三菱UFJリサーチ&コンサルティング インタビュー
1985年に三和総合研究所が発足。
その後、東海総合研究所、ダイヤモンドビジネスコンサルティング、東京リサーチインターナショナルとの合併を経て、日本を代表するシンクタンク「三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下、MURC)」が誕生しました。
今回は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)のリソースを活用したユニークな事業展開を行なっている同社を特集します。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 戦略コンサルティング部の松田様と渡邉様にお話を伺いました。
サービスの特徴、組織運営の特徴、求める人材像など、大変興味深い内容をお届けします。
→三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)の企業情報はこちらをご覧ください。
Index
#1 コンサルファーム出身者を惹きつけるMURCの魅力とは?
CEG 渡辺:
私は新卒で前身の三和総合研究所の戦略コンサルティング部門におりました。
その三和総研も、日本屈指の金融グループであるMUFGのシンクタンクとなり、大きな変貌を遂げていると伺っています。
本日は、MURCの魅力と実態について、詳しくお聞かせ頂ければと思います。どうぞ宜しくお願い致します。
まず初めに、松田さんと渡邉さんの自己紹介をお願いします。
MURC 松田:
新卒で東京三菱銀行に入行して、法人営業を担当した後、総合系コンサルティングファームに転職しました。
その後、外資系戦略コンサルティングファームを経て、MURCに参画しました。
現在は私が、ファイナンス系のバックグラウンドであることもあり、M&A等のファイナンスが絡むプロジェクトを多く担当しています。
実は、コンコードの渡辺さんとは、総合系コンサルティングファームに入る時から、もう十年位の長いお付き合いになります。(一同笑)
MURC 渡邉:
私のコンサルティング業界でのキャリアは、大手財務系コンサルティングファームのM&Aアドバイザリー室に入社をしたときからスタートしました。
財務系コンサルティングファームでは、主にM&Aの実行フェーズにおけるフィナンシャルアドバイザリー業務とバリュエーション業務を担当していました。
しかし、実行フェーズに関わるにつれて、企業の成長に重要な事はM&A実行前のフェーズでしっかりと戦略を考え、具体的かつ現実的なシナジーをしっかり検討しておく事であると考えるようになり、このような想いから、M&A戦略フェーズに関われる戦略コンサルティング業界への転職を決意しました。
そして、当時、戦略立案・実行支援・PMIのM&Aプロセスを一気通貫で支援していた外資系コンサルティングファームの戦略グループへ転職しました。
ただ、面接を重ねて行く際に、私の興味がM&Aから戦略策定全般に移ったため、実際はM&A専門家としての入社ではなく、一般の戦略コンサルタント候補として入社しました。
そういう意味では私は前職のキャリアを完全否定した形で入社したため、ほぼ第二新卒の扱いであるビジネスアナリストとして入社しました。
CEG 渡辺:
前職に入られたときはおいくつでしたか?
MURC 渡邉:
前職には27歳で入りました。
同期には博士課程の方も多かったので、年齢的には新卒の人たちとそれほど大きな差はなかったですね。
CEG 渡辺:
その後、マネージャーまで経験されたという事ですね。
MURC 渡邉:
そうですね。ビジネスアナリストからマネージャーまで一通り経験し、現在のMURCに転職した次第です。
CEG 渡辺:
お二人とも、戦略コンサルティングの仕事を既にされていた訳ですが、なぜ、MURCに転職されたのでしょうか?
