PwC アドバイザリー インタビュー
世界中のあらゆる国と地域に膨大なネットワークを保有するグローバル プロフェッショナルファーム PwC。
今回は、PwC Japanの組織再編により、2016年3月より新たに始動したPwCアドバイザリー合同会社についてのインタビューをお届け致します。
M&A・事業再生・PPP(官民インフラ)を事業の柱としているPwCアドバイザリー。
その中でも、特に戦略イシューを扱う「ディールズストラテジー部門」の青木パートナーにお話を伺いました。
青木パートナーとは、以前、渡辺がキャリア設計を伴走させて頂き、10年以上もの長きにわたるお付き合いをさせて頂いています。 気心の知れた二人ならではの本音のインタビューは必見です。
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Index
#1 アフリカに1万人のコンサルタント! ここまで進んでいる規模の優位性
CEG 渡辺:
本日はよろしくお願い致します。
2014年に青木さんがプライスウォーターハウスクーパース株式会社 ディールアドバイザリー部門(現:PwCアドバイザリー合同会社)へご入社される際に、転職活動をご一緒させて頂きました。ありがとうございました(笑)。
PwC 青木:
その節は、大変お世話になりました(一同笑)。
CEG 渡辺:
本当に多くの企業から高い評価を受けられました。
まずは、その中でPwCのディールアドバイザリー部門を選ばれた理由からお伺いできればと思います。
PwC 青木:
私は戦略ファームからベンチャーキャピタルへ転職していましたが、コンサルティング業界では次々とM&Aが行なわれるなど大きな変革が起こっていました。
成長企業への投資をしながら、コンサルティング業界は国内では数少ない成長マーケットだととらえていました。
もともとコンサルティングの仕事が好きだったこともあり、このタイミングで再度、コンサルティング業界へ戻ることを決心しました。
CEG 渡辺:
コンサルティング業界の中で、なぜPwCを選ばれたのでしょうか?
PwC 青木:
変革が進むコンサルティング業界の中で、BIG4のポテンシャルが大きいと考えていました。
その中でも、PwCはまさに変革を進めているタイミングだったので、大変興味を持ちました。変革をしているときに入って、新しくチームを作ったり、ビジネスモデルを進化させてみたりしたいと思いました。
そのようなベンチャーっぽさがある一方で、PwCの場合はグローバルネットワークというプラットフォームの魅力もあります。
入社当時は、ストラテジー部門がまだ存在しておらず、これから立ち上げるという段階でした。私は、そのようなタイミングで入社して、部門の立ち上げを1年半ほど行なってきました。
CEG 渡辺:
青木さんは、以前は外資系の戦略ファームにいらっしゃいました。他のコンサルティングファームとPwCの違いはどのような点にあると感じていらっしゃいますか?
PwC 青木:
若いころは、コンサルはあまり「スケールメリット」が効かないビジネスだと思っていました。
しかし、この10年~15年ほどの間に、コンサルティングビジネスがどんどん変わっていくのを目の当たりにして、今では、スケールメリットが効くと考えるようになりました。
CEG 渡辺:
そうですよね、私もそう思います。
3年以上前ですが、鹿島現会長に弊社へお越し頂いた際、アフリカに1万人以上のコンサルタントがいるとお伺いしました。1万人と伺ってすごく驚いた記憶があります。
アフリカに進出したいと考えている日本企業から相談があった場合、通常のファームですと、アフリカの事をよく分からないままプロジェクトをスタートさせるしかなく、とりあえず現地に行って聞いてきた話をまとめてレポートする・・・ということもあるでしょう。
しかし、PwCであれば、電話一本で、現地でずっと働いているコンサルタント達の知見や情報が手に入ってしまう。プロジェクトで短期間現地に滞在しているコンサルタントとは、得られる情報の量・質も全く異なります。これは、まさに組織の規模や体制による圧倒的に大きな優位性だと思いました。
PwC 青木:
まさにそうなのです。PwCに入社して、「サービスの幅広さ」と「対応スピード」に違いを強く感じます。
PwCのグローバルネットワークには、監査やアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして法務の専門家など、全世界で20万人のプロフェッショナルが集結しています。M&Aをひとつとっても、M&AアドバイザリーのチームがFA業務という、お客様のフロントの交渉代理をやりながら、我々のチームがビジネスのデューデリジェンス(DD)を行います。
さらに、M&Aトランザクションのチームが財務DDとバリュエーションを行ない、税理士法人のチームが税務DDを行ない、コンサルティング合同会社のチームがITのDDや人事のDDを同時並行で行ないます。
これをまとめてワンパッケージでお客様に提案することが、我々であれば可能です。
CEG 渡辺:
実に多様なサービスを提供することが出来ますね。
PwC 青木:
さらに、既存の組織体制に甘んずることなく、新しいサービスをどんどん立ち上げています。
戦略コンサルのブーズやPRTMの買収もそうですし、デジタルフォレンジックのチームも立ち上げました。
伸びるマーケットやビジネスに対する投資はすごいものがあり、まさにスケールメリットの成せる業だと思います。
また、これらの多様な専門チームがすぐそばにいますので、常に情報交換をしながら動くことが可能です。
案件が急に動き出しても、迅速にチームアップできるようなマインドセットがあるので、最適なチームで案件に臨める体制があります。
CEG 渡辺:
ありがとうございます。
本日は、御社の魅力をお聞きする中で、あわせて次代のコンサルティングファームの在り方についても掘り下げていくことが出来ればと思っています。
よろしくお願いします。
#2 専門家の助言が、戦略コンサルタントの提案内容を深化させる
CEG 渡辺:
PwC全体の事業内容とディールズストラテジーの位置づけについてお聞かせください。
PwC 青木:
PwC Japanグループが展開するサービスは、ディールアドバイザリー、コンサルティング、監査・アシュアランス、税務、法務などがあります。
その中で、ディールアドバイザリーは、M&Aと事業再生とPPP(官民インフラ)の三本柱でやっています。
我々のディールズストラテジーは、この三つの業務の中で発生する戦略イシューを扱うチームです。
CEG 渡辺:
ディールズストラテジーでは、具体的にはどのような業務を行なうのですか?
PwC 青木:
例えばM&Aですと、ディールが起きる前には、クライアントの経営戦略から考えて、M&Aをどのように活用するのかを提案します。
ディールの途中では、様々な専門家とチームを組んでプロジェクトを遂行します。その際、我々は事業サイドの視点からビジネスデューデリジェンスを担当します。
ディールがクローズした後には、買収した会社を事業計画に則ってバリューアップしていくとか、事業計画そのものを見直すといったことも担当しています。
つまりは、一気通貫で、ディールの前・中・後の全部に出番があるということです。
CEG 渡辺:
先ほど、多様な専門家がそばにいらっしゃると仰っていましたが、ディールズストラテジーが、専門家の皆さんの協力を得ながらプロジェクトを運営していくという感じですよね。
PwC 青木:
そうです。特にディール、トランザクションが起こっている最中は、他のチームと共同でプロジェクトをすることが多いです。
先ほどお話したように、M&AアドバイザリーのチームがFA業務を行う中、デューデリジェンスも、ビジネスDDを我々が行い、財務DD、税務DD、システムや人事のDD等を各チームと共同で行います。
また、戦略を立案する際に重要な「業界エキスパート」にも協力してもらえます。
PwCの日本におけるメンバーファームには、合わせて約5,000人、グローバルネットワーク全体ですと20万人のスタッフがいます。
その中にいるエキスパート達から当該業界についての様々な知見が得られます。
それを我々ストラテジーチームのスタッフが、戦略の視点で理解し直して、メンバーと議論をしながら戦略を立案しています。
CEG 渡辺:
このような体制があると、以前とは提案内容に変化はありますか?
