まちてんトークセッション『まちづくりイノベーターへのキャリア戦略』

地域の未来をデザインする地方創生まちづくりEXPO「まちてん」(2015年11/28~29、於ヒカリエホール)、特別トークセッション「まちづくりイノベーターへのキャリア戦略」に弊社代表の渡辺が登壇致しました。

東日本大震災以降、まちづくりや社会変革に関心をもつ人が増えています。 一方、地方創生をリードするようなソーシャルイノベーターになるために、「どのようにキャリアを設計したらよいのか?」というキャリア戦略については、ほとんど語られていません。

このトークセッションでは、ブーズ・アレン・ハミルトンを経て、現在、岐阜市で石徹白農業用水農業協同組合参事として活躍されている平野彰秀さんをゲストに迎え、まちづくり分野で活躍するための戦略的なキャリア設計法についてお話し致しました。 その全容をご紹介致します。
※テキスト化の際に、よりわかりやすくお伝えするために、一部に加筆修正を加えております。

#1 オープニング

まちてんトークセッション

藤原:
みなさんこんにちは。本日は地域創生まちづくりEXPO「まちてん」にご来場くださいましてありがとうございます。
私は本トークセッションのナビゲーターを務めます、藤原恵子と申します。どうぞ今日はよろしくお願い致します。

本トークセッションは、「まちづくりイノベーターへのキャリア戦略」と題しまして進めていきます。
それでは早速登壇者をお迎え致しましょう。

日本ヘッドハンター大賞を受賞したキャリアコンサルタント、コンコードエグゼクティブグループ代表取締役社長・渡辺秀和さんです。
石徹白農業用水農業協同組合参事・平野彰秀さんです。
今日はどうぞよろしくお願い致します。

藤原:
東日本大震災以降、まちづくり・社会改革に関心を持たれる方が増えてきている一方で、地方創生をリードするまちづくりイノベーターになりたいけれど、どうすればなれるのか分からないという方も増えてきていると思います。
そういった方のキャリア形成について、お話を伺いたいと思います。

渡辺さんと平野さんは10年来の長いお付き合いをされていると伺いました。どのようなきっかけで出会われたのですか?

渡辺:
平野さんは東大で都市工学を学ばれた後、商業施設のプロデュース会社にお勤めになられていました。
その際、私のところへ転職・キャリアの相談にいらっしゃいました。それが10年前で、以来のお付き合いとなります。

CEG渡辺・平野石徹白農業用水農業協同組合参事

藤原:
とても長いご関係ですね。先ほど一緒にいらっしゃったときもずっとお話されていたのですが、非常に仲が良い印象を受けました(笑)。
定期的に連絡をとられているのですか?

渡辺:
そうですね。そんなにしょっちゅう会っているわけではありませんが(笑)。
実際にお会いするのは久しぶりですが、平野さんがどういうご活躍をされているのかは常に伺っています。

藤原:
お二人とも今日は熱いトークが展開されると楽しみにしております。
このトークセッションでは「まちづくりイノベーターへのキャリア戦略」についてお話を伺いたいと思います。

今、実際にまちづくりに携わりたいと思っている方が増えてきている一方で、そのキャリアをどうやって作るのかという点については、あまり知られていないように思います。
これについてお話を伺えますでしょうか?

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#2 ビジネスパーソンがまちづくりイノベーターをめざす背景とは?

ビジネスパーソンがまちづくりイノベーターをめざす背景とは?

渡辺:
そうですね。東日本大震災以降、弊社にご相談にいらっしゃるビジネスパーソンの方々から、社会貢献や社会変革、あるいはまちづくりのようなテーマの仕事に関わりたいというご相談が増えています。
そのような皆さんの多くは、丸の内界隈の大企業にお勤めのいわゆるビジネスエリートのみなさんで、とても高い収入を得ていらっしゃいます。
一方、今やっている仕事が人生を懸けてやるほどの意味があるのかどうかについては、疑問を感じ、悩まれている方もいます。

3.11をきっかけに、人生はいつ終わってもおかしくないということや、人とつながることの大切さなどを感じられる方が増えたようです。もともと色々な美しい想いをお持ちだったと思いますが、それが表出してきたという印象を受けています。
ですが、高い収入を得て家族を養っている状況で、それを捨てていきなりNPOをゼロから立ち上げるのは、収入がゼロになってしまうかもしれないですので、とても怖いですよね。悩まれるのも自然なことだと思います。