MURC 松田:
自分でビジネスを動かしている感覚を持ちたかったことが大きな理由です。
もともとが銀行の営業からキャリアをスタートしていることもあるのだと思いますが、第三者的な視点での支援に加えて、自分もビジネスに参加している実感をより感じたいと思っていました。
そのような中で、MURCの戦略コンサルティング部(当時C&B室、大企業向け戦略コンサルティング部門)の話を紹介頂きました。
部門立ち上げの時期で、銀行とコンサルタントが協働でクライアントに価値を提供するという、新しい事業モデルを作り上げていくことに関わっていけそうだという点に大きな魅力を感じました。
また、MURCは、自分の出身であるMUFGのグループ企業で馴染みもありましたので、意思決定しやすかったです。
CEG 渡辺:
松田さんは、総合系コンサルティングファームでプロジェクトのマネジメントのみならず、営業も含めて大変ご活躍されていました。
ですが、戦略ファームでは、営業活動の自由度が少なく、やや動きづらいようにお見受けしていました。
MURC 松田:
もともと私自身は銀行の営業ですし、自ら営業をして、ビジネスをつくり、お客様と一緒に育てていくことが好きです。
自分自身の問題でもあったのですが、自分もお客様のビジネスに参加している実感が持ちづらかったことと、これまでの様々なお客様とのリレーションが薄れていくのではないかという危機感があったのは事実です。
MURC 渡邉:
私がMURCを選んだ理由は二つあります。
一つ目は、銀行による強力な営業チャネルの存在です。
弊社は銀行から新規案件が継続的に連携される仕組みがあるのですが、これはコンサルタントがゼロ次営業に費やす工数を大幅に削減できるため、確度の高い営業提案、またデリバリーに効率よく工数配分が出来ます。
二つ目は戦略コンサルティング部(当時 C&B室)という新しい組織づくりに関われる点です。
弊社に転職する前、私は事業会社への転職も視野に入れておりました。
実際に事業そのものにも興味があったからです。
コンサル業務と事業を両立したいと漠然と考えていた際に、設立間もない戦略コンサルティング部を自分達の手で一緒に作り上げていける事は非常に魅力的でした。
また、MUFG全体が、MURCや戦略コンサルティング部を強力に支援してくれています。
現実問題として、新しい仕組み・組織を立ち上げる際、大きな企業グループに後ろだてになってもらえる事は非常に大きなメリットです。
以上二点から、私は他のコンサルティングファームではなくMURCでやっていく方が面白いと考え入社を決意しました。
#2 初回の名刺交換から2週間でPJがスタート
CEG 渡辺:
実際、入社されてみての感想はいかがでしょうか。
MURC 松田:
MURCに入って、「世の中には、コンサルティング機能を求めているお客様がこんなに大勢いるんだ」というのが改めて良く分かりました。
MURCに参画してすぐの経験ですが、初回の名刺交換から2週間で中期経営計画立案のPJが開始したことがあります。
そのお客様は、これまで自社で中期経営計画を策定されていたのですが、経営環境が変化したことで、新しい視点で中期経営計画を策定する必要性に迫られていました。
しかしながら、これまでコンサルティング会社とのお付き合いが無く、銀行に相談され、銀行からMURCが紹介されたという経緯でPJが開始しました。
外資系の大手ファームだと、お客様はリピーターが中心だと思います。
一方、MURCでは銀行からのご紹介を中心に新規のお客様から、多くの相談が来ます。
しかも特に戦略に関する相談が多いことを考えると、世の中のコンサルティング機能へのニーズが高いことが実感として分かりました。
また、ここ1年~1年半ほどの間に、MURCと銀行側とで、お互いの機能をどう活用し合うのかがしっかりと理解できてきたということも感じています。
CEG 朏:
お互いの機能の理解が深まったきっかけはどこにあるのでしょう?