PwC 青木:
はい、だいぶ違う印象です。各チームがそれぞれに専門性を持っていて、独自の視点を持ち、お互いにプロ意識があるわけです。この視点から見たらこうだとそれぞれが主張します。
これによって、多角的な視点でのインプットをもらいながら、「事業目線で単純に見るとこうだけど、こっち側でこういう制約があることを考えると、この戦略は現実的じゃない。若干軌道修正したほうがいい。」といった議論ができます。
もしくは、計画は立てたけれど、こういう制約が出てきそうだから、数字はコンサバに落としておかないと危険かな、という話をすることもあります。
そういう数字の読みの微調整をする時にも、色々なインプットが活きてきますね。
CEG 渡辺:
なるほど、よく分かります。
得てして様々な現実を知ると、期待値を下げざるを得ないことが多いですよね。
しっかりと地に足の着いた、より深い提案が出来るのですね。
以前も、他の専門ファームと協働されたことはあるかと思いますが、それとは違いますか?
PwC 青木:
そこもかなり差を感じるところです。戦略ファームに在籍していた時は、アウトプットがしっかりと出てくるまではそういった情報交換をしづらい面がありました。
我々は同じPwCネットワークの一員なので、生煮えの段階でも「こんな論点が考えられそうです。もっと精査しないと分からないですけど。」という情報交換が気兼ねなく内部で出来ます。
そうすると、「こういうリスクが出てくる可能性があるんだな。」ということを頭の片隅に入れながらプロジェクトを進められます。
やっぱり、みんなプロなので、ある程度確定的なことが言えるまで中途半端な状況で外部に言うのって嫌じゃないですか(笑)。
CEG 渡辺:
確かにそうです(笑)。外部の別法人だと、なかなか難しいですよね。そういう意味では、外部の専門機関と提携するのとは、だいぶ異なりますね。
PwC 青木:
はい。やはり本音ベースで早い段階から、緩いこともひっくるめて議論できるのは、だいぶ違うと思いますね。
CEG 渡辺:
それは、提案内容のクオリティにも大きな影響がありますので、クライアント企業から見ても重要なことですね。
また、これらの専門家の知恵を統合した上で、クライアント企業へ全体として最適な提案をできるのも、とても大きなアドバンテージですよね。
専門領域ごとに各コンサルティングファームから相矛盾するバラバラな提案を受けて、経営者が「うーん。結局どうすればいいんだ?」と悩むようであればあまり意味がありません。
実際、事業、組織、法務、財務・税務、システムなど観点が違えば、アドバイスの結論が異なることも珍しくないでしょう。
他の専門ブティックファームとは一線を画し、統合した提案ができるというのは、経営者から喜ばれると思います。
PwC 青木:
その通りです。
個別領域ごとに各コンサルティングファームへプロジェクトを発注すると、それぞれをつなぎあわせたときに、トータルでどうするべきかを結局経営者が自分で考えることになります。
一方我々のチームでは、トータルで考えるとこうした方が良いと思いますというお伝えの仕方をする。
それがワンストップでご支援できる利点ですね。
#3 世界最大級のネットワークが、“コンサルタントが働きやすい環境”を生み出す
CEG 渡辺:
冒頭でのお話にもありましたが、PwCの持つ世界最大級のグローバルネットワークは、やはり仕事をする上で大きなインパクトがありますか?
PwC 青木:
それは日々すごく感じます。そもそもPwCネットワークのメンバーファームのオフィスがない国を探すのがすごく難しいくらいなんです。社内のイベントで、「うちのオフィスがない国はどれでしょう?」というクイズをするくらいです(一同笑)。世界中の至る所にオフィスがあるので、ローカル情報が電話やメールですぐに手に入ります。「そもそもどういうマーケットなの?」ということも簡単に聞けます。
CEG 渡辺:
まさに日々の業務に活用されているのですね。
PwC 青木:
それと、PwC Japanグループに含まれる各法人のスタッフを世界各国のPwCネットワークのメンバーファームのオフィスに出向させているのですが、かなりの人数を送り出しているのも特徴の一つだと思います。コンサルティングやディール、監査、税理士など、それぞれの法人から様々な目的で送っています。
主要な国だと、日本人スタッフが数十人も駐在しているのです。もちろん現地のパートナーとやり取りすることも重要なのですが、やはり日本人がいるとコミュニケーションが楽ですよね。
CEG 渡辺:
「(日本人の感覚をベースにして見たときに、)ぶっちゃけどうなの?」と聞けるほうが、ピンときますもんね(笑)。
PwC 青木:
そうなんです(笑)。ローカルでプロジェクトを行う時には、出向中のスタッフを間に入れてやり取りをすることもありますので、世界各国に日本側のスタッフが送り込まれているというのは本当に助かりますね。
CEG 渡辺:
御社の場合、ネットワークを活用しての営業のしやすさも大きな魅力かと思いますが、この点についてはいかがでしょうか?
