ヒューマンキャピタルリーダー 福井様インタビュー
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CEG 山口ヒューマンキャピタルリーダー 福井泰光様にお話しをお伺いいたします。まず、ヒューマンキャピタル部門の組織概要についてお聞かせ頂けますでしょうか。
PwC 福井組織体制については、大きく三つの機能に分かれています。
一つ目は人事企画を担当するセンター・オブ・エクセレンス、二つ目が各ビジネスをサポートするビジネスパートナー、三つ目が人事関連の手続き、オペレーションを担当するシェアードサービスセンターです。
ビジネスパートナーについては、さらに三つのチームに分かれており、①採用、②戦略人事をサポートするヒューマンキャピタルビジネスパートナー、③アサインメントをサポートするディマンドマネジメントといった各役割を担っています。
その他、OST(Office Support Team)という障がい者雇用チームなどがあり、全体で170名ほどの組織となっています。
CEG 山口ありがとうございます。まずはセンター・オブ・エクセレンスについて聞いていきたいのですが、こちらのチーム体制と主な業務について教えてください。
PwC 福井10名ほどの少数精鋭のチームで、いわゆる人事企画を担当しています。
例えば、人材の価値を最大限に生かすためのタレント・マネジメント、パフォーマンスマネジメント、ダイバーシティー&インクルージョンの推進などです。ビジネスやマーケットの変化に合わせて全体の戦略を描き、実行のための具体的なプランを作っていくことをミッションとしています。
その他、リテンションの観点で非常に重要なトータルリワードの向上という役割も担っています。
給与や賞与については競合他社含めた市場と比べてどうかという、ベンチマークを取っているのですが、それ以外の非金銭的な報酬、例えば働きやすさや、成長のための機会など、そういったものも含めてトータルリワードと捉え、より魅力的なものにするよう推進しています。
その他、最新のテクノロジーを導入・活用して、蓄積したデータを分析し業務の効率化につなげていくことなども進めています。
CEG 福永メンバーの方は、それぞれ担当領域を持って業務分担されている形でしょうか。
PwC 福井基本的にはそうですが、多様な企画を行っており、プロジェクトベースで動くため、実際には複数のプロジェクトを担当するコンサルタントに近い動き方をしています。
CEG 山口どのようなバックグラウンドの方が多いのでしょうか。
PwC 福井事業会社での人事企画出身など、7割くらいが人事経験者ですが、その他に、人事コンサルタントなどのコンサルタントから転身したメンバーもいます。
CEG 山口PwC Japanグループ(以下PwC Japan)全体として、働き方改革など、トータルリワードの向上をはじめとする人事領域の改革に力を入れている印象を持っていますが、昔から積極的に取り組んでこられたのか、それともここ数年、取り組みとして大きく変わってきた部分があるのでしょうか。
PwC 福井私自身は、PwC Japanに入社してまだ2年なのですが、5~6年前から取り組みを強化しています。
その背景には、プロフェッショナルファームとしてグローバルで戦っていくことを強く意識し始めたことがありました。グローバルで戦うためには、ビジネスの基盤となるインフラやオペレーションがバラバラのままでは勝てないという危機感から、PwCグローバルネットワークにおけるさまざまな統合を行い、水準を高めようと動き出した経緯があります。
例えば、グローバルプロジェクトが増加し、モビリティも活発化している、これを支えるため、働く環境や処遇に大きな影響を与えるインフラシステムなどの統合などが始まりました。
PwC Japanでユニークだと思ったことは、日本の実情に合わせて新しい取り組みを始めようとする際の意思決定権が日本にあることです。また、そういった場合、基本的にはグローバルの承認は必要がないため、スピーディーに実行できる点です。
私は外資系企業での経験が長いのですが、自分たちのニーズに合わせた人事施策を実施したくても、本社の方針に縛られて歯がゆい思いをすることが多くありました。
PwCにおいては、グローバルネットワークを活用し、他国のプラクティスやナレッジを取り入れることができる一方で、メンバーファーム間の上下関係がないため、PwC Japan自体に大きな裁量権があり、スピーディーかつ有効な意思決定が可能であるという点は非常に魅力的な環境だと感じています。
CEG 山口確かに、一般的な外資系企業の場合、センター・オブ・エクセレンスの主要な機能が、海外現地法人にあることはまずないですものね。
海外のメンバーファームのベストプラクティスに学ぶことができるという外資系企業のようなメリットもあるとのことですが、グローバルでの情報共有はかなり盛んなのでしょうか。
PwC 福井驚くほどオープンですね。ベストプラクティスは積極的にシェアしましょう、という文化なので、快く開示してもらっています。
私が今までいた外資系企業ですと、特に制度面についてはヘッドクォーターからトップダウンで決定事項が下りてくることが大半だったのですが、PwCの場合、グローバルネットワークにかかわる制度策定については関係各国が話し合いながら決めていく、というスタイルです。
その面では正直スピードが多少遅くなる面はあるのですが、共有してもらった情報をもとに、自分たちに本当に必要な仕組みを作ることができます。もちろん大枠はグローバルの方針に従いつつですが、裁量が大きいという点ではやりがいがあります。
特に今はPwC Japanが変革期を迎えていますので、多様なプロジェクトが進んでおり、人事としてさまざま経験を積めるとてもよい時期だと思います。
CEG 山口会社の骨組みを自分たちで作っている、という実感が持てるのは魅力的な環境ですね。
福井様は2年前にPwCにご入社されたとのことですが、それまでにいらした会社と比較した場合、PwC Japanにおけるセンター・オブ・エクセレンスの一番の魅力はどういったところでしょうか?