MURC 松田:
私がもともと新卒で当時の東京三菱銀行を選んだ理由の一つなのですが・・・。
かつては、現在の大企業の成長を支えてきたのが、銀行でした。
そのためには、当然ファイナンスの面だけではなく、事業面の色々な支援を行っていました。
素晴らしい企業を小さなところからどんどん伸ばしていくというのは本来、MUFGをはじめとするメガバンクが担ってきた役割だったのです。
事実、私自身も銀行員時代には「自分が社長だったらどうしたいのか」「工場等を積極的に視察するなどして、事業への理解を深めるように」といったことをよく言われていました。
そういった機能をMUFGとして強くすることが、他のメガバンクやグローバルファイナンシャルカンパニーとの差異化の一つだと思います。
そういう仮説のもと、金融とコンサルティングの両面での価値提供という事業モデルを試行してみて、実際に金融とコンサルティングの両面から支援を求めているお客様はたくさんいることがわかったことが大きいと思います。
「我々が追い求めていることは間違ってなかった」というのはMUFGの認識としてあるのではないかと思います。
CEG 渡辺:
松田さんが外資系戦略ファームからMURCに移り、間もない頃に食事に行きました。
その時に、先ほどのMURCに入ってすぐに、二週間で案件を受注したという話をされていました。
三和総研のときはそこまでの基盤はなかったです(笑)。
当時と違い、都銀が三つに収斂しているというのも大きいのでしょうね。
MURCへ入社された後もイメージ通りだったのでしょうか。
MURC 松田:
そうですね。改めて、MUFG、MURCの基盤はすごいなと思いました。
MURC 渡邉:
入社の動機にもなった銀行の営業チャネルについては、入社前にイメージしていた以上であり、想定していたよりも、大企業へのチャネルがかなりありました。
また、案件の中身は戦略立案に関する相談も多く、半沢直樹ではないですが、日本は間接金融・メインバンクが支えている部分はまだまだ多いんだなと感じましたね。
もう一つの動機でもある組織作りに関われる点についても、戦略コンサルティング部の評価制度策定などに主体的に関わる事が出来たりと、非常に満足いく経験を積ませて頂いております。
また、戦略コンサルティング部には様々なファーム出身の方がいらっしゃるので、仕事の進め方やパワーポイントの書き方にも様々な手法があり、日々学ぶ事が多いですね。
CEG 渡辺:
今、お話に挙がっているように、MURCは、MUFGのネットワークを活用した営業体制が大きな強みとなっていますが、もう少し詳しく実情を教えて頂けますか?
MURC 松田:
そうですね。MUFGの各企業を通じて、お客様からのご相談は非常にたくさん来ています。
私たちだけでも、毎日、新しい相談を受けています。
しかも、現状では、まだMUFGの全員が我々の機能や活用のメリットを詳しく理解している訳ではありません。実際のポテンシャルは、もっとあると思います。
CEG 渡辺:
それはすごい数ですね。
MURC 渡邉:
繰り返しになりますが、銀行のネットワークをフル活用して提案、もしくはデリバリーできるのは本当に大きな強みです。
もちろん提案自体は最終的にコンサルティングの中身で勝負するわけですが、長年培われた銀行とクライアントの信頼関係があることはとても心強いものがあります。
前職でも、パートナーとクライアント企業の役員は、お互いが若手だったころから付き合いがあり、お互いが出世する事で新たなビジネスが生まれるという事はよくある話ですよね(笑)。
大企業はコンペが基本となるため、受注できるかどうかは銀行とは関係なく、提案の内容やコンサルティングスキルでの勝負とはなりますが、銀行ネットワークを使いスムーズなエントリー、フォローが出来る事は非常に魅力的ですね。
#3 日本企業の「核」となる戦略立案と実行支援を担う存在
CEG 渡辺:
MURCのコンサルティングサービスの特徴についてお聞かせ下さい。
MURC 松田:
やはり、クライアントとの長期間での関係が前提となっているというのは、他コンサルティングファームと大きく違う点だと思います。
成果をしっかりと出す必要があるので、実行部分に入ることもかなり求められます。
実行部分も単に制度を設計するといったものではありません。もっと実際の事業運営の話まで踏み込んだものです。
例えば資金調達をどうするのか、決済の仕組みをどうするのか、キャッシュマネジメントをどうするか、というところまで具体的に踏み込んでアドバイスできるのは、かなり大きく違う部分だと思います。
例えば、M&Aの場合、戦略立案からM&A後の事業運営の設計まで、一貫して自らが関与できます。
また、新規事業の検討では、銀行と協働で新規事業に必要なファイナンススキームの検討・開発も行っています。
MURC 渡邉:
私が感じるMURCの特徴は二つあります。
一つは視座の高いコンサルティングを行えるという点です。