PwC 青木:
PwCに入社して「こんなに中に案件がいっぱいあるのか!」と大変驚きました。戦略ファームにいた時は、案件を取りに行くために、サメのように泳ぎ続けないと死んでしまうというような感じでした(笑)。
CEG 渡辺:
それで疲れてしまうパートナーの方も少なくありません・・・。
PwC 青木:
以前は、新しい案件を取りに行くことにリソースや時間を使っていたのですが、PwCに入社してからは、既にクライアントベースが豊富にありました。
ディールズストラテジーチームが立ち上がったことで、他部門の既存クライアントから新たな相談が寄せられました。
その悩みに対してきちんと対応していくだけでも本当に十分な数の案件がありますので、営業活動は非常にやりやすいです。
ゼロからフックを掛けることに時間を使うというよりも、既にニーズがあるお客様に対して適切なソリューションを出すことに集中できます。
CEG 渡辺:
それは全く違いますね。
PwC 青木:
はい。多くのコンサルティングファームでは、若い時にはアナリストとして分析をやり、マネージャーになると管理者としての能力が求められ、パートナーになる時には商売人としてどう営業を行うというように、全く違うスキル身に付けていかなければなりません。
一方で、PwCの場合ですと、職人的にクライアントのニーズに応えていくところにエネルギーを使うことが出来ます。
ソリューションを出すことに集中したい人にとって、すごく良い環境だと思います。もちろん、営業をゼロからやりたい人もウェルカムです(笑)。
#4 “経営者人材”を目指すコンサルタントが、身につけるべき視点とは?
CEG 渡辺:
これまで、コンサルティングビジネスとしての御社の戦略的優位性を中心にお伺いしましたが、次は是非、ディールズストラテジーの仕事の魅力について教えて下さい。
青木さんが、戦略ファームにいらっしゃった時と今とでは、クライアントの経営者との関係性で変わったことはありますか?
PwC 青木:
まず、想定していた以上に大企業の経営トップご本人とやり取りさせて頂く機会が多いですね。
我々が担当するM&Aは、経営を左右するような大きな案件が多いですし、事業再生チームと一緒にクライシスに対応する事業売却戦略を扱うことがありますが、これも経営のトップイシューとして扱われます。
一方、戦略ファームでも、クライアントが大企業であれば、事業本部長クラスがカウンターパートのことが多いですから。
CEG 渡辺:
そのあたりは、M&Aに関する戦略を扱っているディールズストラテジーならではですね。
PwC 青木:
また、チャレンジングな案件に長く関われる点も大きな魅力だと思います。
M&Aでいうと、M&A戦略だけお願いしますとか、DDだけお願いしますといったように、スポット的な依頼が通常のファームでは多いと思います。
PwCの場合は、必ずどこかのチームが案件に関わっています。
ある有名な巨大企業同士の統合案件や業界再編に関わる案件の時も、最初の構想の段階から、ディールの実行、その後のPMIまで、常に弊社のどこかのチームが案件をリードしています。
我々ディールズストラテジーチームも、必要な際にはこのチームに加わって一緒に仕事をしていますので、業界再編が起こるきっかけ作りからクローズまでをずっと見ることが出来ます。
CEG 渡辺:
それはとてもダイナミックですね。
PwC 青木:
経営危機に陥った企業の事業をカーブアウトする案件に関わることもありますが、これは数年越しとなります。
当然、数年の間には、様々な局面でその都度違う経営課題が出てきますので、難易度がものすごく高くなります。
会社を再構築するスキームを考える過程では、PwCの事業再生のプロフェッショナル達と一緒に仕事をしたり、訴訟対応で弁護士法人も巻き込んだり、税理士法人のチームと税務メリットを一緒に考えたり、といったことも多々あります。
違うスペシャリティを持った人達と、より難易度の高い課題を解決していくのは、チャレンジングで面白いですし、専門性の幅や経験も広がります。
CEG 渡辺:
それは魅力的ですね。
先ほどの話ともつながりますが、各領域のプロフェッショナルと一緒に経営をサポートしていくということは、事業目線だけではなく、経営に関わる全ての要素を統合的に見る力が鍛えられます。
