、多くのことを考えて実行しなければなりません。
我々が、全体の段取りを踏んだ上で、ベンダー側と業務側を取りまとめて、経営側に計画や予算、進捗状況、効果予測に至るまでレポートしていきます。
まさに経営層、現場、IT部門を仲立ちするイメージですね。
CEG 渡辺:
それらの全体像を考えて、自社内でとりまとめていくのはかなり大変ですよね。経営層、現場、IT部門が分断され、それぞれの思惑で動いている会社が多いです。
スカイライト 羽物:
そうなのです。こういったことをIT部門だけに押しつけるのは無理があります。IT部門を見ていると可哀想なことが多いです。現場が言っていることを解きほぐしてIT部門に伝えて、IT部門に技術的なリスクを指摘して、経営層に対しては、それが経営にどう影響を与えるのかを伝え、対応策を伝えるということを弊社がやっています。
ですので、自分たちでシステムをつくることは全く無いですし、先端の先端の技術まで知っている必要はありません。
技術的には大要を理解して、ベンダーさんと会話をできて、それを解釈してお客様の企業へ伝えることができればいいという役回りなのです。
そういう意味では、ITコンサルという言葉から想起されるものよりも、ビジネスコンサルにかなり寄っているイメージだと思います。
#3 スポーツ業界にも進出!好きな領域でのコンサルに挑戦できる環境
CEG 渡辺:
御社では、Jリーグの東京ヴェルディと提携されていますよね。スポーツ産業の経営や改革に関心を持つご相談者も大変増えています。
スカイライト 羽物:
スカイライトでは、自由、自立、自主的といった価値観を重んじています。プロジェクトへのアサイン先を自分で選べますし、営業ノルマが基本的にありません。
R&Dもコストをあまりかけない範囲であれば、自分がいいなと思った分野で自主的にやってよいことになっています。もしお金が必要になったら、経営会議でプレゼンをして予算を確保することも出来ます。
実はヴェルディの件は、この流れで出てきたものなのです。
CEG 渡辺:
社長の趣味から新規事業がスタートする会社も少なくないですが、羽物社長の趣味ということではないんですね(笑)。
スカイライト 羽物:
はい、そこは強調しておいて下さい(一同笑)。
僕はサッカー好きですけれど、ヴェルディのプロジェクトを僕がやれと言ったわけではありません。当時、新卒入社3年目の社員が、このプロジェクトを立ち上げたのです。
彼は、もともとサッカーをやっていて、東京ヴェルディの昔からのファンで、大学時代にはフットサルのイベントをやって、集まったお金でフットサルコート1面分くらいの地雷の除去をするNPOに参加していたそうです。
入社時から、将来はスポーツとコンサルティングを結びつけた領域で仕事をしたいと言っていました。
入社して3年間は、メーカーや小売業界向けの通常のコンサルティングを担当していました。
あるとき、ヴェルディさんと仕事ができると思うと突然メールをくれまして。それが始まりでした。
CEG 渡辺:
やりたいことに向かって、主体的に取り組んでいける文化が社内に浸透している証拠ですね。
スカイライト 羽物:
そうですね。彼にはヴェルディさんと伝手があったので、当時営業部長だった方とお会いして、何ができるのか検討がスタートしました。
その時期は週4日、別のコンサルティングプロジェクトで仕事をしつつ、残りの1日を検討に充てるということにしていました。その週1日でいろんな人と会って話を聞いて、情報収集して、どんなやり方ができるのか検討を進めました。
半年ほどでプランが具体化してきたので、私も含め、ヴェルディの事務所を訪ねて社長にお会いしました。その時は、もうサッカー談義ですよ(笑)。
CEG 渡辺:
それはもちろん、社長としてはすごく嬉しいですよね。スポーツビジネスの支援という社会的な意義があることへ会社が参画するということ。さらには、社員が、自分、会社、社会のためになることのために、自発的に動くように成長してくれたという意味でも。会社のお父さん役の社長としても本当に嬉しいですね(笑)。
スカイライト 羽物:
はい。いい息子、いい娘たちが育ってくれました(笑)。
CEG 渡辺:
まさに親孝行ですね。
スカイライト 羽物:
結局、出資してスポンサーになって、提案をしてきた彼をヴェルディのスタッフとして送り込むことになりました。ヴェルディの中で、サッカースクールなどを運営する普及事業と呼ばれる領域を担っています。その部門を成長させるために現場に入り、フィーは伸びた分の成功報酬という形で受け取っています。