銀行本店営業部の方を中心に、彼らは自分達が日本を支えているという自負があります。半沢直樹ではありませんが、いい意味での青臭さがありますね。
銀行が取引している企業は多岐にわたり、それらを俯瞰すると、まさに日本の縮図になります。
そのため、彼らは企業単体をどう支援するかだけではなく、業界をどう成長すべきかという視点で常に考えています。
そういう方たちとハイレベルな視点で議論出来る事は他のコンサルティングファームにない特徴ではないかと思います。
もう一つは、シンクタンクの機能を活用したコンサルティングが可能な点です。
実はこのインタビューの直前にちょうど、弊社の政策研究部門(官公庁向けシンクタンク)とミーティングをしていました。
彼らは、官公庁という規制をコントロールする側の人たちと、常に仕事をして、強いコネクションを持っています。
例えば、何らかの規制緩和策について官公庁が検討をしているとしましょう。
しかし、官公庁としては、民間企業としてはどのような規制緩和を望んでいるのか分からないと、適切なルールが作れない。官公庁としても民間の意見を知りたい訳です。
一方、民間企業にとって規制というのは、通常は「前提」として受け入れ、その制約の中でビジネスを考えなければいけません。
しかし、MURCのコンサルティング部門とシンクタンク部門が連携して支援することで、ルール作りに民間企業の意向が適切に反映されていけば、民間企業にとってはビジネスチャンスが飛躍的に高まる可能性があります。
このようなコンサルティングを展開できるのは、シンクタンク系のコンサルファームならではの強みで、従来のコンサルサービスの幅を一気に広げ、追随を許さないものになっていくと考えています。
CEG 朏:
最近、先端的なコンサルティングファームで、「ルール形成」というキーワードを掲げはじめるところが登場しはじめました。
御社の場合、それは構想レベルではなく、既にそれを実現できるリソースを持ち、大きなアドバンテージがあるのだなと感じました。
MURC 松田:
官公庁との関係があるのは強みですね。シンクタンクの機能があることは大きいと思います。また、直接関係あるかは分かりませんが、政治家になっている当社の卒業生もいますし。
実際、ルール形成に必要な機能や人材、知見は豊富にそろっていると思います。最近も、あるグローバル企業からルール形成での相談を受けています。
CEG 渡辺:
三和総研出身で、大変活躍されている国会議員の方もいらっしゃいますね。
1985年の創業時からシンクタンク業務は行なわれていますので、官公庁との繋がりや政策提言に関するノウハウはかなりのものでしょう。
最近この領域に関心を持った他ファームが急に追いつこうとしても、容易ではないでしょうね。
官界との関係だけでなく、経済界との関係という点でも、MUFGのグループ企業である御社は特徴的かと思います。日本の大企業とメインバンクとの密な関係が、御社のベースにあります。日本の大企業から「核(コア)」となる戦略立案と実行支援に関する相談を受けていらっしゃると聞きます。
MURC 松田:
はい。企業の核となる戦略については、「やはりメインバンクに相談したい」、「外資系企業にはあまりオープンにはしたくない」という声は日系企業の幹部の方から時々聞かれます。非常に大きな企業の戦略は国家的な利益とも絡みますしね。
MURC 渡邉:
実際、いろいろな事情から、外資系コンサルティングファームに対してアレルギーや懸念を持っているお客様は少なくありません。
プロジェクトが終了してしまうと、継続的なフォローはしてもらえないというのもその一つでしょう。もし、フォローをお願いしようとするとまたそこで高いコンサルティングフィーがかかる。
しかしMURCですとコンサルティングのプロジェクトが終わったとしても、銀行が窓口となってリレーションを継続していくため安心感もあるし、信頼できるというお話をよく頂きます。
CEG 渡辺:
プロジェクトが終わった後、銀行が日常的な業務で関係を維持してくれる。その後、次の相談ごとが出てきたところで、MURCへ話が来るのですね。
MURC 松田:
はい。ただ、プロジェクトが終わってもお客様との関係は切れないのが前提なので、我々の中では、実は良い意味で非常に高い緊張感がありますね(笑)。
MURC 渡邉:
よく“絵に描いた餅にしたくないから実行支援系のファームに行きたい”という人がいますよね。弊社の場合は、それが本人の意思に関係なく、仕組み上そうならざるを得ないため、そういった考えの方は非常に相性がいいと思います(笑)。
CEG 渡辺:
提案した内容がどうなったのか、責任を持って見ていくということになるわけですね。
MURC 渡邉:
少なくとも銀行はプロジェクトの結果を見ていくことになりますしね(笑)。
#4 “作業”ではなく、“考えること”に集中する
CEG 渡辺:
御社の社風や働き方の実態についてお聞かせ頂けますか?
