【Bain & Company インタビュー】全ては「クライアントのベストな結果」のために。ベイン・アンド・カンパニーが最も重視する思考と行動の原点とは
世界有数の戦略系コンサルティングファームとして名を馳せる「ベイン・アンド・カンパニー」。日本を代表する大企業の数々が、激動の時代を乗り越えるためのパートナーとして同社を選んでおり、その存在感は一層増しています。
今回はパートナーの大原 崇氏とコンサルタントの能上 香里氏にベイン・アンド・カンパニーが目指す未来とコンサルティングスタイル、そしてベイン東京オフィスのカルチャーや求める人材像についてお話を伺いました。
※写真撮影時以外でのマスク着用を含め、十分な感染対策の上でインタビューを実施しております。
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Index
#1 5年前から社員数は約2倍に。クライアントの幅広い課題に様々な角度から支援できる体制
CEG 朏世界でもトップクラスのコンサルティングファームとして、素晴らしい実績がある一方で、少数精鋭な組織体制ゆえに、ベイン・アンド・カンパニーという名前しか知らない、どんなコンサルティングファームなのだろうという方は意外と多いかと思います。
今回は、御社ならではの特徴や、人材育成に対する姿勢、求めている人材像などを伺いたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。
ベイン・アンド・カンパニー 能上 香里様(以下、能上)入社5年目のコンサルタントの能上 香里(のがみ かおり)です。ベインでは主に製造業の企業を中心に、新規事業の立ち上げや成長戦略支援に携わっています。新卒時はウェブ会社に勤務していたのですが、後に知り合いと起業しました。そこから、戦略についてもっと極めたいと思い、ベインに入社し今に至ります。
CEG 朏能上さんは起業の経験をお持ちなのですね。大原さんも自己紹介をお願いできますか。
ベイン・アンド・カンパニー 大原 崇様(以下、大原)パートナーの大原 崇です。8年前にマネジャーとしてベインに入社し、2年前にパートナーになりました。現在はベインの人材育成も担当しています。
私も能上と同じくベインは3社目で、新卒時には人材派遣会社のパソナに入社しました。パソナでは4年間、営業、そしてIRや企画などの職務を経験しました。
企業の経営やコンサルティング業務に興味を持ち、欧州系のコンサルティングファームである“コーポレート・バリュー・アソシエイツ”に入社しました。アソシエイトで入社して、在籍6年間でマネジャーになりましたが「より結果にこだわりたい」「より成長できる大舞台に挑戦したい」という思いが強まり、ベインへ転職した次第です。
ですので、コンサル業界はトータルで15年目ですね。一貫して製造業のお客様を中心にご支援しています。プロジェクトの内容はトランスフォーメーション(全社変革)が中心で、近年はその一環としてM&Aにも注力しています。プロジェクトは短くても半年、長いと数年にわたってクライアント企業に伴走しながら、会社の在り方をより良い方向に変える取り組みをしてきました。
Bain & Company パートナー 大原 崇氏
CEG 朏大原さんは、人材紹介会社からの転身だったのですね。お2人のご経歴を伺うと、多様なバックボーンの方が働いていらっしゃることがわかりますね。
Bain 大原東京オフィスだけでなく、グローバルも含めていろいろな経験、専門性を持つ人材がメンバーにいますよ。良いチームにはダイバーシティは欠かせないと考えています。
CEG 朏大原さんはベイン8年目ということで、ご入社されてから現在まで、ベイン東京オフィスが大きく変わった時期に在籍されていると思うのですが、一番の変化はどこでしょう。
Bain 大原規模が大きくなったことでしょうか。私が入社した頃のベインはマーケットでのイメージも今よりもっと「少数精鋭」で、どこか「秘密のベールに包まれた会社」というイメージがあったと聞いています(笑)。何をしているのか、外からは分かりにくかったかもしれませんね。
その時から比べると現在は社員数も2倍以上に増え、組織化されてきている感覚です。それに伴ってクライアントの案件規模も拡大しています。伴走する期間も長いものが増え、アサインされるチームメンバーの数も増えました。より幅広い分野をカバーできるようになっているので、仕掛けるインパクトも大きくなっていますね。
