経営共創基盤 インタビュー vol,1 村岡パートナー
採用責任者の村岡パートナーから、経営共創基盤の特徴・採用基準・今後の方向性について伺いました。
従来のファームとの違いや、中長期的にハンズオンの経営支援を可能にしている理由、また、金融業界ご出身の村岡様が経営共創基盤に転職された理由についても、じっくりとお聞きしました。
Index
#1 IGPIの比類なき特徴
岡部:
御社の特徴、特に戦略ファームや投資銀行、ファンドとの違いはどのあたりになるでしょうか。
村岡:
特徴としては三つあります。
まず一つはスキル面において、総合格闘技が求められるファームであるということです。
投資銀行のM&Aに求められるスキルもよく総合格闘技に例えられますが、それよりももっと求められる技の幅が広く、戦略だけでなく組織論も必要ですし、もちろんファイナンスも、会計、税務、法務もスキルとして求められます。
そして、こういったハードスキルを活用して計画を作るだけではなく、お客様を組織として動かしていく力も求められます。
お客様や投資先の組織に適切な変化をもたらすためにはどうしたらよいか、を考えて自ら動く力です。
こうなると必要なスキルセットは限りなく経営者に近くなってきます。
実際にプロジェクトの中で我々が経営者の役を我々が代わってやってしまうことも数多くあるのです。
経営者のマインドとスキルを持っていないと通用しない。そんなファームだというのがまず一つの特徴ですね。
二つ目の特徴は、中長期視点での実行支援のスタイルです。
実行、これはよくハンズオンと言われますが、我々のハンズオンのスタイルは、例えば当社メンバーを経営者として転籍させて数年間という時間軸で転籍先企業の企業価値を上げることにコミットするケースや、場合によっては出資して金銭的なリスクを共有する形でやらせていただくことも多いです。
なぜIGPIがこうしたハンズオンができるかというと、我々が会社として十分な財務基盤、資本金をしっかり持っているからですね。
短期での利ざやを求めずともよい組織の財務基盤があることが、こうした中長期的な視点で深く踏み込んでいくことを可能としています。
三つ目の大きな特徴は、私たちは日本の会社、日の丸の会社だということです。
七年前に設立して以来、日本の多数の事業会社、金融機関、更には政府系機関からも、出資や協働その他いろいろな形での支援を頂戴しておりますが、それだけに「外資系にはなかなか頼みにくいような問題が発生した際、頼りにできるファーム」として相当に認知されているのではないかと思います。
本当にありがたいことに、お客様からは色々なご要望を頂けているので、とにかく忙しくやらせてもらえています。
これから新しく入ってきていただく方にとっても多くのオポチュニティはありますし、新たな成長に繋がっていける場を提供できることについては、すごく自信がありますね。
大野:
先ほど、安岡樣にもお伺いしたのですが、前職で投資銀行といった高給の職場からIGPIに多少の待遇ダウンを気にせず移られる方が多く感じます。皆さん、どのように納得してジョインされているのでしょうか。
村岡:
皆納得していないのではないですか(笑)。
いや、分かりませんけども、いつかは逆転する、いつかは逆転すると言いながらまだ逆転せずに、みんながっかりしているかもしれませんが。私も逆転してませんから(笑)。
岡部:
貴社で働くということは、お金以外のところにも価値があるということでしょうね。