MURC 渡邉:
まず、マネージャー未満の若手層の働き方について、お話しします。
若手に戦略コンサルタントとして一定の能力をつけてもらうためにはある程度の負荷が必要であると考えます。我々は部下の育成において手を抜くということもありませんので。
そういう意味では、他の戦略ファームと同様、高いプロ意識とアウトプットが求められますので、日系企業だからと言ってワークライフバランスが極端に良いというわけではありません。
CEG 渡辺:
私も在職時は、二日連続の徹夜など普通にありましたね。(一同笑)
MURC 渡邉:
ただし、外資系ファームと異なって、アップオアアウトという考えはありません。この人は何かの才能があるという性善説に立ってものを考えるので、外資戦略ファームなら三年でアウトとなる人でも、五年は見てみようか、または戦略コンサルティング部に合わなければ弊社の他部門への異動は可能か、といった具合に、中長期的に人材を育成していくという視点に立ちます。
CEG 渡辺:
マネージャー以上のクラスの方だと、どのような働き方になりますか?
MURC 渡邉:
マネージャー以上になると、働き方がだいぶ変わってきます。
繰り返し述べているMUFGの営業チャネルの活用はもちろんのこと、様々な業務支援の仕組みがあり働きやすい体制ができています。
戦略コンサルティング部では、資料作成に必要なリサーチ業務やPPT作成などの資料づくりを担当するリサーチャー、パワーポインターを常時配置しています。つまり、新規のゼロ次営業は、銀行の人がドアノックしてくれて、そのための資料作成はリサーチャー・パワーポインターの方が実作業は対応してくれるわけです。
そうすると純粋に提案の中身や仮説構築に集中できます。つまり、作業ではなく「考えること」に集中できるのです。
マネージャー以上になると、極端にこの会社の良さを実感できると思いますね(笑)。
CEG 渡辺:
その体制は、コンサルタントクラスの人にとっても、非常に良いと思います。
他のファームだと、パートナーやシニアマネージャークラスが、営業に大忙しです。そのため、受注したプロジェクトは現場スタッフに任せっきりとなりがちです。結果、最終報告の前になって、「こんなんじゃ駄目だ!」とパートナーがちゃぶ台返しをする(一同笑)。
上の方が営業に奔走しなくて済めば、部下の面倒を見ることができ、こうした無駄は激減すると思います。
私がいた頃には、そんな体制はなかったので羨ましいです(笑)。
MURC 松田:
実は、私が入社したときには、まだそういう体制は整っていませんでした。リサーチしてくれる人やパワーポイントを作ってくれる人を探すというような形で、自分で環境を整えていきました。
こういった環境作りを自由にできるというのも、MURCの良いところです。
銀行から来られている方は、我々のことを尊重して下さっています。
「MURCがお客様に大きな価値を提供するためには、コンサルタントが最大限のパフォーマンスを発揮できるような環境や仕掛けをつくることが必要だと思います。具体的にはどういうものが必要でしょうか?」と常に聞いてくれるのです。役員の方々も、真摯に検討してくださるので、とてもありがたく思っています。
MURC 渡邉:
弊社は銀行の子会社であり締め付けが厳しいと思われがちなのですが、そういったことは全くないです。
これが銀行員がマチュアだと思うところなのですけど、餅は餅屋気質がすごいというか、出来ない事に手を出して火傷するくらいだったらコンサルにアウトソーシングしようという合理的な考え方があるので、非常に上手くいっていると思います。
CEG 渡辺:
「シンクタンク=堅い社風」というイメージを持っている方が多いですが、実はシンクタンクはもの凄く自由な会社が多いですね。三和総研に中途で入ってきた皆さんも、あまりに自由度が高かったので、とても驚いていました。
新卒で入社した人たちに、「普通の会社はこんなに自由ではないので、勘違いしちゃ駄目だぞ!」と注意をしてくれていました(笑)。
では、続いて、戦略コンサルティング部の階層や年収水準のイメージを教えて頂ければと思います。
MURC 松田:
現行の組織の階層は、シニアマネージャー、マネージャー、シニアコンサルタント、コンサルタント、アソシエイトという形になっています。
MURC 渡邉:
年収水準について、自身の例でお伝えすると、オファーレターの提示額にボーナス分が含まれていないので、最初の提示額自体は減りました。相当減って見えましたね(笑)。
しかし、実際にはボーナス分の比重が大きいので、トータル年収は前職と同水準でした。ボーナスの幅はむしろ外資ファームより大きいので、部室や個人の頑張り次第という側面は大きいですね。
私の知る限り、コンサルタントでもびっくりする金額をもらっている社員もいますね(笑)
#5 “コンサル機能”と“投資銀行機能”を併せ持つグループとして
CEG 渡辺:
ご存知のようにコンサルティング業界は、新しいステージを迎えつつあります。
様々な企業が、コンサルティング会社を活用しようとしているので、業界の規模はますます大きくなると予想されます。
そのようなトレンドにおいて、総合系ファームのように非常に成長している会社もある一方で、従来型のコンサルティングファームでは苦戦している会社も少なくありません。
戦略を提案するというオーソドックスなコンサルティングだけでは、そろそろ競争に勝てないという声も多く聞かれます。
このような中、お二人が考えている、MURCや戦略コンサルティング部の将来像について、ざっくばらんにお聞かせ下さい。
MURC 松田:
イノベータ―やクリエイターという言葉がフィットするかも知れません。
分析やプラニングだけではなく、ビジネスを創出・変革することに、もっと注力すべきと思っています。
その為に、コンサルティングとファイナンスという機能が重要な役割を持つと理解しています。
よく言われることですが、絵に描いた餅ではなくて、実際に食べられる餅を創り上げていける会社やチームでなければならない、というのは私の中にありますね。
誤解を恐れずにいうならば、コンサルティングファームで無くてもいいのかもしれません。
CEG 渡辺:
具体的には、どのような方向性をお考えですか?
MURC 松田:
企業において、「企画」と「実行」は絶対に必要なものであり、「金融」はその二つを支えていくのに不可欠なものです。
我々は、グループとしてこれらの機能を持っています。
更に、企業視点に加えて国家や政策視点で考えるシンクタンクの機能も持っている。
これはもの凄く大きなアドバンテージで、従来型のコンサルティングファームや投資銀行等と一線を画す部分でしょう。
MURC 渡邉:
例えば、将来の日本を支える可能性のあるアーリーステージの会社は、予算の制約等で、従来型のコンサルティングファームの支援は受けにくいのが現状です。
MURCは、MUFGのコンサルティング会社として、予算の制約などで、従来型のコンサルティングファームの支援が受けにくかった企業に対しても、銀行と協働でスキームを考え、状況に応じたスキームで提供できます。
実際、先日、アーリーステージの企業に対して、MURCがコンサルティングを行い、銀行がファイナンスの支援を行うことで、事業の拡大を支援した例があります。
このような動きは、従来型のコンサルティングファームではなかなかできないことです。
CEG 渡辺:
もう少し詳しくそのスキームについて教えて頂けますか?
MURC 渡邉:
例えば、銀行が融資するにあたって、その会社の安全性・継続性を調査します。
その際、第三者の目でその企業の成長性を検証してほしいという事で弊社が銀行から相談を受けます。
いわばビジネスDDですが、グループ全体収益を踏まえた支援が可能なため、単純にコンサルティング予算のみでのDD実施可否判断にはなりません。
結果、競合ファームが受託するビジネスDDよりも顧客のカバレッジが広く、多くの企業の成長に関わる事が出来ます。
MURC 松田:
やり方によっては、いろんなことができると思います。
新しく事業を始めるにあたり、リースを活用したファイナンススキームを組んで、クライアント企業に財務的な負担がかからない形を提案することもできます。
また、M&Aに関しても、MURCがなぜM&Aが必要か、M&Aの対象はどのような会社かを整理して、証券会社が実行を担当、銀行が実行後の資金決済などの仕組みを作る、MURCが事業の統合を支援するといった、グループ全体としての一気通貫のサービスを提供することが可能です。
そこに関して、MURCのコンサルタントが一貫して関与することも可能なわけです。
更には、業界環境が変化し、業界として新しい動きをする必要がある場合には、銀行や政策研究部門と協働し、政策研究部門が業界の新しい政策を提言し、コンサルタントが業界全体視点で成長戦略を描き、銀行が業界の主要プレイヤーに働きかけるという動きもできます。
#6 採用要件は、“視座の高さ”
CEG 渡辺:
戦略コンサルティング部の求める人材像について教えて頂ければと思います。
MURC 松田:
一つは、本当の意味でお客様のためにやりたいと思える人を望んでいます。
誤解を恐れずに言えば、旧来のコンサルタントではなく、自分で新しいコンサルタント像を作ろうと思っている人。
単にコンサルティングという枠組みだけでお客様のことを考えるのではなくて、お客様に対してトータルでどのような付加価値が出せるのかを考え、MUFGの基盤を上手く活用するなど、周囲を上手く巻き込んで動かしていける人を求めています。
もっと言うならば、外部の基盤もどんどん活用し、MUFGとしての提供価値の幅と深さを広げられる人がいいと思います。
CEG 渡辺:
いろいろな関係者をうまくリードできる、マチュアな人がフィットするということなのですか?