本当の意味での経営者としての力を身に付けることが出来るのではないでしょうか。
PwC 青木:
おっしゃる通りだと思います。
前職のベンチャーキャピタルで、私は経営者とずっと二人三脚で仕事をしてきました。
その中で、経営の本質は、「色々な矛盾がある中でどういう意思決定をしていくか。」というところにあると感じていました。
戦略コンサルの時には「あるべき論」を語るという、ある意味ですごくピュアな、閉ざされた世界でソリューションを考えていたと思います。
でも、実際に人の顔を思い浮かべながら組織を動かして戦略を実現しようとすると矛盾が生まれることもあります。
あるいは、法的な対応に迫られて、あるべき論と矛盾することもあったりします。
色々な角度で物事を見ると、それぞれ出てくる答えが違っていて、そこには色々な矛盾があります。
経営者は、絶対的な100点の解がない中で、ベストな解を選ばなければならない。それは、すごく難しいことなのです。
各領域のプロフェッショナルがそれぞれの視点から出したアドバイスを、我々が総合的に勘案した戦略を提案することで、経営者にベストな解を選んでいただけるようにサポートすることが出来ます。
そういう意味では、我々が日々考えていることは、経営者が考えるレイヤーに極めて近いと思います。
CEG 渡辺:
「将来は経営者になりたい。」と考えているコンサルティングファームにいる方にとって、とても良い経験を積める環境ですよね。
以前、戦略ファームからPEファンドに移られた方から、大変興味深いお話を聞きました。
その方は、ファームにいた際に、クライアント企業の社長が自分達とのミーティングにほとんど出てこないことをずっと疑問に思っていたそうです。
企業の戦略というとても重要なテーマの会議に出てこないで、社長は一体何をしているんだろうと。
その後、PEファンドに入って、事業を実際に率いるようになって、謎が解けたそうです。
社長は、戦略コンサルタントが扱う「事業目線の話」よりも、ずっと多くの重いテーマで悩んでいたことに気づいたそうです。
例えば、社内のキーマンの処遇、訴訟リスク、税務のことなど様々な重いテーマがあります。
一見すると税務って重要度が低そうですが、実は税務を工夫することによるコスト削減効果はとても大きいものです。
成功するか否かわからない事業戦略の見直しよりも、短期的に手堅く企業の利益に直結しますしね。
PwC 青木:
おっしゃるとおりですね。
CEG 渡辺:
リーマン・ショックみたいなことが起こって市況が著しく悪くなった場合、景気と連動する人材派遣業のようなビジネスは大きなダメージを受けますよね。
でも、人材派遣会社を持っているオーナー社長からすると、それを事前に想定できれば、会社を売却したっていいわけです。
このようなことも含めて、社長は選択肢を持っています。
「この事業を伸ばすにはどうすればよいか」という成長戦略を考えるコンサルタントの目線はとても大切ですが、経営全体から見ればあくまで一部分です。
一方、各領域の専門家の見解を統合して提案する御社であれば、経営者と同じレイヤーの考え方を学んでいけるのでしょうね。
PwC 青木:
はい、そう思います。
また、先程申し上げましたように、何年も長くサポートさせて頂くケースが非常に多いので、自分たちが提言したことのうち、どれが実現されて、どれがお蔵入りになったかという変遷も分かります。
そうするとコンサルタントとして、あれはなぜお蔵入りになったのか、と反省も出来ます(笑)。
#5 グローバルネットワークを持つPwCならではの人材育成制度と海外でのキャリア
CEG 渡辺:
御社の人材育成の体制やキャリアパスなどについて、お聞かせください。
PwC 青木:
戦略コンサルタントとしてのベーシックスキルを身につける研修制度は、部門内に整っていて、トレーニングはインハウスでやっています。
M&Aや財務系の研修は、もともとPwCに充実したものがありますので、こちらはネットワークのナレッジを活用して行います。
CEG 渡辺:
例えば、コンサル未経験の方が入社された場合は、どのくらいの期間をかけて学んでいくのでしょうか?