同じクライアントでも、長期にわたって複数のプロジェクトで支援できるようになっています。一つの企業に対して、あるときは国内事業の収益改善、あるときは非コア事業のマーケティング戦略、あるときはコア事業のデジタルチャネルの成長戦略など、幅広く、深度もあるご支援をすることが増えてきました。このような長期にわたり様々な角度から支援し続ける案件は私が入社した頃は少なかったように思います。多岐にわたるプロジェクトに触れられる機会は多くなりましたね。
#2 「True North(真北)」をめざす姿勢が共有されているから、安心して提言できる
CEG 朏私たち(人材をご紹介する側)からも御社の勢いは目を見張るものがあります。急激に成長しているということはつまり、クライアントから大きな支持を得られているということですよね。今回はその理由を少しずつ紐解いていきたいと思います。まずは、御社の理念や文化などを教えてください。
Bain 大原私たちの最大の特徴は「徹底した結果主義」で企業価値を最大化させる、ということです。クライアントから我々にお支払い頂くフィーの10-20倍の結果を出すことを一つの規律としています。クライアントの企業価値、上場企業の場合は株価は重視している評価指標の一つであり、このようなこだわりは我々だからこそできることだと自負しています。
この「徹底した結果主義」を実現するためのファクターは3つあって「True North」「フルポテンシャル」「コラボレーション」です。この3つはベインを語るときに外せないキーワードです。
CEG 朏1つ目の「True North」は会社のロゴにもなっているほどベインの真髄とも言うべき指針ですよね。
コンコード ディレクター朏 徹
Bain 大原そうですね。「True North」はベインでは最も重要なキーワードで、「常にクライアント、社員、コミュニティに対して正しいことを行う」という意味です。
豆知識のようですけれども、方位磁石が示す「北」は「True North(真北)」とは少しずれているんですよ。クライアントが北だと思っている方向は、真の進むべき方向ではないかもしれない、というある種、戒めのようなものです。一般的に正しいと思われていることや、クライアントが期待していることが、必ずしもクライアントにとってベストな解だとは限らない。そんなときに、忖度や遠慮などせずに伝える姿勢を我々は常に意識しています。
クライントが期待している解決方法が「True North」ではないと判断した時には、隠さず臆さず、お伝えします。クライアントにとっては耳が痛い内容であっても、最終的には「言ってもらって助かった」と評価してもらうことが多いですよ。
CEG 朏本気で自社を変革したいと考えている企業にとっては、自分たちに迎合することなく提言してくれる御社の姿勢は貴重なのでしょうね。
2番目の「フルポテンシャル」とはどういうことでしょうか。
Bain 大原目の前にある問題解決にとどまらず、クライアント企業が持つ本来のポテンシャルを全て発揮してもらうための方法を探すという意味です。
通常、クライアントとは契約時にプロジェクトのスコープを決めます。例えば、ポートフォリオマネジメントなら事業の仕分けを実施したり、顧客戦略であれば注力すべき大事なセグメントを特定してマーケティング・営業施策を考えたりします。
その仕事をしっかりとやりきることに加えて、私たちはクライアント企業全体のフルポテンシャルを引き出すための施策を考えていきます。クライアントが業界のリーダーになるためにはどうしたらいいのか。そのための優先順位は依頼されている内容で問題ないのか。スコープを超えて、企業全体としてどうすべきか、という議論をクライアント企業の経営者にぶつけるのです。
CEG 朏なるほど。目の前の課題解決だけでなく、未来に向けて本来の力を発揮させるというポジティブな関わりが印象的です。信頼構築も欠かせないと思いますが、そのための「コラボレーション」ということでしょうか。
Bain 大原その通りです。この3つ目の「コラボレーション」は協働体制ということです。これが実はプロジェクトの成否を握る、一番重要項目かもしれません。「True North」と「フルポテンシャル」だけだと、直言ばかりで、頼まれてもいないのにフルポテンシャル施策を提言してくる、ややこしいコンサルになってしまいますからね(笑)。せっかくクライアントのためにと考えたプランも、このコラボレーションなしには必要とされない提言になり、実行してもらえないものになってしまいます。クライアントの経営者をはじめ、プロジェクトに入ってもらう社員の方々から、同じ方向をめざす仲間と認めてもらえるよう、日々心がけて接しています。
