PwCアドバイザリー 平林代表 インタビュー
Index
- PwCアドバイザリーの概要・特徴について
- PwC Japanグループとの協力体制について
- PwCアドバイザリーの注力領域について
- 競合他社との違いについて
- PwCアドバイザリーの重視する価値観について
- 編集後記
PwCアドバイザリーの概要・特徴について
CEG 山口本日はPwCアドバイザリー代表の平林様にインタビューをさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。
それではまず、PwCアドバイザリー合同会社の概要や特徴についてお聞かせいただければと思います。
PwC 平林PwCアドバイザリーは現在、全社で約590名のプロフェッショナルが在籍しています。ダイバーシティも進んでおり、1割強ぐらいは海外出身のメンバーというインターナショナルなチーム編成になってきています。
会社としては大きく三つのビジネスに取り組んでおり、「M&A」と「事業再生」、もう一つは「インフラ支援」で、海外輸出やPFIを活用した国内のインフラ導入などです。
各ビジネスについては、さらに三つのフェーズに分かれています。
まず、上流で案件を作り出す部分。ここは投資機会を見つけ案件を作り出すオリジネーションの部分で、“Value Identification”という言い方もしています。
次に、中流のエクゼキューションあるいはトランザクションといういわゆる実行フェーズ、最後に、下流となるインテグレーションの部分で、PMIとも呼ばれますが、投資した価値をいかに刈り取っていくか、実現していくかという意味で“Value Realization”という言い方をしています。
M&A、再生、インフラいずれにおいても、おおむねこの三つのフェーズで捉えています。
このうち、上流で求められることとして、一つは戦略系の議論ができできること。企業の経営陣と経営戦略や投資戦略といった高いレベルの議論をすることや、どこに投資すべきか、あるいは撤退、立て直しすべきかという検討ができできる必要があります。
もう一つ上流で求められるのは、案件を実際にマッチングさせるリードアドバイザリーの部分ですね。
中流のエグゼキューションやトランザクション領域についてですが、これはもともとPwCが監査・税務という“Trust”をテーマに始まったということもあり、一番強い領域で、M&Aにおけるデューデリジェンスやバリュエーション、再生局面での実行支援などが含まれます。
インフラにおいても上流でフィージビリティースタディーのような絵を描く部分から、グリーンフィールドでのインフラ導入のようなものがあります。
さらに下流のインテグレーションというフェーズに移っていきますと、M&Aにおける投資後のバリューアップの議論や、それから再生案件では金融機関から支援を受けた後のモニタリングフェーズなどがあります。
CEG 山口分かりました。御社の中で例えばM&Aに関わるチームは複数存在すると思うのですが、上流に強いチーム、中流に特に取り組むチーム、といった形でチームが編成されているイメージでしょうか。
PwC 平林そうですね、どの局面で案件に関与するかによります。M&Aにしても再生にしてもプロセスが非常に長く、1~2年を要するプロジェクトもあるので、その上流フェーズから入るチームもあれば、トランザクションのフェーズで入るチームもあります。
これに関してポイントとなるのは、各フェーズで求められるスキルセット、ケイパビリティが異なるということです。
上流フェーズで戦略を語る場合には、戦略系のバックグラウンドが必要になりますし、コーポレートファイナンスやリードアドバイザリーの領域では、マッチングや情報力など異なるスキルセットに重きが置かれます。
中流のエグゼキューションでは、デューデリジェンスやバリュエーションに対応する分析スキルや会計の知見といったものが含まれますし、さらに下流のフェーズでは、人事、SCM、IT、コスト削減などファンクショナルな面でさまざまなケイパビリティが必要になります。
このように多種のケイパビリティが必要となる一方で、クライアント側の要求水準も高まっています。
いろいろな要因がありますが、一つは人材の流動化がかなり起きていることが挙げられます。
従来はM&Aに関してもそれほど多くの企業が手掛けていませんでしたが、今は社内で事業開発部門として大きなチームを抱える企業も出てきました。
そうした企業に投資銀行や戦略コンサルティングファーム、あるいは私たちのようなアドバイザリーファームからも多くの人材が流れていますから、段々とクライアントの期待値も高まり、ニーズもレベルアップしています。それに対応しようとするには、従来のスキルセットやケイパビリティだけでは足りないんですよね。
そのような状況下において、私たちの強みはPwCのグローバルネットワークであり、全世界に広がるネットワークによって多様なケイパビリティを活用できる点です。
各インダストリーの専門性も重要になりますが、加えてどうネットワークを活用していくかがこの先重要だと思っています。
つまり、ある案件に取り組む際に、独力で対応できることが限られる場合には、大勢のネットワークの力を結集できるかどうかということが大事なんです。
PwC Japanグループとの協力体制について
CEG 山口おっしゃる通り、PwCアドバイザリー内のシームレスな情報共有はもちろんですし、PwC Japanグループ(以下PwC)内の連携や、日本だけではなくグローバルネットワークとの連携も重要になっていると思うのですが、よりスムーズに連携を取る上で注意・工夫されていることはありますか?