そういえば、村岡さんは年収を6分の1に落として投資銀行から移られたと以前伺いましたが。
村岡:
いや、それはIGPIに入社したときではなく、別の企業に入ったときのことですね(笑)。
そこから比べると、今は相当戻ってきていますけどね、まだ届いてはいませんが(笑)。
経験とお金については、少なくとも20代30代の人に言いたいのは、その世代では経験の方がお金よりも明らかに重要だということです。
何故ならば若い時に肥やしになる経験をすれば、将来望めばお金はついてきます。
私たちの会社は決してお金が安いわけではないですけど、短期的な金銭報酬よりも人間の成長に繋がる経験が出来る機会を提供できるかどうかが、ある意味一番の会社の価値だと思っています。
それを求めてきてもらえるかどうか、ということだと思いますね。良い経験ができれば間違いなく人間としても成長しますから。
そうするとまたどこかの段階で当社を卒業していくときに、給料が6倍になるかもしれません(笑)。
あるいは6倍にとどまらず、望めば10倍、100倍になるかもしれません。
普通はそんなにいらないと思いますが。それよりも長い人生において、長く働けるような人材になっていけるかどうかも重要です。
50代60代70代になっても社会から求められる、そういう人間になれるかどうか。
そのためには20代30代で、どれだけ良い経験、苦労が出来るかどうか、ということがすごく重要じゃないでしょうか。
一生でならしてみたら、金銭的側面からも十分見合うものがあると私は思います。
#2 「クライアント・社会・自分」の3つが満たされる仕事
大野:
村岡さんご自身がIGPIのキャリアを選択されたのは、どのようなお考えがあったのでしょうか。
村岡:
お客様から評価をされる仕事をしたいと思ったことが一番の理由です。
産業再生機構の時にすごく感じたのは、お客様のためになり、それから社会のためにもなり、自分達もある一定の報酬がもらえるという、三角形の関係がしっかり出来ている時は、いい仕事ができている実感がありました。こういう仕事は長続きするのですよね。
そのような三角形が出来ているとお客様の前で自分自身が卑屈になる必要が無いので、精神的にもすごく安定しながら仕事ができる。
外資系にいた頃ですが、高いお金を一時的にもらえるけれども、お客様に対して仕事を貰いにお願いしに行くような時もあって、これだとやはり卑屈になってしまい精神的に良くないし、結果的にこういうスタンスでは良い仕事は長続きしない。
そうではなくて、お客様に価値になり、社会的にも認められ、結果的に一定の報酬をもらえるという仕事の場合は、後から見るとお客様との関係も長続きする。
そういう形で仕事に取り組めるような会社を作りたかった。
そのためには、会社の仕組みを作るときに良い仕組みを作らないと成り立たない。
例えば、仮に会社が上場すると四半期決算に縛られるし、あるいは会社自身が資金的な余裕がないと毎期毎期の予算に縛られる。
私たちはそういう影響が極力ないような会社の仕組みを設立の時に作れたので、お客様に対して自然体で仕事ができる。
お客様に仕事ください!とか媚びることは一度もないですよ。
自然体で「必要な時には是非声を掛けてください」というスタンスでお付き合いができる。
これが良い仕事に一番つながっているのだと思います。
#3 求めている人物像
岡部:
貴社で求められるスキルはとても幅広いとのことですが、貴社で活躍できる方の素質としては、どのようなものであるとお考えですか?