PwC 福井自国に裁量権があることと、現在の成長フェーズにあるがゆえの責任の重さとやりがいでしょうか。一般的にグローバル企業で働いていると、本国以外での裁量権がかなり限定されるため、不満が出ることが多いのですが、逆に決められたことを遂行することが多いので実は楽な側面もあるんですよね。
しかしPwCの場合は、各国のメンバーファームに裁量権が委ねられています。しかも、提案する相手は会計士であったり、コンサルタントであったりするわけですから、なぜやるのか、どうしてこのタイミングなのか、採算はどうか、この先の展望はどうなるのか、それらすべてを綿密に考えて高いレベルでまとめあげたうえで提案しなければなりません。
加えて、監査法人・コンサルティング・アドバイザリー、というビジネスの種類もそれぞれの意思決定者も違いますので、コンセンサスを取ることは大変でチャレンジが多いです。提案が通って実行できた時の達成感はひとしおなので、それが面白いと思っていただける方にはたまらない環境だと思います。
また、ここ5年ほどで人数・売上ともに大幅に成長し、PwC Japan全体で7300名規模になりました。これに応じて、プロジェクト規模、投資金額も大きくなっており、責任も比例して重くなってきています。この規模でこの成長スピードを味わえることはなかなかないので、これも人事として良い経験を積むことができる魅力的な点だと思います。
CEG 山口確かに自由度の高さと責任の重さはイコールですからね、それを望む方にとってはまたとない環境だと思いました。
先ほど、ビジネスの種類が違うのでコンセンサスをとるのが難しいとお話し頂きましたが、“One PwC”を推進するIFSの一部門として、コンセンサスをとらなくてはいけない場面は多いと思うのですが、どう対処されているのでしょうか。
PwC 福井そうですね、そこはプロフェッショナルファームとしてクライアントの要望の変化に応えるためのベストな形が“One PwC”であるという点は共通認識がありますので、自然と同じ方向を向いていて、最終的にはクライアントニーズを基点に決めています。
CEG 山口なるほど。マーケットで勝っていくために、クライアントから見た時に監査もコンサルも関係なく“One PwC”として動くという共通認識があるので、それが叶う施策であれば話は通りやすいということですね。
PwC 福井そうですね。これまではBIG4の中で小さなファームでしたので、追いつけ追い越せというモチベーションも高く、グループ内での横連携の動きが速かったのだと思います。
PwC Japanには、Strategy&という戦略コンサルティングチームから、マネジメントコンサルティング、アドバイザリー、監査、税務、法務と、戦略から実行まですべての機能をプラットフォームとして持っていますので、それをクロスサービスで提供できる強みを発揮できるようになってきていると思います。
CEG 山口わかりました。ありがとうございます。それでは続いて、現場をより直接的にサポートするというビジネスパートナーについてお伺いしたいのですが、チーム概要について教えてください。
PwC 福井ビジネスパートナーは、①採用、②各事業の戦略人事をサポートするヒューマンキャピタルビジネスパートナー(以下、HCBP)、③アサインメントをサポートするディマンドマネジメント(以下、DM)に機能が分かれていることは前述しましたが、採用を担当するリクルーターは、50名強、HCBPはサポートメンバーを含めると約20名、DMは約30名です。
現在、PwC Japanでは年間1000名を超える職員採用を行っていますので、採用チームのメンバーは特に多くなっています。
CEG 山口現在、積極的に採用を進めておられるDMはアサインをサポートするということですが、他の業界にはない役割ですよね。人が資本のプロフェッショナルファームにおいて、適切なアサインを行うということがビジネスの成功にもつながりますので、重要なポジションですね。
PwC 福井おっしゃるとおりで、クライアントビジネスのベースになる重要な役割です。例えば、コンサルティングの場合、ビジネスのスタートは、クライアントとのパイプライン管理から始まって、実際にビジネスになりそうか、プロジェクトが取れたらどのような人材が必要になるのか予測を立てる必要があります。その際、社内に適当なスキルを持った人材がおらず、外部から採用しなければならない、となった場合には、プロジェクトが取れてからでは遅いので、事前に「将来的にこんなスキルを持った方が必要になる、だからいつまでに採用する」という予測を立てなければなりません。こういったプランニングをトータルリソースマネジメントと呼んでいるのですが、このような将来を見こした採用計画を立てて採用していくということをやろうとしています。