PwC 平林PwCアドバイザリー合同会社は「ディールズ・サービス」を担う位置づけの会社ですが、実はPwCでディールズ・サービスに取り組むチームは他にも存在しています。
例えば、M&A案件に関わる税金の課題に対応するM&Aタックスのチーム、あるいは投資後のIPOにおける国際会計基準での上場や海外市場での上場といったニーズに対応する「キャピタル・マーケット・アカウンティング・アドバイザリー・サービス(CMAAS)」のチームなどがあります。
また下流であるPMIのフォーカス領域は非常に大きく、M&A後のビジネストランスフォームの際などはかなり大がかりで、例えばシェアード化や追加投資の実施などさまざまな取り組みを行います。
そうすると実はディールズ・サービスの有するケイパビリティでは対応し切れない面もあるため、コンサルティング側の人事、ITサイバーセキュリティー、デジタルといったケイパビリティを加える必要があるのです。
少し話を戻すと、PwCのファームワイドでディールズ・サービスに取り組むチームのことを「ディールズ・プラットフォーム」と呼んでいます。
所属するサービスラインの違いに関わらず、ディールに関わるメンバーを総称していまして、このディールズ・プラットフォームのメンバーでコミュニケーションの機会をさまざまなレイヤーで持っているんです。
当然ながらまずは、プラットフォームに多種多様なケイパビリティが乗っているということを各メンバーに知ってもらうことも必要ですし、上流で獲得した案件をしっかり下流につないでいくことが重要になります。
オリジネーションがあれば必ずトランザクションがあり、その後には必ずインテグレーションが起きます。
PwCの強みは、非常に大きなプラットフォームだということで、異なる専門性のケイパビリティを数多く有しているので、これを活かして上流から下流にシームレスにつないでいけることが一番の強みではないかと思っています。
チャレンジでもありますが、それをやることが私たちのミッションと言えるかもしれません。
CEG 山口そうですよね。確かに他のコンサルティングファームのお話を伺っても、ファームワイドでそうした情報連携の場を作っていらっしゃるという話はあまり聞いたことがありません。
PwC 平林やはりコミュニケーションは重視しています。お互いをよく知るということ、お互いの持つ専門性について情報交流できることは大事ですよね。
それもありPwCでは、上流における戦略チーム、中流のエクゼキューション、その中でもデューデリジェンスなどや、下流の税務チームなど、コラボレーションする機会はかなり多いんですよね。こうしたチームをどうやって連携させるかというのはかなり考えますね。
CEG 山口そうした連携がうまくいかないコンサルティングファームのお話もお聞きするのですが、御社は連携の部分が非常にうまく機能していらっしゃるように見えます。
このようにうまく機能するか否かの違いについて、どのようにお考えですか?