CEG 渡辺:
まさにR&Dの仕組みを使って、事業につながった事例ですね。
やりたいことの実現に向けてチャレンジしやすい社風があるとともに、場合によっては業務時間の一部を使いながら実現に向けて動いていけるチャンスがあるというのは、非常に魅力的ですね。
#4 インドで3Dプリンターを使ったジュエリービジネスを立ち上げる
CEG 渡辺:
御社は、インドでジュエリービジネスを展開されるなど、コンサルティングの枠にとどまらずにビジネスプロデュースもされていますよね。
スカイライト 羽物:
この事業を提案してきたのは、インド人のスタッフなのです。彼は日本の大学に留学していて、新卒でうちに入社しました。
入社半年ぐらいは通常のコンサルティングを担当していましたが、起業家精神旺盛なもので、飲みの席で脇に座ってきて、面白い話があると言ってきたんですね(一同笑)。それがこのインドでのジュエリービジネスだったのです。
「飲んでいないときに一度プレゼン聞かせて」と言って、プレゼンを聞いて、じゃあやろうという話になりました。
CEG 渡辺:
なぜ、インドでジュエリービジネスなのでしょうか。
スカイライト 羽物:
実は、インドは金をたくさん買うんですよ。人口が多いというのもありますけど、金の購入額が世界一なのです。
CEG 渡辺:
そうなんですか、それは意外でした。
スカイライト 羽物:
インドのジュエリー業界は、産業としては非常に盛んなのですが、ビジネスモデル自体はとても古いままです。
指輪でいうと、デザイナー、型起こしをする人、型に合わせてつくる人、磨く人というふうに、全員分業になっています。出来た指輪をジュエリーショップが箱ケースに並べて売り、その中から顧客が買うというモデルです。
指輪を買うとなると、当然サイズ変更など出来ると思いますよね。ところが驚いたことに、高級ジュエリーショップでも出来ないんですよね。
CEG 渡辺:
驚くほどプロダクトアウトですね。
スカイライト 羽物:
プロダクトをつくる人は作る専門。それを大手が仕入れて、並べて、マージンを付けて売る、というやり方をしているんですよね。なので、サイズ変更とか、ましてやデザイン変更なんて全くできない。
そこで、カスタマイズできたら、新しいニーズを掘り起こせるのではないかと考えました。
3Dプリンターでデザインをカスタマイズしたり、3Dプリンターならではの、手でデザインできないようなものをつくれたりするだろうと。
このようにして、3Dプリンターを使ってカスタマイズジュエリービジネスをやろうということになりました。
そもそもインド人はジュエリーを買うのでニーズもあるし、インドは経済が伸びていてアッパーミドル層が分厚くなってきますからね。そういった層がカスタマイズした他の人と違うものを買いたいとか、自分に合ったものを買いたいと思うようになるのは自然なことだね、ということでスタートしました。
CEG 渡辺:
面白いですね。現在、インドでジュエリーを製作しているのですか。
スカイライト 羽物:
インドでつくって、インドで売っています。まだ小規模でしか行なっていませんが、いろいろと大変なこともあります。
CEG 渡辺:
どのようなことで苦労があるのでしょうか。
スカイライト 羽物:
ジュエリービジネスとしての苦労というより、インドでやること自体の大変さがあります。インドは配送網が整っていないですしね。あとはしょっちゅう停電が起こるのも困ります。3Dプリンターで造形中に停電すると停まっちゃうんですよね。
CEG 渡辺:
なるほど、やはり海外でのビジネスにはいろいろな苦労があるのですね。立ち上げた社員の方がインドに戻られてリードしているのですよね。
スカイライト 羽物:
今、ニューデリーにいます。インド人で日本の大学を卒業して日本で就職しましたが、今は母国でこの事業のトップをやっています。
CEG 渡辺:
若くても実力があれば、このような活躍ができるのですね。
スカイライト 羽物:
トランスコスモスが、スカイライトへ67パーセントの出資をしている親会社となります。当然、トランスコスモスへ今回の事業立上げについても説明しています。
インドのジュエリービジネスの話をすると、やはりはじめはかなり驚かれましたね(笑)。でも、今はとても関心を持ってもらっています。
CEG 渡辺:
トランスコスモスさんとしては、この事業をどのように捉えているのでしょうか。
スカイライト 羽物:
インドのECは伸びているということを彼らも知っています。今回のインドのジュエリービジネスもECです。「ECとして伸びていくマーケットに入っていく。これくらいのマーケットニーズがあって、このくらいのチャンスがある」と説明したら、「勝負どきに勝負するってことですね。それはもう大賛成です」といった反応でした。
彼らもオーナー企業ですし、起業家精神旺盛なんですよね。
CEG 渡辺:
なるほど、そのようなスタンスでいていただけるのは、とてもありがたいですよね。
また、トランスコスモスさんは、新しい領域の事業をしてきているので、その点でも理解がスムーズそうですね。
スカイライト 羽物:
そうですね。トランスコスモスは、日本だけではなく、グローバルECのサポートを標榜していて、ASEANにも進出しています。しかし、まだインドへの進出はあまり進んでいないので、その点でもマッチしていたのかも知れません。
CEG 渡辺:
なるほど。今後、トランスコスモスさんとインドで協業するような展開もありそうですね。
このような新しい事業展開についても、スムーズに受け入れていただけるのは、素晴らしいことですね。
スカイライト 羽物:
応援してくれています。本当にありがたいことですね。
#5 コンサル未経験者もスムーズに立ち上がる!スカイライト流の研修制度
CEG 渡辺:
未経験でコンサルティングファームへ入社する方の中には「未経験者の自分がついていけるだろうか?」と心配される方が少なくありません。
もちろん、最終的には自分の努力で成長していくしかないということは理解されています。とは言え、スムーズに立ち上がれるか否かは、コンサルティングファームによってだいぶ差があるのが実態ですので、さすがに気になるところです(笑)。
御社の人材育成の仕組みについて教えていただけますか。
スカイライト 羽物:
入社すると、コンサルティングファームの出身だったとしても、1ヶ月はまず研修があります。あと、システム系の仕事の未経験者であれば、これに加えて2ヶ月の研修があり、合計3ヶ月の研修プログラムとなります。もちろん、さらにOJTもあります。
CEG 渡辺:
最初の1ヶ月はどのような研修なのでしょうか。
スカイライト 羽物:
いわゆるコンサルの仕事術が中心です。ロジカルシンキング、クリティカルシンキングの他にも、自分で起案してプレゼンするといった総合的な演習もあれば、議事録の取り方もあります。
CEG 渡辺:
それはとても興味深いです。実は、議事録の作成法ひとつをとっても、コンサルティング未経験者の方にはよく分からないものですよね。このような基本からしっかり教えてもらえるというのは、すごくありがたいことだと思います。
正直、ほとんど何も教えてもらえないファームもあります。とにかく自分なりに時間をかけながらやってみて、上司のところに持って行くと、「何をやっているんだ!」と怒鳴られるケースはいまだに多いですからね。
スカイライト 羽物:
議事録は、中身を本当に理解出来ていないと、きちんと書けないですよね。そういう意味では、本当は難易度がとても高いのです。
研修では、まずは記録することを習慣づけるということからやっています。それでもやはり、ファーストアサイン先のマネージャーからは、「これくらいは出来るようにして欲しい」といった要望が出てきますので、それを受け止めて、研修プログラムを時折見直しています。
CEG 渡辺:
研修体制の整備は、プロフェッショナルファームの経営において、とても大切なことだと私は考えています。
中途入社の社員を、トレーニングせずに現場に入れてしまうと、様々な問題が発生します。
まず、未経験で入社した本人が、当然のことながらかなり苦労します。
さらに、プロジェクトの現場を率いているマネージャーにもストレスがかかります。「おいおい、エクセルくらいは使えるようになってから現場にきてくれよ」という感じですね(笑)。
当然、クライアント企業へのサービスのクオリティも下がります。もちろん本人が努力不足のケースも少なくはないと思いますが。
入社した社員が定着できずに離職する確率も高くなれば、採用コストが上がります。
やはり、スタート時の基礎研修はしっかり行なった上で、現場へ送り出した方が良いと思っています。
スカイライト 羽物:
そうですね。1ヶ月でどこまでできるのかということはありますが、それでもある程度は出来るようになってからプロジェクトへ送り出すというのは大事ですよね。