MURC 松田:
はい。マチュアさも必要だと思います。そして、考えることはもちろん大事なのですけど、やはり「動ける人」というのも大事なキーワードとなると思います。
「これをやった方が良い」ということは、多くの人が言えるのですが、「これをやったほうが良い。具体的にはこうしましょう。」さらに「このようにやってみました」と動ける人がフィットすると思います。
そして、あとは「シラフで日本という国家を語れる」人が良いですね(笑)。そういう人にとってMURCはすごく楽しいと思いますね。
今までも話してきましたけど、銀行でそういう視点で仕事をしている人も多いですし、お客様側でもたくさんいらっしゃるので、面白いと思います。
新しいビジネスモデルを作って日本を変えていきたいとか、この業界を動かしていきたいとか、そういう視点を持っている人にぜひ入社して欲しいです。
MURC 渡邉:
私も、視座の高さが一番の必要条件だと思っています。極端な話、コンサルティング能力というのはあれば良いというレベルであり十分条件と理解しています。
先ほど松田さんが言っていたフットワークの軽さというのは、その視座の高さゆえに生まれてくるものだと思います。高い目標を掲げ、その目標を実現するためのプロセスを考えれば、必然的にそういう動きにならざるを得ないはずです。高い目標を実現するためには周りを巻き込みレバレッジさせる事は不可欠ですよね。自分ひとりが出来る事なんてたかがしれていますし。
そういった意味では、ベンチャー企業の人達と考えのベースが似ていると思っていますね。ゴール(目標)を高く設定して、レバレッジを考えながらも、あくまでも自分で考え行動する、といった観点です。
CEG 朏:
先ほどおっしゃっていた、コンサルティングファームではなくても良いという、次のステージに行くためには、求める人材像も従来のファームとは異なってくるということなのですね。
MURC 渡邉:
コンサルティングスキルの大半は、アウトソーシング出来るということにだんだん気づいてきたので(笑)。
CEG 朏:
残ったのはその視座の高さということですね。
MURC 渡邉:
はい、そういう想いの部分だと思います。
CEG 渡辺:
そうすると、一回起業したのだけど、思うところがあってもう一回どこかで暴れてみようと考えている人も合いそうですね。
MURC 松田:
ぴったりだと思いますね。
CEG 渡辺:
ポストコンサルの方にも、自分の持つスキルを活かして日本に貢献したいと思っている、志の高い方が数多くいらっしゃいます。そのような皆さんにも大変フィットしそうですね。
御社にフィットしそうな方についてよくわかりましたが、では御社を卒業した後のキャリアはどのようなものになるのでしょうか。
コンサル業界は、数年で退職する人も珍しくない業界ですので、卒業後のキャリアを知りたい方も多いと思います。
MURCを辞めた後、どのようなキャリアを選ぶ方が多いのかについて、ぜひ読者の方にお伝えください。
MURC 松田:
まず、一つ大きく他のファームと違うのは、社内の他のコンサルティングチームに異動するという選択肢があるところですね。
コンサルティングファームは各社ごとに特徴があり、合う合わないがあると思います。
MURCは、それぞれのチームごとに特色ある形で活動していますので、仮に合わないという場合でも異動する選択肢も取れます。一律に、Up or Outではなく、色々な道があります。
卒業した方については・・・、渡辺さんから話してもらった方が早いかも知れませんね。(一同笑)
CEG 渡辺:
ありがとうございます(笑)。私もまさにそうでしたが、起業家志向の人たちがとても多かったのが印象的でした。自身で起業する人もいますし、クライアント企業と新規事業を立ち上げて、そのままそこの社長になるという人もいました。
また、ベンチャー企業を支援する側にまわる人もいらっしゃいます。日本で最も著名なベンチャーキャピタリストの一人である仮屋薗さん(グロービスキャピタルパートナーズ)がその代表例ですね。