PwC 平林いえ、目指すところからすると私たちもまだまだですよ(笑)。
一方でひとつ言えることは、私たちのビジネスのやり方は、クライアントの求めるものに従って進化していかなければいけないということです。
クライアントの求めるものはますます高度化・複雑化していますが、自分たちだけで対応できる範囲というのは実はそこまで広くないんですよね。
まだまだ人材やケイパビリティに投資する余地がたくさんある。
もしかすると、それはファームの中にすべてがあるとも限らないと思うんです。
ベスト&ブライテストなケイパビリティやナレッジというものは、すべてファームの中にあるかもしれないし、ないかもしれない。
いずれにせよそうしたものをうまく組み合わせてクライアントのニーズを満たす、あるいはバリューをきちんと出せる仕組みを創れるかどうかということが重要なんでしょうね。
CEG 山口そうですよね。結局、思いの部分もありますよね。
そういうふうにクライアントのニーズにしっかり応えようとするかどうかというところも大事ですよね。
CEG 西谷お話を伺っていると、コンサルティングはコンサルティング、アドバイザリーはアドバイザリーという区分けよりも、“One PwC”という意識が他のファームに比べても強いと感じました。
PwC 平林“One PwC”というのは、PwC Japanグループ代表の木村も標榜していますね。
こうした話の前提として大事なことは、クライアントにニーズがある限り、応えつづけようとする姿勢だと考えています。
まず、クライアントが納得できるケイパビリティがないと話にならないのですが、あるオポチュニティーがあった時に、次につないでいけるかどうか、というのが重要です。
良いデリバリーをしていけばクライアントのロイヤリティも上がるでしょうし、「PwCに仕事をしてもらって良かった」というエクスペリエンスも向上すると思うんです。
一方で、そうしたオポチュニティーを自分たちでつなげられないのであれば、クライアントのニーズに添った形で適切な誰かがやる。
このような形のコラボレーションができるかどうかで、恐らく3年、5年とたった際に、ファームとしての総合力はかなり違ってくると考えています。
PwCアドバイザリーの注力領域について
CEG 山口なるほど。平林様の中ではこれからもっと発展していくPwCの姿というのがきっとおありかと思うのですが、3年から5年先に目指すべき姿というのは、どのようにお考えでしょうか?
PwC 平林「成長」と「膨張」は違うと考えていて、「膨張」させていくつもりはありません。
今後、クライアントのニーズに合わせてファームの形も変わっていくと想定する中で、5年先を見た時に間違いなく言えることは、現在取り組むビジネスのポートフォリオが相似形で伸びていくということは絶対にないということです。
必ず伸びる領域とそうではない領域があって、ディスラプトする部分もあるかもしれません。
テクノロジーによって無くなっていく仕事がある、なんていうこともずっと言われていますよね。
ですから大事なことは、伸ばすべき領域に対してはきちんと投資を行い、伸びていかない、あるいはディスラプトされそうな領域に対しては何らか手を打ち、ファームを「成長」させていくということでしょうね。それは経営の責任だと考えています。
CEG 山口企業のビジネスのあり方や社内の人員態勢を含めて、大きく変化している部分も多いので、伸びていくところ、そうではないところが明確化しそうですよね。
PwC 平林そうですね。例えば、冒頭にお伝えした海外出身のメンバーの割合が5割になることがあるもしれないですよね。
でも、クライアントがそういうものをファームに求めるとしたら、たぶんそうした形にならなければいけないんです。
あとは、世の中から見て、私たちのようなプロフェッショナルサービスファームというものがどういう位置を占めるかということも重要ですよね。
クライアントがどういったニーズを持っていて、それに対してどのようなサービスを行えば、クライアントがビジネスを伸ばしていく上での良きパートナーになれるのか、ということですが、それに関連してデジタルというテーマについてはかなり真剣に考えています。
CEG 山口デジタルは重要なテーマですよね。
直近のニュースでも、メガバンクで来年度の新卒採用をかなり減らすという話がありましたが、デジタル化が進んだことで、それまで人が担っていた業務をやらなくて済むようになった結果、採用を減らすという話でした。
PwC 平林仮に、ブロックチェーンがすごく進んで、データは全部どこからでもアクセスできるようになると、極論すればデューデリジェンスという業務もなくなるかもしれません。
それは極論かもしれないですが、じゃあそういった時に何が残るのか、ということを考えておいたほうがいいですよね。
CEG 山口そうですよね。もし可能であれば伺いたいのですが、そうした変化も踏まえて、これから強化・投資していきたい領域について伺えますでしょうか?