村岡:
まず土台として、興味の幅を広く持つことができて、同時に深く掘れる人。両方がなければいけないと思います。
当社を病院に例えれば総合病院ですので、患者さんの病の本質的な原因がどこにあるのかを解き明かさなければいけない。
表面上咳をしているからといって、風邪とは限らないじゃないですか。もしかしたら早期の癌かもしれないし、あるいは全く別のこと、例えば家族やお金で悩んでいることが原因だったりする。
そこをちゃんとお客様とのコミュニケーションの中で理解をしてあげられる力が必要です。
そうすると、知識の範囲は幅広くなければいけないし、同時にある程度の深さも持っていなければいけない。
もちろん、世の中には一つの分野に徹底してずっと深くやり続けられる人、いわゆる職人さんやアーティストみたいな方も必要ですが、当社ではそれだけではフィットしないかもしれません。
それに加えて、お客様の本質的な悩みを引き出してあげられる人。
結局のところ会社は人の集団なので、一人一人に色々な悩みがあり、その人の悩みが組織、集団の悩みになっているわけで、一人一人の悩みを聞きながら組織の真の課題は何なのだろうか?というのを引き出さないといけない。
このような力をどうやって身に着けるのか・・。
正直採用の時点では、そのような素質があるかないかをどうやって判断するのか、っていったら分からないです(笑)。
分からないですけれども、まず第一歩は、人間に興味があるかという点だと思います。
目の前の人がどんな悩みを持っているのか?何に関心をもっているのか?といったこと考える人でないと難しいと思います。
そして最後は、組織をしっかり動かしていく人ですね。
目の前の人やその集団の人たちを何らかの形で導いていかないといけないという時に、「どういう風にひっぱってあげたらこの人たちは動くだろうか?」を考え、その上でトライしてみること。
この辺もすごく重要だと思います。
いくら良い提案書を作っても結局それだけでは人って動かないじゃないですか。
どうやったら動いてくれるのだろうか、もしかしたら集団のリーダーだけを口説けば動く組織なのか、それとも空気で決まっている集団なのか。ケースバイケースですよね。
状況を察知して、適切な形でリーダーシップを上手く発揮する、それは当社ではすごく重要だと思いますね。
大野:
人に対する興味というところは選考のプロセスでもやはり気にされてらっしゃるのですか?
村岡:
もちろんそうです。ただその判断は難しいですね。
三十分、一時間お話をしたからと言って、そういう部分がどこまで本当にわかるかというと・・・、そこは単純な想定問答で見定めることができるものじゃないですから。
どうやったらインタビューの中で見極められるのか、あるいはそういう人達にもっと多くIGPIを受けていただくためには我々としてどうしたらよいのか、ということにはすごく興味があるところですね。
#4 今後の課題と方向性
岡部:
貴社の今後の方向性について、是非伺わせてください。
村岡:
三つぐらい大きな方向性があって、一つは投資案件を数多く増やしていくということですね。
投資を伴うようなプロジェクトの方が難易度は高いですが、その分メンバーの成長にも繋がりますので、その点も含めてより積極的にやっていきたい。
それから二つ目としては、やはりこの国の仕組みを変えるような、いわゆる国家的なプロジェクト、あるいは国家の政策に関わるようなプロジェクトについて、今まで以上に取り組んでいきたいですね。
それは私たちのファームのレゾンデートルになっているので。
三つ目としてはグローバル展開です。
現在はシンガポール、上海に拠点を持って、ローカルのプロスタッフの採用も始まっていますから、これをもっともっと加速していきたい。
少なくとも私たちがマザーマーケットと考えている中国を含めたアジアにおいては、日本と同じようなサービスをお客様にできるようにしたい。
ということは、先ほどの総合格闘技をアジアでもできるようにしなければいけないですね。
そうすると、アジアでも組織の長ができる、あるいは経営ができるという人やチームを、数多く社内に育成しなければならない。
それは日本人でなくても構わないし、そもそも日本人に限定するということはおかしくなってきますよね。
一方、中国やインドなどアジアの方々に負けないような逞しい日本人のプロスタッフもどんどん増やしていきたい。
難しいですが、重要なテーマだと思います。
⇒経営共創基盤&コンコード スペシャルインタビュー【編集後記】
⇒IGPI&コンコード スペシャルインタビュー vol,2 マネジャー 玉木氏、安岡氏-1
三和銀行にてプロジェクトファイナンス、M&A業務に従事。モルガンスタンレー証券での投資銀行業務を経て、産業再生機構に参画。三井鉱山・ミサワホーム・ミヤノ・ダイエー等の案件を統括。金融庁専門調査官等を経てIGPIを設立し現在に至る。IGPIでは事業再生の他、中国・アジア諸国でのM&Aや成長戦略立案プロジェクトを多数統括。IGPI上海董事長、金融庁参与、クールジャパン機構取締役。東京大学農学部卒、UCLA経営学修士(MBA)