その中でDMも、短期的なアサインを行うだけではなくて、プランニングのところから携われるような組織にしていきたいなと考えています。
CEG 福永DMの仕事は、オペレーション的なイメージが強いのですが、将来的にはプランニングのところから関わっていけるというのは面白いですね。そのビジョンが将来的に形になった時、ビジネス側にどういう効果が期待できますでしょうか。
PwC 福井売り上げと利益率の向上に貢献できますね。また、適材適所の配置ができれば、プロジェクトのクオリティーや担当者の成長につながります。クライアントの満足度も上がり、さらにリピート案件も増えるという好循環を生み出せると思います。
CEG 山口人が財産といわれるビジネスモデルだからこそ、人材の採用や活用が利益に直結することを実感できるのですね。
PwC 福井そういうことです。さらに、将来的には社員の情報を全てシステムで管理して最適なアサインを自動的に決められるようにすることを目指しています。DMにはより戦略的な仕事に集中してもらう。そんな構想を描いています。
CEG 福永構想フェーズから携われるというのも魅力的ですね。他に積極的に採用を行っているチームはありますでしょうか。
PwC 福井センター・オブ・エクセレンスのラーニング・アンド・ディベロップメントですね。ここも人材が財産である私たちのビジネスにとっては、非常に重要な役割を担っており、体制の強化を図っていますので、採用を強化しています。
ディベロップメントもアサインメントもそうですが、一人一人の成長を加速させるための仕組み作りに本当に力を入れているというのが今の動きですね。
CEG 福永研修プログラムを作る時は、IFSのディベロップメントのメンバーだけで作るのか、それとも、現場のパートナーと密にディスカッションしたりしながら作るのでしょうか。
PwC 福井後者ですね。現場のニーズを詳細に確認しながら設計していきます。どの階層の研修が足りないかということも現場の声を聴きながら、優先順位を決めて取り組んでいます。
現在も研修プログラムや制度は多い方だと思うのですが、ビジネスの変化のスピードに対応するため、より強化しようとしています。
パートナーもディベロップメントに高い関心を持っており、積極的な投資や、新しい提案にも熱心に協力してくれています。
各部門のトップと密にやりとりをしながら自分で企画をし、採用された企画の効果についても、参加したメンバーの成長を見て実感できるので、非常に面白いと思います。
CEG 山口それはやりがいがありますね。IFS内ではどのようなプログラムを考えていらっしゃるのでしょうか。
PwC 福井大きな組織となった今、IFSを強化するためには、現場のパートナーと同じ視点を持つ人材が必要になりますので、経営の視点を持ったリーダーシップを強化しています。
またその候補者となりうる階層のモチベーションを上げる必要があるので、リーダーシップ研修も強化し、人材の層を厚くしていこうとしています。
その他にも、それぞれがプロフェッショナルとしてスキルを磨いていけるように、IFSそれぞれの業務に関連するスキル研修も徐々に増やしています。これは、現在の業務についてだけではなく、他の業務についても受講することもできます。
またどこでも学べるようにデジタルラーニングのシステム、アプリの浸透も進めています。さらに経験を広げたい場合は、社内の制度を使って異動することも可能です。
CEG 山口異動制度ですか、それはどのようなものなのでしょうか。
PwC 福井オープン・エントリー・プログラムというものがありまして、社内公募を行っています。
IFSのメンバーも利用可能で、ヒューマンキャピタルのメンバーでも、この制度を利用して経理からヒューマンキャピタル、採用からディベロップメント等、希望の部署やチームへ異動しています。
また、各人の希望を尊重するという点では、オープン・エントリーだけでなく、タレント・マネジメントをしっかり行い、コーチングやメンター制度の活性化を通じて、現在のポジションのままでも、やりたいことにチャレンジできる仕組みも作っているところです。
CEG 山口それはいいですね。IFSのヒューマンキャピタルとしてのキャリアパスは、上にも横にも制度を活用しながら自分次第で創っていけるということですね。
PwC 福井そうです。どの組織でもそうだと思いますが、全員が上位の役職に上がれるわけではないですし、必ずしも全員が上がりたいと思っているわけでもないので、やはり選択肢があって、自分で選択できるというのが一番良いのではないかと思っています。
せっかくこれほど大規模な人事部の組織になっているので、この環境を存分に生かせる仕組みを作りたいと思っています。
CEG 山口IFSで働く魅力について、キャリアパスとかチャレンジできる環境の他にはどんな点があると感じておられますか?