PwC 青木:
新卒か中途かによってずいぶん違うのですが、中途入社の場合、ベースの研修はまとめて2週間位で行います。
それ以外にも、アドホックに好きな研修に参加してもらっています。
様々なテーマの研修が用意されているのですが、その中から自分の受けたいプログラムを選べるという制度です。
内容は、海外で一週間ぐらい缶詰になって行うディール関係の研修など、本当に色々なものがあります。ほとんどのメンバーはマネージャーになる頃までに参加しています。
海外研修は欧州のすごくいい場所で開催しています。
その他にも、東京ディズニーランドでやる研修もあります(笑)。
CEG 渡辺:
ディズニーランドですか?(笑)
PwC 青木:
ディズニーランドの中にあるホテルに泊まりこみでM&A関係の研修をやるんですよ。
CEG 山口:
ディズニーなのは何か意味があるんですか?
PwC 青木:
楽しいからですかね(一同笑)。
CEG 渡辺:
お話を伺っていると、和気あいあいとして楽しい社風のように感じますが、実際の社内の雰囲気はいかがですか?
PwC 青木:
そうですね、一言でいうと「ダイバーシティ」という感じですね。実際に外国人も多いですし、色々なバックグラウンドの人がいますので。アドバイザリー全体でみても、それぞれのチームで雰囲気は全然違いますしね。
CEG 山口:
以前、御社への入社をご支援した帰国子女の方が、「グローバルな雰囲気が思った以上に強くて、すごく嬉しいギャップでした。」と仰っていました。
PwC 青木:
我々、ディールアドバイザリーのチームだけで十数カ国の出身者がいるんですよね。単純に言葉の面から見てもすごく多様です。フランス語を話せる人、インドネシア語がペラペラな人、ポルトガル語と英語と日本語のトリリンガルなど、色々な方がいます。
CEG 渡辺:
社内のミーティングは、日本語で良いんですよね。英語ができなくても入社可能ですよね。
PwC 青木:
はい、社内ミーティングは、日本語で大丈夫です。英語ができない人もいます。そういう人は「がんばれよ」とは言われますけれど(笑)。
CEG 渡辺:
先ほどのお話にも出ていましたが、海外オフィスに行くチャンスもあるのですよね?
PwC 青木:
はい。「モビリティ」というプログラムがあります。現在、ファームとして非常に力を入れていて、もっとたくさんの人を海外に送り込もうとしています。
クロスボーダー案件では、海外のメンバーファームのオフィスとコラボレーションすることが多いですが、日本人スタッフが海外オフィスにいたほうが連携がスムーズです。
特に我々のチームでは、クロスボーダーの案件が非常に多いので、海外派遣の人数をKPIとして、どんどん海外オフィスに送りこめという雰囲気です。
CEG 渡辺:
そんなに送り込もうという雰囲気が強いんですね。受け入れる海外オフィス側は、ウェルカムという感じなんですか?