#3 クライアントに輝いてもらうために、上下関係なしに提言しあう
CEG 竹端「True North」「フルポテンシャル」「コラボレーション」の3つがあってこそ、圧倒的な結果が出せる、というわけですね。実際に仕事の中で実感するときはどんな時なのでしょう。
Bain 能上「True North」の姿勢は、日々感じています。クライアントに提言する際もそうですし、ベインのチーム内でも同じです。パートナーやマネジャーと意見が違っても、クライアントにとって「True North」だと思うことがあれば、誰もが臆せず提言しあっている環境があると思います。
Bain & Company コンサルタント 能上 香里氏
Bain 大原そうですね。チーム内にあるのは上下関係ではなく、役割分担です。私はパートナーという立場からクライアントの未来を見て、ゴールへの最短距離を考え、経営幹部に提言する。
一方、能上の場合は、現場に入って現場の目線からゴールに向かうわけです。
能上と同じチームにいるときは、私の提言内容や進め方について、能上から「それでは、現場がついてきません」とよく言われましたよ(笑)。
CEG 竹端能上さんのようにクライアントの現場サイドのニーズや想いに寄り添うメンバーがいるからこそ「コラボレーション」できるのですね。
Bain 能上方向性や、ゴールを決めるためにはトップの意思決定が必要ですが、実行するのは現場の方々なので、会社の「フルポテンシャル」を発揮できるように、現場の方々に寄り添うことが大事なのではと思っています。現場の幅広い階層の社員から情報を吸い上げて提言する立場にいることが多いので、その立場からクライアント企業のフルポテンシャルを引き出すためにできることは何だろうと意識して動くように心がけています。
Bain 大原そのおかげで、私の現場の情報がアップデートされますし、クライアントの経営層も現場の本音を踏まえて決定することができる。能上は、「True North」を本当によく体現してくれていますね。
Bain 能上大原も私も、役割や立ち位置は違っても、クライアントのことを考えているのは同じだという「True North」の思考を全社員で共有できているから、安心して上司にも提言できるのかなと思います。
Bain 大原我々の中で「コラボレーション」というのは、どのような立場であってもきちんと意見交換ができる文化を作ることでもあります。チーム内でもフラットな意見交換は大切にしています。
CEG 竹端ベインの社員ひとり一人が結果主義を体現することで、お客様にもそれが伝播していきそうです。
Bain 大原プロジェクト期間中は、意識してクライアント企業の階層間の意見交換の場を作るようにしています。
例えば、プロジェクトでクライアントと意思決定をする場をセットする場合、一般的には大広間でクライアント企業の取締役に対し、我々のようなコンサルタントがかっこよくプレゼンをやる……というのが多くの方のイメージかと思います。
しかし、それはベストなやり方ではないと思っています。我々がセットする意思決定の場は、プロジェクトに入ってもらうクライアント企業の中堅社員の方々にプレゼンをしてもらいます。そうすることで、中堅社員の想いが入ったプロジェクトの提案になり、経営陣にとって現場の想いを感じる機会となります。
また、準備の過程において、プレゼンをする中堅社員は「経営陣は何を考えて、どこを判断基準にしているのか」と想像する時間ができます。これが次世代の経営幹部になるためのトレーニングにもなるのです。我々がセットするミーティングや提案の場は、だれが発表するのかなども含め、クライアント企業の組織作りの側面を意識します。
CEG 竹端まさにそのプロジェクトの効果ということに加えて、クライアント企業のフルポテンシャルにもつながりますね。
Bain 大原本気でクライアント企業のことを考えていると伝わるからか、クライアント企業の方とは戦友のような関係性になりますね。企業を超えて、個人としての信頼関係ができます。それをやりがいだと感じる社員がベインには多いですよ。
コンコード エグゼクティブコンサルタント竹端 直弥
Bain 能上確かにそうですね。上司から指示されていないのに、現場で社員の方と、1on1の面談みたいなものをしたりもします。どの立場でもクライアントとのコラボレーションは大切だと思っているからだと思います。