CEG渡辺

弊社にご相談にいらっしゃった方のケースですが――新卒で有名なNPOに飛び込んでみると当初自分がイメージしていた仕事と違って、現場の雑務的なことをずっとやらされている。
自分が思い描いていたのは、社会を変革するための企画を考えることや事業をつくることだったのに、イメージと違ってしまった。
それで悩まれてご相談にいらっしゃるということがありました。

藤原:
やりたいことと現実のギャップに悩まれる方が多いということですね。

渡辺:
そうですね。一方で、同じようにNPOに関わる方でも、新卒でいきなりNPOに入るのではなくて、一度コンサルティングファームで経営の勉強や事業プロデュースの経験をした上で、それからNPOの世界に入られる方がいらっしゃいます。平野さんがまさにそうですね。
そうすると、NPOに入った後でも、即戦力の幹部として期待されて、そういう役割で働けて、非常に楽しく仕事をされています。
実は同じ夢を描いていても、すごく楽しくやっている人もいれば、ちょっとイメージと違うなと思っている人もいるということです。

キャリアの階段

今では、このように「キャリアの階段」をつくってから、NPOに入られる方が次々に登場しています。
平野さんも、経営コンサルティングファームのブーズ・アレン・ハミルトンに入社されて、その後今の活動を始めて非常に成功なさっています。
本日はそのご経験を含めてお話いただきたいと思います。

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#3 まちづくりイノベーターに求められるスキルとは?

まちづくりイノベーターに求められるスキルとは?

藤原:
それでは平野さん。ご自身のご経験を踏まえて、現在やっていらっしゃる小水力発電のプロデュースのお話をご紹介いただけますか?

平野:
改めて、自己紹介をしたいと思います。
私は大学で都市計画やまちづくりを専攻していました。それで、いずれまちづくりを地方でやっていきたいという想いを、大学を卒業するときから思っていました。
ところが、どこでやれば良いのかも分からないし、どうやってやれば良いかも決まらない状況でした。
それで、まずは就職しようと思いました。
自分の場合は将来やりたいまちづくりに役立ちそうな会社に行こうと思いまして、最初に入ったのは、商業施設をプロデュースする小さな会社でした。
どちらかというとクリエイティブな仕事で、広告も建築もやるデザイン会社のようなところに4年位勤めました。
仕事はとても面白かったのですが、それだけだと足りないという気がしました。
自分は何が足りなかったかというと、例えば、まちのことをやる上で、不動産や建築、デザインのことは分かるけど、もっと全体的なところ――経済がどう回っているのかということや、経営全般については全く考える機会がありませんでした。
そこで、経営コンサルティングのキャリアを積みたいと思い、渡辺さんのもとへ相談に行きました。
コンサルティングファームに入ることができて、その後、次のステップに進むことができました。

平野石徹白農業用水農業協同組合参事

私は、18歳で東京に出てきて、大学院を出て4年間、最初の会社にいて、次の経営コンサルの会社に3年いて、32歳で会社を辞めました。
岐阜市の出身なのですが、今は岐阜の山奥の郡上市石徹白という集落で、傍らではNPO法人地域再生機構という名前で自然エネルギーの導入支援の仕事をしています。
250人の集落なのですが、そこで全員で出資して水力発電を導入する仕事をしています。

藤原:
ありがとうございます。ご自身の経験をもとにお話を伺いましたが、実際にこれからまちづくりイノベーターになりたいと思っていらっしゃる皆様のために、まちづくりイノベーターに求められるスキル又は経験というのは具体的にどういったものがあるのか、平野さんに伺ってもよろしいですか?

平野:
これも自分の経験でしか話せませんが(笑)。私の周りにも全国各地に様々なまちづくりイノベーターがいらっしゃいます。
共通して言えることとしては、例えば、ある地域で何か取り組みをしようとすると、ステークホルダーがたくさんいるわけです。
恐らく、ステークホルダーの数とか種類は、企業で働いていたときよりも多様であると思います。
地元のおじさんもいるし、行政の人もいるし、企業の人もいるし、地元出身の人もいるし、外から通っている人もいるし、すごく多様な世界があります。
そうすると、その人たちがどういう想いを持っているか知り、その人たちを仲間に巻き込んでいくことが必要になります。

自分の場合は、経営コンサルティングファームにいた際、クライアント企業に行って課題を把握するために、クライアントの社内の様々な層の人にヒアリングをすることがありました。
その際には、それぞれの人たちがどう思っているのかを捉えていく「課題を感じる」ということは重要だと思いました。