マネージャー側に対しては、最初、一定期間はクライアント企業からお金とらなくていいから、逆に預かってくださいという形で出しているのです。
プロジェクトで人が必要だからOJTでというのは実はあまり優先しておらず、採用したそれぞれの方がOJTで最初に入るプロジェクトとしてどこがいいのか、という基準で選んでいます。
CEG 渡辺:
明確にタダというわけですね。
スカイライト 羽物:
明確にタダです。やはり、プロジェクトもいろいろな種類がありますので、本人のキャラクターやそれまでの経験によって、相性があります。
ワークを頑張っていれば評価されるというところもあれば、気の利いたことを言えないと評価されないというプロジェクトもありますので、その辺りの相性を見ています。
まずは相性が良いプロジェクトに入ってもらって、パフォーマンスをあげてもらうのが一番いいですよね。本人にとっても最初の仕事ですし、受け入れる側にとっても、タダとはいえそれなりに負荷はかかっている訳ですから。
そのため、最初のプロジェクトだけは、本人に選ばせずに、こちらで采配するというスタイルでやっています。
CEG 渡辺:
他コンサルティングファームの出身者でも、まずは1ヶ月の座学の研修を受けてもらうということですが、どのような背景からなのでしょうか。
スカイライト 羽物:
マネージャーより前のクラスで採用されたメンバーは、まず1ヶ月は参加してもらっています。
やはり、うちはいい意味でも悪い意味でも仕事のやり方が整っていますので、それを最初に学んでもらった方がよいと思います。議事録を書いて、次の段取りについてみんなにシェアして、そのうえで動くというチームワークを重視したスタイルです。
リーダーとしてはそれをきちんと采配する人が優秀であり、サブリーダークラスだとその中身を正確に分かって、掌握し、必要なことに向けて動ける人が優秀です。
その下は全体を把握しながら自分のタスクをきちんとこなせる人が優秀なのであって、評価もそうなっています。
仕事のやり方がこのようになっていますので、研修でも同様のことを学びます。このやり方を身に付けてもらった方が、後々スムーズに他のメンバーと仕事ができることになります。
CEG 渡辺:
弊社も、他の人材紹介会社のトップクラスのキャリアコンサルタントが中途で参画してくれていますが、1ヶ月程度の入社研修に必ず入ってもらっています。
人材紹介業界では、しっかりと研修を行なっている会社は稀です。そのため、優秀なキャリアコンサルタントであっても、我流でやってきているケースが多いので、大変実りの多い機会となるようです。
スカイライト 羽物:
スカイライトのコンサルタントには、スカイライト流が浸透しています。やはり、仕事のスタンダードについて共通理解があると、仕事を進めやすいですよね。
また、他のコンサルファームだと、ある領域一辺倒という方もいらっしゃいますので、必ずしもコンサルティング業務全般の基礎を幅広くおさえている訳ではありません。
仕事の基本的なやり方をちゃんと共有して、クリティカルシンキング、ロジカルシンキングなどの研修では、頭の使い方も大事だという刺激を与えて、満を持してプロジェクトに旅立つ。そのようなやり方をしていますね。
CEG 渡辺:
1ヶ月のコンサルの仕事術の後の2か月は、どのような研修が行われるのでしょうか。
スカイライト 羽物:
システム開発のプロセスを学ぶ研修を2ヶ月間行ないます。
CEG 渡辺:
プロジェクトで開発をするわけではないかと思いますが、なぜこのような研修が用意されているのでしょうか。
スカイライト 羽物:
若いうちにシステム開発の経験をしておいた方がいいと思ってやっています。ただし、SIや開発系のコンサルファーム出身の方の場合は、既に経験されていますから、この研修を受けなくてもいいのです。
システムに関しては、やはり経験してみないと分からないという要素がありますので2ヶ月間だけやってもらっています。
CEG 渡辺:
PMOのプロジェクトなどに活きてくるということでしょうか。
スカイライト 羽物:
そうです。プロジェクトでは自分たちで開発をするわけではありませんし、2ヶ月やったからといって全部把握できるわけでもありません。
ただ、用語とか雰囲気は多少分かるようになります。コンピューターやシステムがどのように動いているのかが分かるだけでも意義があります。
CEG 吉田:
それはとてもよく分かります。私はアビームコンサルティング出身で、金融機関の業務系のコンサルティングをやっていました。
私はいわゆるITコンサルやシステム開発はやったことがなくて、業務寄りのコンサルティングを中心にやっていたので、たまにシステム系のプロジェクトが来ると不安でした。用語も分からないので、その領域が得意なメンバーに任せていました。
特に現代の経営コンサルタントはどうしてもシステムと絡む場面が多いと思うので、システムへの抵抗感がないことは大きな武器になりますよね。
スカイライト 羽物:
ビジネスにITはつきものです。それどころかITを「使って」ビジネスをやりたいと言われたときに、少なくとも誰に相談すればいいのかぐらいの感覚は持っている必要があります。
また、相談した時に「言われたことは理解できる」という頭は持っておきたいです。
その第1歩として、システム開発系の研修をやっているということですね。
CEG 渡辺:
今は、企業が何かを実現しようと思うと、すぐにITが絡みますよね。私たちの会社でも、何か新しいことをやろうとするとWebの開発が必要になります。
御社がこのような研修を用意されていることに対して大変納得がいきますし、そういう経験を積めるというのは羨ましいですね。
スカイライト 羽物:
少し時間はかかりますけれど、それぐらいはやろうと。
ITについてある程度経験している人ですと、スカイライトへ中途で入ってきて、最短1ヶ月でプロジェクトに入ります。それが1番早いケースですね。ITの経験がない方は、3ヶ月かかります。
CEG 吉田:
さらに、3ヶ月間のOJTも。
スカイライト 羽物:
そうです。会社としては、最長半年間は持ち出しということになります。でもそれでいいと思っています。長い目で見れば、それで力付けてくれる方がいいと思っています。
CEG 渡辺:
そうですよね。うまく立ち上がって定着してくれる方がいいですよね。
#6 相手の意図を汲み、自分の考えを構造的に伝えられる人材を求める理由
CEG 渡辺:
御社の採用についてお伺いできればと思います。
スカイライト 羽物:
ビジネスにおいて、唯一の答えというものはないですよね。そういった不透明な状況に対して、考えを進めていける人材であることが大事です。少ない情報の中でもいろんな人の話聞いて吸収できなければいけない。
だから、人の話も聞けて、情報も集められて、それを自分の頭で考えられて、考えたことを人に伝えられるという基本機能をものすごく私は大事にしたいと思っています。面接でもその点を中心に確認しています。
CEG 吉田:
どのようにして、そのような力を確認されていらっしゃるのでしょうか。
スカイライト 羽物:
質疑の中でこちらの意図を汲み、それに対して自分の考えを構造的に伝えられるかどうかが重要です。それを伝えられる人かどうかは、質疑の中で分かります。
志望動機とか、準備していたことを話せるということについては、あまり重視していません。
CEG 吉田:
面接でよく聞かれるような質問に関しては、最低限、押さえてくれればいいわけですね。
スカイライト 羽物:
そういうことですね。そのような話も当然聞きますが、同時に、途中でいろんな質問を投げかけています。
例えば、「今、日本はこういう状況だけどどう思う?」という話もあれば、「コンサルタントになりたいと言っているけれど、今、コンサルティングしたい会社ってある?」という話もあります。こういう話を掘り下げていくと答えがない。そこから、自分なりに考えて、自分なりに整理して伝えようとしているかを見ていますね。
CEG 渡辺:
選考において、他に羽物社長が重視されていることはあるのでしょうか。
スカイライト 羽物:
私が担当するのは最終面接なので、人物確認が中心となっています。マネージャー面接や役員面接の時に、経歴について深く確認してもらっています。またその際に、ケース面接のような形式の選考も行なっています。
過去の経験を活かすためには、自分で深いところまで消化していることがとても大切だと思います。「ERPのプロジェクトをやっていました」といって、導入手順を知っていてもそれは本質的ではないのです。クライアントがERPを導入する理由とか、その会社の本当の問題とか、ERPによる解決の限界とか、そういう見方ができるかどうかが大事ですね。
CEG 渡辺:
経験を、汎用性のあるノウハウにしているか、自分の血肉にしているか、といった感覚でしょうか。