私自身も現場の方々が自分たちでも言語化できていない、現場の不安、不満、不足をいかに引き出すかは意識しています。プロジェクトの最後にお客さまが納得感をもって進める、という成功の形で終わるための調整役として動いている感じです。
CEG 竹端ベインのコンサルタントが入ることで、クライアント企業の階層間の意見の違いが明らかになり、それを解消して血行を良くしている、そんな印象を受けます。
Bain 能上経営者だけでなく、社員の方々も本当に深く現場の業務やビジネスについて、様々なことを考えられています。でも、私が現場に入って時々感じるのは、それを上手く整理できないこともあったりする、ということです。言語化できていないけれど、なんとなく抱いている違和感がある、というような状態です。
そういう時に1on1など実施して、ゆっくり時間をとり「ひょっとして懸念されているのは、こういうことではないですか」と私の仮説を伝えていきつつ、「今の優先順位は何ですか?」「4つの選択肢が考えられますが、どうでしょうか?」とやり取りを繰り返していると、社員の方が「ああ、そうか。それが原因で進めなかったのだ」と気づかれる瞬間があります。
言語化できると解決していくことができますし、腑に落ちます。丁寧にコミュニケーションをして、納得してもらうことで、社員の方々のプロジェクトへの関わり方が変わってきます。1on1の後に現場の方が主導してプロジェクトを前進させていかれる姿を見た時は本当にとても嬉しいです。
CEG 朏クライアント企業にベインの文化や、やり方が根付いていくのですね。
Bain 能上私たちのご支援の期間が終わってから連絡を取った際などに「教えてもらった方法で今も仕事をしている」とか「プロジェクトを私たちで今もブラッシュアップしながら続けている」などと言って頂けることが、ある意味ゴールで、そこを追求していきたいと思っています。プロジェクト前と後で、仕事の進め方や考え方が変わったと言ってもらえると、本当に必要なサポートができたんだと、やってよかったなと、心から嬉しく思います。
#4 ベイン流・プロジェクトの進め方は「細かく分けてカスタマイズする」
CEG 朏いま、どのような企業様からどんなご支援の依頼が多いのでしょうか。
Bain 大原私たち東京オフィスのメインクライアントはいわゆる日系大企業ですね。多種多様な業種のお客様たちからご依頼をいただいています。企業によって課題は様々あるのですが、一部の例外を除き、共通して悩んでいらっしゃることを集約すると3点になります。
1点目は国内市場で頭打ち感があり、伸び悩んでいる。もしくは、ある程度伸びているのだけれども競争が激しい、という国内ビジネスの問題です。
2点目は、1点目に続く課題で、国内市場が伸びないためにグローバル市場に進出をされる場合が多いのですが、海外では国内と同じ戦略では勝てません。まったく戦い方が違うために、海外事業もうまくいかず、成長のエンジンが止まってしまうという、グローバル展開の問題です。
3点目に、上記のような苦境をブレイクスルーするために、イノベーションを求めて、大きな変革、例えばDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとする企業が多いのですが、それも経験も知見もないために難しいという壁に当たることが多いですね。
どれか一つで悩んでいるわけではなく、いわゆる三重苦のような状態になっていることが多い。業界や、企業によってこの3点の課題の中で、どの課題にスポットライトが当たっているかというだけで、すべからくクライアントの皆さんはこの3点について悩んでいる印象です。
CEG 朏既存ビジネスの戦い方を変化していかなければ、利益が伸びないということですか。
Bain 大原そうですね、利益成長率が鈍化しているというところが根本的な問題になっているでしょうね。利益成長率が鈍化すると企業価値を示すマルチプルの数値も上がりにくくなり株主の視点から見ても、本来企業の成長を実現すべき経営陣への信頼が損なわれることになってしまいます。
CEG 朏御社はそこに、どのようにコンサルティングしていくのでしょう。
Bain 大原フルセットでやる場合は、まずは足元にある既存のコア事業の収益性・競争力をきっちりあげることを主軸に置き、その延長線上でコスト削減プログラムを走らせることが多いです。