あと、まちづくりは、色々な人の想いを束ねて引っ張っていく力が必要になります。
企業の場合は、上司の命令があれば部下は動くと思いますが、まちづくりの世界には利害関係がない人がたくさんいます。
地元のおじさんに命令をしても動くわけではないので(笑)、その人たちを巻き込む力や、その人たちの思いを束ねる「ファシリテーション能力」が必要になってくると思います。

さらに、どの仕事もゼロから1を生み出すという面があるので、「全体観をもって物事を捉えられること」が大切ですね。
私は元々建築を学んでいたのでその傾向が強いのですが、建築は正解がないのです。
受験勉強をしていると必ず正解がありますが、新しくつくり出していく部分も重要なスキルだと思います。

藤原:
まさに、ゼロから1を生み出すのがまちづくりイノベーターだということで、スキルのお話を伺いましたけど、平野さんのお話を受けた上で渡辺さんはいかがでしょうか?

まちてんトークセッション

渡辺:
ゼロから1をつくるというのは、まちづくりイノベーターの大変なところで、「起業」に非常に近い感覚だと思います。
かなり頑張らないと何かを生み出すことはできない(笑)。
当然、通常の企業以上に問題が山積みになっています。例えば、人が足りないけどどうにかしてやらなければいけないとか、資金をどうやって引っ張ってくれば良いのかとか、低予算で自分たちのNPOをどうやってPRしていくかだとか、まさに問題が山積みです。
そこで、第一に求められるのは「問題解決力」ですね。このあたりは通常の起業と同じようなことだと思います。

二つ目はまちづくりイノベーターに特徴的なところで、先ほど平野さんが仰られたように、「ファシリテーションする力」が必要になりますね。
通常の企業ではあり得ないような複雑な利害関係者がたくさんいます。一般の住民のみなさんもそうですし、自治体の方、協賛してくれる企業、その企業も大体一社ではなくて何社も巻き込まなければいけなかったりしますので、いろいろな利害関係者がいます。しかも、自分の会社の部下ではありませんので、指示命令で動くという関係でもない。
そういう人たちに対して、納得していただいて、熱をもっていただいて、協力していただく必要があるので、ファシリテーションしていく力というのがとても重要になってきます。

三つ目が、世間ではあまり語られていないと思いますが、「コンテンツを制作する力」。実はこれが結構重要です。
大企業の社長だったら、自分が考えているメッセージをスタッフの方たちが書き起こしてくれます。しかし、まちづくりイノベーターはこれを自分でやらなければいけない。
どういうコンセプトのNPOなのかというメッセージをつくる、組織内にコンテンツを残していって業務マニュアルにする、部下があげてきたコンテンツをチェックする。そういう力がないと組織化することが難しいのです。
意外と、コンテンツ制作能力の有無で、NPOのスタートアップがうまくいくかどうかの差がついてきます。

まちづくりイノベーターに求められるスキルとは?

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#4 まちづくりイノベーターになるためのキャリア戦略とは?

まちづくりイノベーターになるためのキャリア戦略とは?

藤原:
全部ひとりで1から100まで、色んなところに目を配って、社会的な価値をもって、地域の人たちの意見をつなげて、統括していく力が大切なのですね。
「問題解決力」、「ファシリテーション力」、「コンテンツ制作力」が不可欠だと渡辺さんからお話いただきましたが、どういう経験すれば、そういう人になっていけるのでしょうか?

渡辺:
ここがこのセッションの重要なところだと思います(笑)。
「要はやる気が重要だよね」とよく言われます。「やるか、やらないかだ」と。
確かに最終的にはそうなのですが、まちづくりイノベーターあるいは社会変革をリードされているみなさんの成功事例を見てみると、十分な経験やネットワークを持った状態で仕掛けているケースが多いのです。
先ほど出たような「キャリアの階段」のようなステップを経て、それからやっていくということが大切だと思います。

ではそのために、具体的にどういうようなところへ行けばいいのかという話ですが、一つは、まさに平野さんがいらっしゃったような経営コンサルティングの世界は非常に良いです。
先ほど挙がった3つの能力を身に着けるのにとても良い環境です。

まず、日々経営課題を解決する場ですので、一つ目の問題解決力が磨かれます。
2つ目のファシリテーション力ですが、経営コンサルの仕事は、クライアント企業に色々提案して、動いて頂かなければならない。
指示をして、クライアントに動いてもらう訳ではありません。クライアント企業の方に「なるほどね。確かにそういうふうにやったらうまくいくよね」と納得して動いて頂く必要があります。
相手の心を考え、価値観を理解した上でうまくリードしていかなければいけないので、ファシリテーション能力が身に付きます。