PwC 平林強化していきたいのは、基本的には上流の戦略あるいはオリジネーションの領域、それからバリューアップの領域となります。
PwCは、中流のエグゼキューションの部分でかなり大きなビジネスを持っているのですが、一方でクライアント企業からは、上流あるいは下流部分の期待値が高まっています。
間違いなく企業が最もお金や時間をかけているのは上流のオリジネーション領域と下流のインテグレーション領域なので、この領域をどのように支援していくかが私たちの大きな課題と捉えていて、上流と下流にリソースの強化をしていきたいと考えています。
また、日本は他国と比較して、事業会社のクライアントがかなり集積しているのですが、人口減少に伴って業界を超えた再編が今後起こり得ると想定されます。
特にテクノロジーに関連しては、例えば電気自動車などのように、プレイヤーがかなり変わっていくでしょう。
そうした世界が訪れる中で、ダイナミックに動こうとする企業を支援するためには、きちんとニーズを満たせる人材や、さまざまなケイパビリティがこれから必要になってくると思います。
また業界再編に関連しては、日本においてもプライベートエクイティ(PE)ファンドが今後ますます活躍して、日本企業の構造改革や業界再編を後押ししていく機会がさらに増えていくのではないでしょうか。
CEG 山口業界再編やプレイヤーが変わる時というのは、M&Aという手法がとられますよね。
またPEの役割がますます大きくなる、というお話がありましたが、御社はPEファンドとのつながりも強いという印象もあります。
PEファンドの役割が大きくなるという中で、PEとのつながりも今後強化されていくということでしょうか?
PwC 平林そうですね。PEファンド業界のみなさまがやられていることは本当に有意義だと思います。
特に日本においては最近コーポレートガバナンスの意識も高まっていますが、ガバナンスの視点からPEファンドの機能を活用していくということもありますよね。
いずれにせよPEファンドの中には、信じられないような額の資金を集めるファンドも出てきており、グローバルでは当たり前の何兆円というディールが普通に行える環境が整ってきたのだと思います。
CEG 山口わかりました、ありがとうございます。
現状のクライアントの変化や業界の動きについて伺ってきましたが、最近の案件の傾向や、会社として積極的に行っている取り組みなどのトピックスを伺えますでしょうか。
PwC 平林統計を見ていただくと分かりますが、引き続きM&Aの件数は非常に多く、またアウトバウンド、つまり海外に進出する企業も多い状況です。
一方で国内では、大企業の構造改革の中でカーブアウトというのが大きなアジェンダとなっています。
このカーブアウトの受け皿がPEファンドとなることも多いですね。
CEG 山口なるほど。海外進出という点で、コンコードのクライアント企業には事業会社も多いのですが、海外事業がそこまでうまくいっていないというお話も多い印象です。
そうした相談は御社にも多いのでしょうか?
PwC 平林はい、多いですね。例えば冒頭でお伝えした三つのビジネスのうち、事業再生チームの中で注力して取り組んでいる分野は、日系企業の海外ビジネス支援、海外事業再生です。
CEG 山口事業再生チームの方にお話を伺った際にも、やはり海外の事業再編という案件はかなり多いとおっしゃっていました。
PwC 平林M&Aであれ単独であれ海外に進出し、海外に大きなアセットを持つ企業は多いですが、なかなか業績が立ち上がらず、何年もアンダーパフォームしている事業をどうすべきか、という依頼は多いと思います。
CEG 西谷先ほどデジタルや先端技術に関わる投資の話もありましたが、そうしたデジタルに関わるM&A・投資案件も増えているのでしょうか?
PwC 平林クライアントのデジタル投資については頻繁に取り組んでいます。
一方で重要なのは、私たちのビジネスをどうやってデジタライズするかを考えなければならないということなんです。
方向性の一つはやはり効率化の観点です。
ロボティクスも進化したことで、テクノロジーに置き換わる部分もかなりあると考えています。
しかし、それよりも大事なのは、デジタルを使ってどうやって高付加価値なサービスを提供するかという点なんです。
例えばビッグデータ、あるいはディープラーニングの世界では、今まで人間では気がつかなかったようなインサイトがあります。
そうしたものをどうやって私たちのサービスの中に組み込んでいくのかが目下のテーマですね。
CEG 西谷そうしたデジタル活用について、御社の中で成功事例などはおありでしょうか?
PwC 平林いえ、まだまだスタートアップという感じでやっています(笑)。
このテーマに取り組む上で難しいのは、この領域においては、恐らくこれまでと異なるケイパビリティの人材が必要になるのではないか、という点です。
ところで、弊社にご紹介頂くような方は、どういった学部の方が多いでしょうか?