PwC 福井PwCの文化でしょうか。これはIFSだけの特徴ではないのですが、PwCでは全世界共通のPwC Values and Behavioursを共有しています。
Care、Work together、Re imagine the possible、Act with Integrity、Make a difference、というPwCの掲げる五つのValuesは、私たちが「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPurposeを実践するためにあり、それがPwCの文化を作っています。
個人差はありますが、人に対するリスペクトをきちんと持ち、多様性を認めている人が多いです。そのような人たちと働けるというのが、魅力の一つだと思います。
PwC全体としてIFSを尊重してくれているのも感じますし、総じてコーポレート側が動きやすいカルチャーの会社だと思います。
CEG 福永それはとてもいいですね。現在、ヒューマンキャピタルは積極的に採用を行っていると思うのですが、今後、どのような方に来て頂きたいか教えて頂けますでしょうか。
PwC 福井社名変更や組織再編などもありましたが、歴史のあるファームですので、その歴史を知って過去もリスペクトできる方に来ていただきたいなと思っています。
これまで私が経験した外資系のカルチャーでは、「チェンジしたら先だけ見ればいい」「過去のものは関係ない」というようなドライな部分もすごく多かったんですね。私はそうは思わなくて、これまでの積み上げと変化があって今があるわけで、そこに力を注いできた人もいる。過去をリスペクトしたうえで、「でも、これからの変化にはこう対応していかなければならない」と伝えなければ周りはついてこないと考えています。また、そういった思考ができる人がヒューマンキャピタルでは活躍できると思っています。
CEG 山口歴史を知ってリスペクトして、PwCで働くことに誇りを持って働いて頂きたい、またそう思える環境をヒューマンキャピタルとして作っていきたいですね。
PwC 福井まさにそのとおりです。PwC Japanを卒業して行った人たちには、ネクストステージでも大活躍されることを期待していますし、「PwCに入って良かった」「PwCに入ったから今の自分がある」と思っていただけるような厚みのある経験を提供できる組織を作っていきたいと思っています。
それが巡って、会社としてのブランドを強化することになりますし、採用競争力も上げることができる。そんな好循環を作っていきたいです。
CEG 山口確かに大変ですが、その好循環を生み出せたら最高ですね。
PwC 福井IFSの存在意義はそこにこそあると考えています。実現するのは大変ですが、ビジョンを掲げて、行動に移していくことが重要ですので、一歩ずつ取り組んでいきたいと思います。そこに共感して、一緒に取り組んでいきたいと思っていただける方にぜひジョインしていただきたいと思っています。
CEG 山口御社の今後の変化が本当に楽しみです。本日は貴重なお話しをお聞かせ頂きありがとうございました。
PwC 福井こちらこそありがとうございました。
⇒髙田 栄一様(PwC Japan合同会社 パートナー ITリーダー)インタビュー
新卒で大手石油会社に入社し、国内の営業職を経験。MBA取得後、外資系金融機関にて人事としてのキャリアをスタートし、ディレクターに就任。その後、外資系ラグジュアリーブランドHR&GAディレクター、外資系医療機器メーカーシニアHRディレクターを経て、2016年より現職。