3つ目のコンテンツ制作力。
経営コンサルは、プレゼン資料や報告書というかたちで、クライアント企業の皆さんに動いていただくための資料を最終的に作成します。
しかもクライアント企業は大企業ですので、柔軟に動いてくれる方ばかりでもありません。
そういった人も含めて納得いただけるように、分かりやすく論理的な資料をちゃんと作らなければいけない。
こういうことを、先輩コンサルタントについて、一から叩き込まれていくという修業をします。

CEG渡辺

これらのスキルが身に付くということが経営コンサルの世界の良い点ですが、もう一つ良い点が、実は多くの方にその門戸が開かれているということです。
意外と思われるかもしれませんけど、平野さんがいらっしゃったブーズのような戦略系ファーム、あるいは、マッキンゼーやアクセンチュアなどでは、ポテンシャル採用をしているのです。
特別な経験がないと、絶対に採用しないよということではなく、問題解決能力やリーダーシップというベースの素養があれば、十分に入ることが可能な業界なのです。
例えば、システムエンジニアでも入れますし、営業の方でも良いですし、経営企画の方でも良いのですし、研究1本で民間企業では働いたことないという人でも可能だったりします。

藤原:
そういう方でコンサルティングファームに入られている方はいらっしゃるのですか?

渡辺:
いらっしゃいます。お医者さんもいます(笑)。色々な業界、色々な職種から入ることができます。さらに卒業してからのキャリアの幅も広い。
今回は、まちづくりイノベーターの話をしていますが、それに限らず、通常の起業をしている方もいらっしゃいますし、外資系企業のエグゼクティブになる方もいますし、投資ファンドにいく方もいますし、一般の事業会社にいく方もいます。

色々な業界から入れて、色々な業界に行けるので、ハブ空港になぞらえて、弊社では「ハブキャリア」と呼んでいます。
このようなキャリアパスが経営コンサルティングの世界にはあります。

また、あくまで経営コンサルはハブキャリアの一例です。
最近注目されているハブキャリアは、ネット系の業界です。インターネット系の業界も色々な職種の方が入ることができ、インターネットビジネスの事業経験を積むと、色々な業界に転身することが可能です。
そして、社会変革を起こす起業をする上でも、非常に良いキャリアだと思いますね。

ハブキャリア

藤原:
すごく色々なヒントが詰まっているお話を伺ったと思います。
平野さんからも、コンサルタントとしての経験が活かせているからこそ、今があるというお話を頂いていました。その経験を持ってして、今お仕事をしていて良かったなと思うことは多いですか?

平野:
自分の場合は最初がクリエイティブな仕事だったので、コンサルティング会社で務めていたことで役に立ったなと思うことは、すごくたくさんありますね。
まわりで活躍している人たちは色々なタイプの方がいますが、こういった業界に飛び込む前にどのような仕事をしていたかということが、その後その人がどういう活動していくかということにすごく直結している気がしています。

例えば、農業をやっている人が僕の地域にもいますが、農業をやっている人は製造業出身であったりすることが多いのです。
農業も製造業も、どうやって計画的に生産していくかという点が、とても大切な能力であったりするので、製造業と農業は近しい関係にあるように思います。
私のようにコンサルティングやクリエイティブな仕事やっていた人間は、あんまりたぶん農業に向かなくて、農業の手伝いとかすると怒られちゃったりするんですよ(一同笑)。

一方で、マーケティングの仕事や広告関係の仕事をしていた人は、情報発信やマーケティングをしていくということにはすごく向いています。
また、ITやSEの仕事をしていて、一旦地域起こし協力隊という形で色々な仕事をしたけれども、最終的にはシステムの技術を使って地域の仕事を作っていくということをやっている方もいらっしゃいます。

CEG渡辺

コンサルティング会社はすごくオールマイティな能力が要求され、身につけられるところなので、一つのキャリアとしてとても良いと思います。
一方で、皆さんがそれぞれお仕事をされている中で、その業界の中でやってこられた仕事が必ず何らかの形で強みとなっているところがあると思います。
あとはそこで足りないものを、次のキャリアでどう補うだとか、実際にまちづくりイノベーターの人たちがどのような活動をしているかという現場を見た上で、キャリアを考えることが大切だと思います。
すぐに飛び込もうと思って焦ると、あまりロクなことがないので(笑)、将来を見据えながら、キャリア戦略を考えるのが良いと思います。

藤原:
長期的なライフ・プランを立てるというのが大事なところですね。

平野:
中々計画通りにはいかないのですけど、「だけど、やっぱりこっちの方向だ」と諦めずに見続けていると、情報が入ってきますし、そっちの方向に近づいていくと思います。

藤原:
渡辺さん、いかがですか?