CEG 山口現状では文系の方、経済学部や商学部の方が相対的に多いかと思いますね。
CEG 西谷法学部の方も含め、文系の方のほうが多いイメージはありますね。
PwC 平林やはりファイナンスの知識がスキルセットのコアになるので、経済学や法学部などのバックグラウンドのメンバーが多いのですが、デジタルの世界ではまた違う学部のバックグラウンドが必要になるのではないかと考えています。
こうしたビジネスのデジタライズというテーマは、PwCだけにかかわる話ではなく、日本中の企業が考えています。
どうやってビジネスプロセスの中にデジタルを組み込むかということについては、大きな方向軸で整理すると先ほどお伝えした効率化と高付加価値化、二つの観点になるかと思いますね。
競合他社との違いについて
CEG 山口ありがとうございます。今お話いただいたような取り組みも他社との差別化ポイントになっていくと思いますが、現時点で、競合と呼ばれるような他社との違いをどのように捉えられていますか?
PwC 平林まず競合他社の幅が広いという特徴があり、上流のリードアドバイザリーでは投資銀行や証券会社、トランザクションではFAS、事業再生ではまた別の競合というように、領域により競合が大きく異なります。
その中で私たちの強みは何かと言えば、やはりケイパビリティに対する投資の大きさが挙げられます。
それからPwCのグローバルネットワークの大きさも特徴で、日本では約7,300人、グローバルでは約24万人のプロフェッショナルが在籍していて、さまざまなインダストリーやソリューションのケイパビリティを活用できるという点も差別化要素になると思います。
CEG 山口そうしたネットワークの大きさやケイパビリティの蓄積という点は、実際の業務で優位性を実感する機会は多いのでしょうか?
PwC 平林そうですね。クライアントと話をしている中で、提案の段階などはやはり、業界に対するナレッジやクレデンシャルの面を重視されるクライアントもいらっしゃいます。
ネットワークにおけるさまざまなクレデンシャルやナレッジをうまく活用して、クライアントには訴求していきたいと思っていますね。
CEG 山口先ほど「ケイパビリティへの投資」というお話を伺いましたが、専門性のある人材を採用するというのも一つの投資だと思います。
それ以外に、社内で取り組まれていることや、ノウハウやナレッジを管理するために工夫されている部分は何かございますか?
PwC 平林ディベロップメントという観点でスタッフのトレーニングを行うという部分と、ナレッジを共有化していくという両面に取り組んでいます。
その中でナレッジの面については、まだまだこれからだと考えています。
マネジメントコンサルティングファームから最近入社された方の話を聞くと、より進んでいるという印象です。
これは素直に認めて、今一生懸命取り組んでいます。
CEG 山口今さらに強化をしているという感じなのですね。
PwC 平林強化しようとしています。トレーニングも行いますし、それからナレッジの共有も行っていきます。
一方でナレッジの共有について、共有の枠組みを作り、あるいは仕上げのためのセッションを行うなど常に取り組んではいますが、やはりあるレベルから先の話や、今ここにないビジネスやケイパビリティに関しては、やはり外部から来ていただくしかない部分もあります。
だから、そこは両方向から考えていますよ。
CEG 西谷私も以前にコンサルティングファームにおりましたが、成果物の共有やセッションを行うというところまでは、どのファームでも取り組むものです。
でもそれが本当のナレッジ共有かというとそうではなく、恐らくその先の活用方法や、どうやってビジネスにつなげていくかという観点がより重要になるのだと理解しました。
まさにそこにチャレンジされているということですよね。
PwC 平林ある出来上がったものに対して再構築や再生というのは、それほど難しくないんですよ。
一方で、全くやったこともないものを作り上げるというのはすごく大変です。
だからそういうものを作り上げたら、必ずやらなければならないのは、それを構造化して、ロールアウトできるようにしていくということで、本当の意味でのナレッジマネジメントというのはそこまでやらなければいけないでしょうね。
今はまだ、頑張り途中という感じです。
CEG 西谷今後さらに取り組まれるということですよね(笑)。
PwC 平林そうですね。ナレッジマネジメントはサービスがどんどん多様化していく中で、多くのマネジメントコンサルティングファームが注力していると思います。
全体の業務時間の中でナレッジマネジメントに割く時間としても、しっかり取り組まれているところはかなりの時間を使っているんじゃないでしょうか。