スカイライト 羽物:
おっしゃる通りです。自分の経験を思い出に終わらせないで、きちんと血肉にしているかが大きな差となってきます。同じ仕事や経験をしても、その後の成長が全く違ってきますよね。
CEG 吉田:
多くの会社が、まさにこのような人材を欲しいと考えていると思います。
スカイライト 羽物:
もちろん、面接をしている中でそこが完璧な人はまずいません。出来るけれども経験していないだけなのか、そもそも出来なさそうな人なのかを、面接の中で見ていますね。
CEG 渡辺:
出来そうな人の場合は、「あとはうちに来てくれれば大丈夫だな」というわけですね。
スカイライト 羽物:
そうですね。出来る素地は持っているけれど経験してこなかった人は、やってもらえば出来るようになります。
スカイライトでは入社後、定期的に人事評価があり、きちんと振り返りをおこなっています。その中で、プロジェクトの中での役割を再認識し、課題を設定し、目標を立てています。
半年ごとに人事評価はあり、そのタイミングで必ず振り返りと目標設定をし、その上で日々の仕事を通じて力をつけていってもらっています。
弊社でマネージャーになっているような人材は、この振り返りを繰り返してレベルアップしていますから、しっかりと出来ていますね。
CEG 渡辺:
社員一人ひとりが全体を見渡し、自分の役割を意識して、自分を成長させるために頑張っている。そのようなメンバーが揃っていたら、お互いにとても楽しいですよね。
スカイライト 羽物:
そうです。そういう人間がたくさんいるので楽しいですよ。各コンサルタントの自主性というのも、ますますプラス方向に循環していきますよね。そうなれば経営も楽です(笑)。
#7 未来の理想像を打ち出すコンサルティング~スカイライトの今後の戦略
CEG 渡辺:
最後に、御社が今後注力されていくことについてお伺いできればと思います。
スカイライト 羽物:
1つ目は、コンサルティングサービスを伸ばすことです。
今やっている仕事は、高い評価をいただいていますが、やはり課題もあるのです。クライアントサイドから要望がたくさん出てきた際に、それをうまく捌きながら形にすることは、すごく上手にできていて高評価です。
一方で、「プラスアルファを付け足してくれるともっと良かったのに」というお客さんも1割くらいはいらっしゃいます。
CEG 渡辺:
もっとチャレンジングな提案をして欲しかったということでしょうか。
スカイライト 羽物:
そうですね。やり過ぎてしまうと口だけになってしまうのですが、でもそういうものの必要性を感じるのも事実です。
社会が大きく変化し、未来がどうなるか分からないという中で、キーマンの人たちも未来の理想像を打ち出すことが難しくなっています。本部長や役員クラスといった上位層ほど、刺激が欲しいと思われている方がいらっしゃいます。
CEG 渡辺:
ビジネスイノベーションや起業チャレンジを通じて、御社自体が未来を吸収していく機会を持っているという点が活きそうですね。
スカイライト 羽物:
大企業の新規事業立上げ支援のプロジェクトが多数ありますので、その際に活きていますね。
ただ正直なところ、他のシーンにはまだ有機的に繋がっていません。
起業チャレンジや自社の事業開発経験を、大企業のいわゆる普通のコンサルティングにフィードバックして活かせると、面白いですよね。
CEG 渡辺:
他にはどのようなことに注力されていくのでしょうか。
スカイライト 羽物:
2つ目は、コンサルティングの周辺のビジネスをもっと拡大させていくことです。ヴェルディやジュエリーの取り組みがその事例ですが、これをもっと増やしていきたいと思っています。
3つ目は、グローバルでの事業展開です。ASEAN地域への日系企業の進出に関するビジネスも大きくなってきているので、そこで事業を生み出せないかを模索しています。
CEG 渡辺:
現在、羽物社長が注目されている地域はありますか。
スカイライト 羽物:
現時点では、日系企業の多いタイかシンガポールが有望だと思っています。外国人社員が増えてはきたとは言え、弊社は日本の企業です。日系企業との取引の方がスムーズに進むと思っています。
ただ、日本でやっているビジネスを、そのままタイやシンガポールでできるかと言うと、そこは少し違うかもしれませんね。まだ現地でのニーズをしっかり捉えきれていないので、これからのチャレンジですね。
そして4つ目として、最近取り組み始めたこととしては、「コンサルティングの仕事を科学する」というものがあります。