渡辺:
まさにその通りですね。社会変革とかNPOとかに限らないのですが、起業されている経営者の皆さんも、その方の過去のご経験を活かしながら事業をやって成功されているということが大半なのです。
地域創生の領域で大活躍されているある起業家の方がいらっしゃいます。
その方がはじめに立ち上げた事業は、今までのご経験と関係のないネット系の事業で、あまりうまくいきませんでした。二つ目の事業もそれほどうまくはいきませんでした。
その方は、前職時に日本の中小メーカーがどういったことに悩んでいるのか、その中小メーカーの優れた技術を誰が知っているのかを、仕事を通じて知っていました。
そこでその中小メーカーの優れた技術を活用して、地域創生する事業を三つ目に取り組み、立ち上げた瞬間に大ブレイクして、とても順調に成長しています。

実はこういった起業家の方は少なくありません。はじめは「こんなことをやったら当たるんじゃないか」とスタートしてみる。でも結局は、今まで自分が大切にしていたことと経営ノウハウをミックスして成功する。こういうパターンが多く見られます。

藤原:
染みついていることが必ずしも悪いということではなくて、活かしていくことができるということですね。

渡辺:
そうです。もともとその仕事をやっていたのは、その仕事のなんらかが好きだからです。そういうところを手放さずに、あとはそれに足りないものがあれば足して参入していくと良いです。

INDEX

#5 今後の展望

藤原

藤原:
ありがとうございます。
そろそろまとめに入っていきたいお時間になりました。
これからまちづくりに実際に関わっていきたいと思っていらっしゃる方が、今日もこの中にいらっしゃるかと思います。そのような方にメッセージをお一人ずついただきたいと思います。
また、今後どのような活動を展開していくのか、展望を併せてお聞かせ下さい。

平野:
地方でこういった地域づくりをすることは、とてもエキサイティングでやりがいがあって面白い仕事だと思います。
当然、東京でも色々な仕事があり、それもクリエイティブで面白い仕事がたくさんあるでしょう。
一方、地方にいくと、人材が少ないということもありますが、僕が住んでいる岐阜県郡上市でも、色々な人たちが外からやってきて新しい活動をしています。
しかも、新しい活動をやりにきた人たちが多く、みんなすごく魅力的な人たちです。
僕は地方から東京に出てきたときは、東京はクリエイティブで面白い人たちがいる面白いところだと思っていました。
しかし、地方に行ってみると、地に足がついた意義のある仕事に取り組み、面白いことをやっている人がたくさんいました。
是非、どんどんそういった世界へ皆さんに入ってきていただきたいと思います。
収入の面とか、家族を説得するとか色々難しい面はあると思いますが(笑)、とてもやりがいがある仕事だと思います。

私自身は、郡上市の石徹白というところにいますが、どんどん新しいことにチャレンジしたいという方を受け入れていきたいと思っていますし、それは私のいる石徹白集落だけではなくて、郡上市全体としてもそういった方を受け入れていこうということをやっています。

私は、実はもう一つ「HUB GUJO」という、郡上市全体の移住者の仲間たちと作っているNPOをやっています。
古い紡績工場を丸ごと借り受けて、コワーキングスペースにしたりだとか、サテライトオフィスやフリーのITの方の入っていただいて、郡上市でITビジネスをつくり出そうということもやっています。
郡上市内には、ソーシャルイノベータ―の方々がとても多いのです。
そのような方を私は受け入れていきたいと思っていますし、関心のある方は是非お越しいただければと思います。

藤原:
石徹白は良いところですか?

平野:
良いところですよ。水はきれいだし、空気もいいし、人も面白いです!

藤原:
地方に戻られて一番良かったと思われるのはどういうところですか?

平野石徹白農業用水農業協同組合参事

平野:
よく聞かれるのですが、東京にいたときとは、まったく別の人生を歩んでいる感じがします。
仕事が変わることで別の人生になったというここともありますが、住む場所が変わって、周りの人たちが変わって、全然違う世界が広がってすごく刺激的です。毎日退屈することのない世界が広がっていると思います。

藤原:
「刺激的」って、都会に出てくるときに使う言葉かなと思うんですけど、そうではないんですね。地方だからこそ広がっている新たな可能性が刺激的だということですね!