CEG 山口なるほど。そこにかける時間という点も今後御社の中で変えていくこともあるのでしょうか。
PwC 平林これについては意識改革が必要ですよね。やはりナレッジをシェアすることの価値というものを皆が理解しないといけないというのはありますね。
PwCアドバイザリーの重視する価値観について
CEG 山口スタッフの育成の部分についてもぜひお伺いしたいと思います。
平林様として、スタッフ育成に対してどういった思いをお持ちでいらっしゃるか、PwCアドバイザリーに入ってきた方にはこう育っていただきたいか、そのあたりをざっくばらんにお聞かせいただければと思います。
PwC 平林どのレベルで入社されるかにもよるのですが、ミドルからシニアレベルで入社する場合は、まず自分のビジネスにしっかり取り組んでいただくことです。
私たちが用意するプラットフォームやビジネスドメインの中で、ビジネスを立ち上げて、自分のビジネスキャリアを大きく展開していただきたいという思いがあります。
一方で、ジュニアからミドルぐらいのレベルで入社いただく場合は、新たなソリューションを身につけることや、スキルセットを高めることなど、いろいろな思いや目的があって来られる方がいると思います。
ジュニアの場合は、ビジネスキャリアをゼロから築いていく必要があるので、しっかりしたフレームワークや、ある種のビジネスカルチャーの様なものを体現していっていただきたいと思いますね。
スキルセットやクレデンシャルというものは案件を経験すれば身につくと思います。
一方で、プロフェッショナルビジネスで大事な「アセット」は、“お客さん”と“チーム”の二つでしかないんです。
従って、このビジネスの中でキャリアが大きく伸びるかどうかの大きな境目は、「エクスペリエンス」が共感・共有できるかどうかによります。
クライアントやチームメンバーとの共通の成功体験など、「この人と一緒に仕事をして良かった」という、エクスペリエンスが共有できるかどうかが大切なんです。
PwCでは、“Values and Behaviours”という五つの価値観と行動指針を定めています。
まず、“Act with integrity”という観点で、「正しいことをする」「おかしいと思ったら声をあげる」というものです。
私たちの存在意義は「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」ことにあるので、PwCらしさはどこかと言うと、やはり“Trust”という部分が、どうしても根底にあるんですよね。
他には“Care”、あるいは“Work together”という、チームに対する配慮、あるいはクライアントに対する配慮、多様性を認めるという考え方です。
さらに、常に時代の変化に対応し、インパクトを生み出すという“Make a difference”、先入観にとらわれず新しいチャレンジをするという“Reimagine the possible”があります。
この二つは、もともと私たちがやってきたビジネスがある一方、この先もいろいろと世の中が変わっていく中で、現状に満足せず、時には何か違ったことを大胆にやらなければいけないという意志が込められています。
CEG 山口とてもすてきな価値観と行動指針ですね。
皆さんにはこれを常に意識したビジネスパーソンになっていってもらいたいということですね。
本日は貴重なお話を頂き、本当にありがとうございました。
CEG 西谷どうもありがとうございました。
PwC 平林こちらこそどうもありがとうございました。
1992年 青山監査法人に入所。大手電機メーカーの会計監査などを経て、2000年よりM&A、事業再生案件に関与。2004年には中央青山監査法人の社員就任。2006年、PwCアドバイザリー株式会社に入社し、パートナーに就任。2010年から2011年まで、プライスウォーターハウスクーパース株式会社ディールズ部門トランザクションサービス・グループのリーダーとして、多くの財務・事業デューデリジェンスを指揮する。2016年7月、PwCアドバイザリー合同会社の代表執行役に就任し、現在に至る。
M&A、事業再生において16年以上の経験を有し、テレコム・メディア・テクノロジー・セクター、流通・消費財セクターを中心に多数の案件を手掛ける。裁判所による検査役検査事件、民事再生事件・破産事件の補助者経験多数。
著書に「アジアM&Aガイドブック」(中央経済社、共著)、「財務デューデリジェンスの実務」(中央経済社、共著)。
日本公認会計士協会経営研究調査会、財産評定専門部会専門委員(2002年~2007年)
財団法人中小企業総合研究機構 研究委員(2007年~2009年)