PwC 青木:
そうですね、好意的に受け入れてくれています。基本的には、行く人それぞれにミッションを与えています。日本から出てくるクロスボーダー案件を拾うことが中心のミッションもあれば、現地オフィスの最新ノウハウを学んでくることがミッションの人もいます。
CEG 渡辺:
それは海外で働く経験を積みたいと考える方にとって、とても良い環境ですね。
#6 ポストコンサルが、PwCに“今”ジョインするメリットとは?
CEG 山口:
次は、最近の採用状況についてお伺いしたいと思います。
戦略ファーム出身の方も含めて、多数のポストコンサルの方が御社にジョインされています。戦略ファームからいらっしゃる方々は、どのような点に魅力を感じて、入社を決めていらっしゃるのでしょうか?
PwC 青木:
戦略コンサルをずっとやるのではなく、今まで以上にエッジをたてたいとか、新しいことをやりたいという理由が多いですね。
また、グローバルネットワークがあるので、海外のオフィスで仕事したいという希望の方も多くいらっしゃいます。
CEG 渡辺:
組織が出来上がっていないというのも、すごくいいタイミングだと思うんですよね。
PwC 青木:
おっしゃるとおりです。今まさにチームを作り上げていっている途中です。今後もかなりの拡大志向で、投資をし、チームを大きくしていきます。いくらでも人がほしい状況です。
CEG 渡辺:
このような拡大期にあるファームに入ることは、多くの方にとって良いことですが、特にコンサル経験者の方が入社される際のメリットが大きいですね。
パートナー、ディレクターなど幹部クラスのポジションがまだ空いているので、即戦力のポストコンサルであれば、高いポジション・好条件での入社も可能で、プロモーションもしやすい。ファームの幹部へ駆け上り、組織のかじ取りにかかわっていくチャンスがあります。
一方、幹部の層が分厚いと、実力があってもあがるのはなかなか大変ですからね。
PwC 青木:
はい、まさに「今が旬」という感じです(一同笑)。「これから数年間、本当に面白いぞ!」と思っています。
逆に言うと、完全に出来上がった組織で粛々とやりたいという人には、あまり合わないかもしれません。でも、組織を作っていくところも含めて楽しいと思える人には、すごく面白い環境だと思います。
CEG 渡辺:
ありがとうございます。では、御社の求める人材要件についてお聞かせください。
PwC 青木:
人材要件は、戦略コンサルティングの経験がある方、またはM&Aの実務がある方、かつクロスボーダーの案件に対応できる語学力がある方が我々としてのストライクゾーンです。
志向性でいうと、もっと専門性を広げていきたい方、よりチャレンジングな仕事がしたいと思っている方、新しい組織を作っていくことを楽しいと思って頂ける方に是非来て頂きたいです。
CEG 山口:
わかりました。コンサル未経験の方でも、会計・財務の知識があって、プラス英語力の素養がある方であれば、採用されているご状況ですよね。
PwC 青木:
はい、そうです。我々のチームに高い関心をお持ちであれば未経験の方も歓迎です。
CEG 渡辺:
年収水準についてはいかがでしょうか。弊社からも戦略コンサル経験者の方をご紹介していますけど、前職よりも上がりながらジョインするというケースも多いですよね。
PwC 青木:
はい、そうですね。年収水準は高い方だと思います。戦略コンサル経験者の方がジョインされる際にも、十分に魅力的なオファーをしています。
CEG 渡辺:
ディールズストラテジーのヘッドである青木さんから、チームの将来像や展望についてお話し頂ければと思います。
PwC 青木:
質的にも、量的にも、今よりもさらに強力なチームにしていきたいですね。M&Aの上流から入っていって、我々から“ディールを起こしていきたい”と思います。起こったディールを拾っていくのではなく、ディールをどんどん仕掛けていくということをクライアントに提案していけるチームにしていきたいというのが、展望としてあります。
CEG 渡辺:
“ディールを起こしていく”というのは、クライアント企業へ成長する熱を与え、動かしていくという感じですか。
PwC 青木:
そうですね、そんなイメージです。例えば、どの業界においても業界再編は今後必須になってきますよね。どうせ起こるのなら、待ちになっているのではなく、こちらから仕掛けていきませんか、と。