平野:
はい。また、SNSもありますし、世の中すごく便利になっているので、東京なのか地方なのかというのは肌感覚としてはそれほど関係ありません。
都会とすごく離れてしまうかというと決してそんなことはありません。より身近になっているし、よりチャレンジしやすくなっていると思いますね。

藤原:
 ありがとうございます。渡辺さんはいかがでしょうか?

渡辺:
弊社へキャリアの相談に来られる方は、将来は経営幹部になりたい、あるいは、社会的に意義のある事業を立ち上げたいというご要望を持っている方が、たくさんいらっしゃいます。

 皆さんが共通して悩まれているのは――人生は一回しかない。一回しかない人生なので意義があることに自分の人生を使っていきたい。使命へ捧げていきたい。しかし、一回しかないからこそ失敗はしたくない――ということです。
この2つの気持ちの狭間で葛藤を抱えていらっしゃる方が多いのです。
こういう気持ちは、正直誰でもありますよね。

それに対して、「兎に角やっちゃえ!」と言ってしまうのではなく、先ほどお話したキャリアの階段をはじめとする、「キャリア戦略をしっかり作りましょう」という話なのです。
ちゃんと経験を積んで、ちゃんと準備してからやれば、そんな大変じゃないのです。
一回しかない人生だからこそ、着実に準備してからチャレンジしていく。そのためのキャリア設計なのです。
ぜひ、ご自身の夢のためにしっかりとキャリア設計をして頂きたいと思います。
キャリア設計をするプロセスが楽しいです。
自分の夢を自分でプロデュースする感じですので、そこを楽しみながらやっていただきたいと思います。

CEG渡辺

今まで弊社では、キャリアコンサルティングを通じて、次世代リーダーの皆さん一人一人のキャリアの設計を支援してきました。
しかしそれだけでは、キャリア設計のノウハウが日本全体にはなかなか広まっていきません。
そこで、昨年は本を出版してキャリア設計のノウハウをお伝えし、今年は大学でキャリア関連の授業に登壇して学生の方にお伝えしてきました。
このような形で、広くお伝えしていく活動を今後は強化していきたいと思います。

藤原:
ちなみに、こういったイベントに参加されるのは、渡辺さんは初めてだという話なのですが、参加されてみていかがでしたか?

渡辺:
我々も社会起業家の方とたくさん接点がありましたが、「まちづくり」という切り口で特化してたくさんの方にお会いさせていただくのは初めてでした。
私も昨日から色々なカンファレンスを見させていただきましたが、皆さんが創意工夫をしながら様々な課題に向き合い、非常に面白い取り組みをされていらっしゃることが分かり、とても楽しかったです。

また面白いのは、「まちてん」に来ると、以前のご相談者の方が結構来てらっしゃるのです。
志を持たれた皆さんが色々な世界に行かれた後、また今こういった世界に戻ってきていらっしゃるというのが、とても嬉しいですね!

藤原:
ありがとうございます。まだまだお二人に話を聞きたい方、沢山いらっしゃると思います。
具体的なキャリアプランについてなど実際にお聞きになりたい方は、ぜひこの後直接お話になってみてください。
以上を持ちまして、トークセッション、「まちづくりイノベーターへのキャリア戦略」を終了とさせていただきます。

渡辺 秀和|Hidekazu Watanabe【コンコードエグゼクティブグループ 代表】渡辺 秀和|Hidekazu Watanabe【コンコードエグゼクティブグループ 代表】

一橋大学商学部卒業。三和総合研究所 戦略コンサルティング部門を経て、2008年、コンコードエグゼクティブグループを設立。日本ヘッドハンター大賞MVP受賞。東京大学「未来をつくるキャリアの授業」コースディレクター。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)など。

平野 彰秀【石徹白農業用水農業協同組合参事】平野 彰秀【石徹白農業用水農業協同組合参事】

岐阜市出身。東京大学工学部都市工学科卒、同大学院環境学修士。 北山創造研究所、ブーズ・アレン・ハミルトンを経て、2008年春、岐阜へUターン。 2011年秋、人口約250人の集落・岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)に移住。 NPO法人地域再生機構副理事長、石徹白地区地域づくり協議会事務局。同年、人間力大賞(公益社団法人 日本青年会議所)受賞。

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