そのうえで、既存のコア事業だけでは成長余地が限定的な場合は、既存事業を超えるような新しい柱となる事業を作っていきます。我々の言葉では、「エンジン2」と呼んでおり、これが本来の成長戦略だと考えています。飛行機は第1エンジン、第2エンジンという2つのエンジンが搭載されていて、どちらかだけではフラフラしてしまうのと同じですね。
CEG 朏新規事業の立ち上げにあたり、M&A案件も増えていますか。
Bain 大原非常に増えています。M&Aをする理由は、先ほど申し上げた3つの課題の中のどれかに紐づいていることが多いですね。国内の事業統合や業界再編のような意味合いもあれば、海外展開のためにM&Aをすることもありますし、事業ポートフォリオ変革や、ビジネスモデルのイノベーションのために、デジタル関係の新しい会社の買収などでもご支援しています。
CEG 朏日本の大企業が抱える課題を深部まで考え抜き、本当に幅広いソリューションをご提案しているのですね。
Bain 大原重要なポイントは個別のソリューション視点ではなく、フルポテンシャル視点でやっているということです。当座の救急処置的な対応をやりつつも、将来を見据えた提言をして、プログラムを一緒に作っていくことに重きを置いています。
CEG 朏長期にわたるサポートになりそうですね。
Bain 大原そうですね、結果的に2,3年伴走しながら会社の変革に携わるということになることが多いですが、このような長期のご支援の場合、我々はコンサルティングメニューを既成のパッケージにしていないので「直近はこれ、次はデジタルマーケティングを3か月、この内容でやります」などということはしません。
プロジェクト立ち上げ期に青写真は作りますが、3カ月から半年を目安に、その青写真に修正やリニューアルを都度加えていきます。足元で結果をしっかり出したうえで、クライアントと相談しながら、しかるべき次の手を打つ。
「フルポテンシャル」という思考に立脚した際に、やらねばならないことは何かというところから始め、それに必要なコンサルティングの内容を考えていきます。クライアント企業の状況や、マーケット環境、ニーズの変化に合わせていくので、支援方法はクライアント企業によって千差万別で、クライアントと一緒に作っていきます。
CEG 朏 多岐にわたる専門性を持った人材が必要ですね。
Bain 大原そうですね。ですので、東京だけでなく、グローバルで多様な専門性をもつ人材の採用に力を入れています。
もちろん社外の専門家の力を借りることもあり、社内のコンサルタントが自分の専門性を活かして、コラボレーションしてその都度ベストなソリューションを提供しています。
戦略系のコンサルティングファームというと、MBAホルダーのように経営の専門家が多い印象かもしれませんが、専門性のある方に幅広くジョイン頂いています。
CEG 竹端 最近ではどのような専門性を持った方が求められているのですか。
Bain 大原最近では、デジタルの専門知識が必要になってきており、高度な定量分析をするアドバンスドアナリティクスや、プロダクトデザイナー、デジタルマーケターなどの専門家が多く在籍しています。
他にも、イノベーション案件に対応可能な、スタートアップ経験者やベンチャーキャピタルに勤務していた人なども積極的に採用しています。
CEG 竹端なるほど。能上さんもそのお一人だったのですね。
Bain 大原そうです。能上のように起業経験があると、イノベーション案件にアサインした時に、クライアントと近い目線で話すことができますからね。様々なバックボーンを持った人が入社してくれることが、結果としてベインの提供できるソリューションを幅広く、強固なものにしていると思います。
#5 仲間の成長を気にかけ、喜んで貢献し、助けあう
CEG 朏ベインといえば、人材育成に力を入れている印象です。
Bain 大原おっしゃる通り、ベインは互いに助け合い、教え合うカルチャーが強い組織です。社内で助けを求めると、依頼したことを上回るアドバイスやフィードバックをくれる文化がもともとありました。
さらに、それを制度としても充実させ、評価することで、さらに活発に人材育成にコミットできる仕組みも作っています。
CEG 朏中途採用の方が入社された後の教育やサポート体制など具体的に教えていただけますか。
Bain 大原まず、ベイン全体の仕組みとしてですが、入社するとPD(プロフェショナル・デベロップメントアドバイザー)と呼んでいるメンターが個人につきます。メンターはプロジェクトの枠を越えてその人の成長をサポートする存在です。色々なプロジェクトの評価を取りまとめ、半期に1度統合したレビューをしてくれます。