大学の研究者と提携して、今年の5月にプロジェクトを始めたところです。
CEG 渡辺:
コンサルティングの仕事そのものを分析するということですか?具体的にはどのようなことをしていらっしゃるのでしょうか。
スカイライト 羽物:
手前味噌ではありますが、スカイライトのコンサルティングは高い評価をいただいています。その「種」の部分は何かを科学的に分析する、ということをしているのです。
顧客満足度調査をすると、多数のマネージャーが、多数のクライアント様から高い評価を得ていることが分かりました。
例えば、「話を前に進めてくれる」、「話を整理してまとめてくれる」、「信頼できる」といった評価をいただいています。
もちろん、状況依存性が高いですし、職人芸ではあると思うのですが、我々のコンサルタントに何か共通のものがあるのではないかと考えています。そこに興味があります。そこが分かれば、コンサルティングロボットが誕生するかもしれません。
CEG 渡辺:
なるほど、非常に面白いですね。優秀なコンサルタントの共通する点が分かると、まずはコンサルタントを育成する際に大いに役立ちますし、ご指摘のようにAIやロボットを活用することも出来ますね。
具体的にはどのようにプロジェクトを進めていらっしゃるのですか。
スカイライト 羽物:
我々が行なっている会議を守秘義務に反しない範囲で録画しています。それを言語分析、認知科学を専門としている大学の研究チームに提供して、分析していただいています。
CEG 渡辺:
「スカイライトのコンサルティングとは何か?」を紐解くということですね。
その録画データは、録画されたコンサルタントの方にも役立ちそうです。自分の発言が場に与えているインパクトを客観視する貴重な機会となりますよね。
スカイライト 羽物:
おっしゃる通りです。
自分の発言やファシリテーションについて、メタ認知ができるのは大きいですよね。
こういった能力は、今まではコンサルタントが感覚的に身につけて、実践していたのですが、職人芸だからといって分析を諦めてはいけないと思います。
CEG 渡辺:
そうですよね。囲碁や将棋も天才的なプレイヤーたちの職人芸の世界でしたが、ついにAIが人間に勝つ時代になりました。
スカイライト 羽物:
将来的には、人間のコンサルタントに相談するよりも先に、ロボットに聞いてみようという世界が実現するのかもしれませんね(笑)。
CEG 渡辺:
本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
スカイライト 羽物:
こちらこそありがとうございました。
編集後記
今回のインタビューを通じて、スカイライトコンサルティングは、志ある優秀な人材にとって大変働きやすい環境であるということを強く感じました。
コンサル未経験者でもスムーズに立ち上がることができる手厚い育成体制、自分が希望するプロジェクトに手を挙げることができるアサイン制度、さらには自分の想いを事業として提案して実現できる機会など、成長意欲の高い人材にとってはこの上ない環境が整っています。
このような環境があるからこそ、コンサルタントが自律的に成長し、プロジェクトで高い価値を発揮し、クライアント企業から高い評価を得ているのでしょう。
また、AIを活用した「コンサルティングを科学する」取り組みなど、新しい世の中のニーズに応え続けることで、事業の幅を拡大させています。
羽物社長の提唱する「広義のコンサルティング」としての事業領域はこれからも広がり続けることでしょう。
スカイライトコンサルティングの動向からは、今後も目が離せません。
慶應義塾大学理工学研究科修士課程を修了。アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)に入社し、金融業界を専門にマネジャーとして数々のプロジェクトを手がける。2000年、同志数名と共に、徹底したクライアント志向のビジネスコンサルティングを実現すべく、スカイライト コンサルティングを設立。代表取締役に就任。一部上場の大企業からベンチャー企業まで、数多くのクライアントを持つ。
現在では100名以上のコンサルタントが在籍し、事業領域を拡大している。同社でプロフェッショナル人材の育成に尽力し、訳書には『選ばれるプロフェッショナル』(2009年、英治出版)がある。週末には、地元小学校のサッカーチームの監督としても活躍。