あとは、事業会社に行くというよりも、やはりコンサルティングファームやファンドといったプロフェッショナルファームに行く人が多かったですね。
MURC 渡邉:
最近では、銀行に出向するなどMUFGの中で動く方もいますね。
それと、MURCの民間企業向けのコンサルティング部門から、国策に関わるために官公庁向けが多い政策研究部門へ異動するというケースもありますね。
CEG 渡辺:
では、最後にMURCへ応募を検討されている方に、メッセージを頂ければと思います。
MURC 松田:
MURCには、世界で有数の顧客基盤など、望めば活用できる基盤が多く準備されています。
やる気のある人であればやりたいことは出来るフィールドですので、是非、“我こそは”と思っている人、新しいチャレンジをしたい人は挑戦してください。
私はともかくとして、優秀なコンサルタントの方の参画も増えてきています。
是非、大きなフィールドで優秀な人と切磋琢磨していきたい人は応募して欲しいと思います。
MURC 渡邉:
コンサルだけでなく事業運営にも興味がある起業家精神の高い方、新しい歴史を一緒に創っていくことに共感してくれる方、お待ちしております。
CEG 渡辺:それでは、本日はここで終了とさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
編集後記
「新規クライアントを開拓するのが難しい。」
――これは、コンサルティングファームのパートナーの多くの方が抱えている悩みではないでしょうか。
大手企業グループに属するシンクタンクは、強力な営業チャネルを有し、新規開拓の負担が少ない点に大きな特徴があります。
パートナークラスの方にとって、大変働きやすい環境であると言えるでしょう。
また、彼らが営業に忙殺されないため、部下の指導に十分な時間を割くことができます。
このことは、若手コンサルタントが仕事をする上でも大切なことです。
中でも、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)のシンクタンクであるMURC(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)は、国内市場でトップクラスの営業チャネルを持つコンサルティング会社です。
「コンサルタントの仕事を長い間続けたい」という方にとっては、注目すべき環境だと言えるでしょう。
数社のシンクタンクの合併を経て、MURCは組織やサービスを新しく創っていく段階にあります。
インタビューをする中でも、完成された組織というよりも、ベンチャー企業のような自由度の高い組織という印象を受けました。
「日本のために新しいスタイルのコンサルティング会社をつくりたい」という"視座の高い人"には大変面白い会社だと思います。
多くの日本の製造業が、世界で活躍して、大きな影響を与えてきました。
しかし、世界で大きな影響力を持つ日本発のコンサルティングファームは、残念ながら未だに登場していません。
「金融機関と連携したコンサルティング会社」という日本発のモデルが、コンサルティング業界内で大きな存在感を持つようになるのを楽しみにしています。
<応募について>
MURCの戦略コンサルティング部では、戦略系ファームや総合系ファームでの戦略コンサル経験者を積極的に採用しています。
また、若手層については、コンサル未経験者の採用も行なっています。
同社への応募についてご関心がある方は、下記よりお気軽にご相談下さい。
大学卒業後、東京三菱銀行(現、三菱東京UFJ銀行)、総合系コンサルティングファーム、外資戦略系コンサルティングファームを経て、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに参画。業界トップクラスの企業を中心に、成長戦略立案、M&A戦略立案、新規事業立案などのコンサルティングを数多く実施。
大学卒業後、監査法人系FASを経て米系コンサルティングファームへ。
2013年より三菱UFJリサーチ&コンサルティングに参画。日本企業の海外事業展開やM&Aを中心に、業種やテーマを絞らず幅広くコンサルティングを行う。