各プロジェクト内には上司という立場でSV(スーパーバイザー)がおり、日常的にアドバイスやフィードバック、コーチングを実施しています。
さらに、アソシエイトやシニアアソシエイトなど、コンサルタントのクラスごとに求めているスキルも違うため、適切なトレーニングやボンディング(絆の醸成)の機会を提供するために、各クラス別にリーダー(クラスキャプテン)がアサインされています。クラスキャプテンには、マネジャー以上のシニアコンサルタントがついています。
その他にも、スタッフィングチームと呼ばれる専任のスタッフがおり、どのプロジェクトにアサインするかを決定するサポートをします。プロジェクトのアサイン先はその人のキャリア形成においてとても重要ですので、一人ひとりの目標と合致できるようにしているのです。
これらのフォーマルなメンター以外にも、個人的に相性がよかったマネジャーやパートナーとは、インフォーマルな関係でアドバイスを求めることもできます。
とにかく、頼れる人が周りにたくさんいる。これがベインです。
Bain 能上私自身はメンターになっていませんが、他の方のメンターから「私がサポートしているコンサルタントが以前の能上さんと同じことで悩んでいるから、サポートしてあげて」と声をかけられたこともありました。
ベインは「グローバルワンチーム」で、スタッフ間の連携も強く、オフィシャルな育成プログラム以外でも、教育や成長に対しての協力意識が非常に強いと思います。
CEG 朏いつでもどこでも頼ることができるという環境があるのですね。制度が整っていても、そこに気持ちというか、パッションがないと実際には機能しないと思うので、御社の育成を大切にするカルチャー、育成へのパッションを感じました。
能上さんは、実際に入社してから、印象に残っているエピソードなどありますか。
Bain 能上私は営業職の出身で、コンサルティングの経験がありませんでした。入社した時はコンサルタントとしての基礎が全くなく、とても苦労しました。何から考えればいいのかわからない、エクセルで数値を整理する方法もわからない、というような状況だったのですが、私のメンターの方もすごく手厚くサポートしてくださいました。
当時の私は論点を立てる力が弱いと評価を受けていました。論点を立てることは、コンサルタントの基礎スキルです。メンターはそこを克服するために「ケースインタビューでトレーニングしよう」と言ってくださり、ご自身もプロジェクトで忙しいにも関わらず、毎週時間を取ってくれたのです。
また、プロジェクトのSVの方にも丁寧にサポートしていただきました。プロジェクトの中で私のウィークポイントが出てきたときは「少し足の長いワークで少しペースを落として進められるから、一緒にやっていこう」と私の課題を克服するために惜しみなくサポートしてくれ、とても励みになりました。
私は、メンターやSVと話す中で、コンサルタントとしての思考方法や分析方法、メンタルの部分も含め総合的な基礎力を身につけることができたと感じています。
Bain 大原誰もが似たような苦労をしてきています。だからこそ、自分の経験や知見を共有することで、仲間を助けることができるのであれば、喜んで協力する。そういうマインドを持った人が多いですね。
新卒で入社した人と、中途採用で入社した人では、つまずくポイントが違うので、それぞれに合ったサポート体制ができていますし、インフォーマルなサポートも活発です。
インフォーマルなサポートと言えば、オフィス内での立ち話もそうですが、オフィスのすぐ近くの公園やカフェでコーヒーを飲みながら面談している姿もよく見ますよ。会社もそういったインフォーマルなサポートのための予算をつけて、社員同士の交流機会をたくさん持つように推奨しています。
Bain 能上毎日、どこかで誰かが、面談していますよね(笑)。役職によっては、エクスペリエンスシェアも1,2カ月に1度、ありますね。4人程度のスモールグループで、過去の困った事例を話し合ったり、ひとつのトピックについて議論したりするというものです。とにかく、話す機会は多いですね。
Bain 大原中途採用者の場合、入社時の研修以外にもオンボーディングトレーニングを3カ月ごとに行います。最初に全部座学で聞いてもつかめないこともあります。実働する中でつまずき、そして初めて分かることもありますので、この体制にしています。
トレーニングの内容は、過去に苦労してきた先輩たちの集合知ともいえる内容で、実践的なプログラムになっています。
CEG 朏本当に細かく振り返り、シェアする機会を積極的に作っていらっしゃるんですね。人材育成への熱い想いが根付いているんですね。