また最近は、デジタルの影響を受けて業界全体がシュリンクしていく状況が急増しています。このままじっとしていたら、みんなが弱り切って、ネガティブな意味での合従連衡が起こる。
その前に体力のあるうちに自分から手を打ち、ビジネスモデルを変えていくとか、デジタルの領域に自ら突っ込んでいくとかを戦略的にやっていきませんかという提案をしながら、ディールを仕掛けていきたいと思っています。
CEG 渡辺:
なるほど、それはとても面白そうですね。実際、今はどの業界も自ら動かないと危ない時代になっていますからね。
PwC 青木:
そうですね。私が担当している案件でもそのような事例があります。
老舗のメディア企業で現状の財務状況は文句なしなのですが、あと5年や10年もするとデジタルの波にやられて、相当きつい状況になっていくのが見えている。
そこで、役員の皆さんが参加する勉強会で、「いま仕掛けていかないと、5年後に戦略オプションがなくってしまいます。」というような話をしていました。すると、真剣に考えていこうという雰囲気に会社が徐々に変わり、今年に入ってからM&A推進室を立ち上げることになりました。
業界再編の代表例として取り上げられるような電撃的なM&Aを我々のチームがどんどん仕掛けて、サポートしていきたいと思っています。
CEG 山口:
ビジネスモデルの変革を含めたM&Aの提案というのは、非常に面白いですね。
PwC 青木:
「このまま放っておいたら自分たちが苦しくなることは分かっているけど、どうしたらよいか分からない・・・」というところで悩んでいるお客さんがすごく多いのです。私としてはここをぜひサポートしたいと思います。
CEG 渡辺:
日本企業は様子見する会社が多いですからね。とりあえずまだ死なないからいいかと。
PwC 青木:
そうそう。でもこのままじゃまずいなっていう。
CEG 渡辺:
そこを後押ししていくというのは、まさに今の日本の市場に求められるサービスですね。
では最後に、御社への応募を検討される方へメッセージをお願いたします。
PwC 青木:
チャレンジングな案件が多いですので、更に活躍の場を広げていきたいとか、専門性を広げていきたいとか、そういった方々にはいろいろなオポチュニティを提供できる環境です。
特に今までのコンサル経験からさらに一歩踏み出したいという方には、まずはカジュアル面談でも構わないので、お話を出来ればと思っていますので、よろしくお願いします。
編集後記
高度化・複雑化・クロスボーダー化が進む現代において、経営者や企業が抱える悩みはより難易度の高いものへと変化してきています。
ビジネスの各領域には、コンサルタントや会計士、税理士、弁護士などのような領域の専門家がいますが、そのノウハウは次々と蓄積されていき、専門性は日々高まり続けています。
そういった中で、経営者が判断を下すために必要な情報は複雑さを増し、経営コンサルタントに求められる役割も高度化していることは想像に難くありません。
このような時代の変化に合わせて生まれた、「複数の専門家による見解を、戦略の視点で再解釈して、総合的な判断としてクライアントに提供し、実行・定着までを支援する」というPwCディールズストラテジーのコンサルティング手法。
これは、経営判断に必要な情報の「交通整理」を行い経営者の意思決定に直接役立つという点に加え、企業の全部門・全フェーズにおいてクライアントに寄り添い変革を長期的にサポートできるという点で、注目すべきスタイルと言えるでしょう。
今回のインタビューは、情報が極度に複雑化した現代において、必要なコンサルティングとは何なのかを立ち止まって考える貴重な機会となりました。
IBM東京基礎研究所での勤務を経て、外資系戦略コンサルファームにて多数のプロジェクトをリード。その後、独立系投資会社を経て、プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現PwCアドバイザリー合同会社)に入社。現在は、ディールズストラテジー部門のリーダーとして、M&A戦略からビジネスデューデリジェンス、統合後の戦略再構築など、M&Aにかかる戦略課題を中心にクライアント企業を総合的に支援している。博士(工学)。