それでもコロナ禍で人材育成の新たな課題も出てきたのではないでしょうか。
Bain 大原そうですね。このコロナ禍の2年は我々も、新しく入社した社員も手探り状態でした。その中で育成につながる大事な考え方が出てきていて、1つはプログラムとしてやるOff JTを再評価しています。今後は入社直後に数週間~1か月ほどを研修に当てようとしています。小さな組織であれば、師弟関係の中で細かいスキルなどは自然と身につくと思うのですが、我々も組織が大きくなってきて、師弟関係の密度や質に若干バラつきが出てきたと感じていました。コロナ禍により対面で接することが減ったことで、よりその側面が強く出てきてしまった。
一方で、身につけるべきスキルは以前と変わらないものも多い。エクセルや資料作成などについてはしっかりプログラム化、テキスト化することで、スタンダードなコンサルタントとしてのスキルをしっかり身につけられるように制度化していきたいと思っています。
もう一つは、カルチャーの再定義です。「結果主義」に紐づくベインならではの働き方や助け合い、仕事の楽しみ方など、私たちのカルチャーがあります。コロナ禍でこれらの価値観を伝える濃度が薄まったと感じましたので、ベインのカルチャーを言語化して、改めて社内で共有したいと考えています。まもなく私たちベイン東京オフィスのカルチャーを定義するスローガンが社内で発表される予定なのですが、その啓蒙活動に力を入れていこうとしていますね。
コロナ禍により、以前よりも企業にとって「パーパス」が重要になってきています。「なぜ我々が存在するのか」を言語化する、再定義することがメンバーシップを強化することにつながると考えています。
Bain 能上コロナ禍で入社された方は、最初からリモートの環境になってしまったので、対応としてコリーグ制度(年次の近い先輩が相談相手としてアサインされる制度)も、強化されました。コリーグとのペアだけでなく、ペア2組以上で交流する企画なども設定したりして、コミュニケーションが活発に行われています。
リモートだと、どうしてもチーム内だけのコミュニケーションになりがちです。メンターもいますが、少し年次が上なので、雑談を気軽にできるかと言えば、難しい場合もあるかなと思います。新しく入った方が、できるだけ、特に年次の近い社員を中心にいろんな社員と交流できるように工夫しているのは、すごく良いなと感じました。
CEG 竹端そこまでされているんですね。リモート化による孤立や人間関係の希薄化など、どの企業も課題として抱えられているので、とてもヒントになる取り組みですね。
Bain 大原実は私たちも、相当な危機感がありました。プロジェクトはリモートでも進められるのですが、やはりカルチャーの浸透や人間関係の構築は薄くなったと感じたからです。
コロナの前は、月1回程度はプロジェクトチームでイベントを行っていました。バッティングセンターに行ったり、脱出ゲームをしたり、何かしら交流の機会を作っていましたからね。オフィス全体でも、年1回は2泊3日の社員旅行もありました。一つ屋根の下で3日間共に過ごして構築した関係と、リモートの関係ではやはり違いがあります。これからもさまざまな工夫はしていくつもりです。
CEG 竹端こちらの会議室の壁の表彰は、人材育成に関わるもののようですね。
Bain 大原これはPeople Development Awardという人材育成に貢献した表彰者の名前が入っているプレートです。グローバルと東京オフィス独自のものと2つあり、グローバルは「ブライト-ディックス アワード」というものです。
2人の名前を冠したアワードなのですが、実はこの2人は1988年に飛行機事故で亡くなった我々の仲間です。人材育成に非常にコミットしていたことから、彼らの功績を記念して作られました。
毎年、社内で最も育成に貢献し、目覚ましい成果を上げた人にこの表彰が送られます。例年ですと1名なのですが、2021年は特例で2人が表彰されました。そのうちの1人は東京オフィスの社員です。
ベインはアメリカに本社がありますが、日本を含め、世界各国にオフィスがあります。世界中で働く誰もが平等に評価される環境であることがわかるかと思います。
CEG 竹端人材育成に貢献した社員を表彰するという取り組み自体、とてもユニークだなと感じます。
Bain 大原人の成長に寄与した人が称えられるというのは、我々にとってはとても自然なことですね。東京オフィスでも独自の取り組みとして毎年1名を表彰しています。
また、形で見える表彰だけでなく、人材育成に貢献することは、人事評価の中の重要な要素の一つとして位置付けられています。ですから、半年に1度は、どれだけ育成に貢献できたかを振り返っています。
#6 個人の自己実現の追求と、利他の精神
CEG 朏御社は「利他の精神」と言いますか、助け合うことが自然というカルチャーなんですね。ファーム全体で、プロボノ活動も盛んですよね。
Bain 大原そうですね。社会課題の解決に取り組むNPO団体やソーシャルセクターなどに対して無償で経営のサポートをするプロボノ案件はベインの特徴的な活動かもしれません。常に複数のプロジェクトが稼働しています。通常のクライアント案件と同様に、結果にこだわって支援しており、グローバルレベルでプロボノに投下する人数や案件数の目標値もあります。
プロボノ案件を経験することで、今まで知りえなかった社会課題について向き合うことで新たな学びとなり、社会貢献の実感をよりダイレクトに感じることができ、モチベーションになる社員も多いようです。
CEG 朏昨今は社会貢献意欲の高い若手が増えてきたと感じています。プロボノを推進しているということが、他のファームとの差別化にもなりますね。
Bain 大原他にもベインならではの制度は色々とありますよ。新卒入社組に人気なのは、他の企業に半年間の就労を認める「エクスターンシップ」という制度です。ベイン以外の組織を経験することで、視野を広げることができるので、人材育成の視点から有効だと思います。
Bain 能上海外オフィスで半年間働く「海外トランスファー」制度もありますよね。東京オフィスからは、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、アフリカ等のオフィスを選ぶことができます。社員の1割程度の人が希望していて、希望した人はほぼどこかのタイミングで実現しているのではないでしょうか。現在、東京オフィスにも2人の方が海外からトランスファーしてきています。
コロナが収まれば、私も希望を出したいと思っています。でも、実は英語が不得意なんですよね(笑)。仕事以外に取り組みたいことや時間の使い方をチームに宣言して、毎週トラッキングするという仕組みがすべてのケースチームに導入されているのですが、私は「週3日、1日30分英語の勉強をする」という目標を掲げています。周りには、自己研鑽以外にも「ジムで週3回、体を鍛える」「ペットと散歩に行く」など、いろんな目標をトラッキングしている人もいます。
Bain 大原育休・産休制度はもちろんありますし、個人の目標達成のために一定期間休職することも可能です。留学や、資格取得などの理由もあれば、好きなことや趣味などを極めたいなどの理由で活用しているメンバーもいます。
CEG 朏個人の自己実現も尊重するカルチャーなのですね。
Bain 大原そうですね。働き方も柔軟なので、ご自身のプライベートも大切にできるかと思います。基本的にコロナ前も今も、クライアントのニーズに合わせて働き方は調整する、というスタンスが基本です。コロナをきっかけにフルリモートに舵を切った企業もあれば、対面することを重視される企業もあります。私たちもそのクライアントの状況に合わせて、働き方は柔軟に対応していますね。コンサルタントが長く活躍できるよう、多様な働き方を認めていきたいと思っています。
#7 活躍できるのは「人と接するのが好きで、問題解決も好きな人」
CEG 竹端求める人物像についても教えてください。
Bain 大原よく言うのは、「 IQ と EQ のバランスがとれた統合型思考のできる人材」です。「True North」や「フルポテンシャル」を実践することは、IQの能力です。しかし、それだけだとクライアントは決して動いてくれません。 論理的には正しいことでも、実際に実現するためには大変なこともある。そういうクライアントの事情を理解し、その立場に寄り添うことが必要になります。3つ目のキーワードである「コラボレーション」に必要なのがEQです。ベイン内部でも、私たちは常にチームプレーで動きます。仲間がハイパフォーマンスを出せない時は、そういう状況にも理解を示して、カバーしてほしいと思っています。
ですから、問題解決が好きだけど、人間関係には興味がない。逆に、人と接するのは好きだけど、ビジネス課題を解決することには興味がない、というような方だと難しいですね。両方に興味があり、両立したいという人は、最適の場所だと思います。
Bain 能上実際、「IQ・ EQが揃った人材」は、社内には多いと感じます。ディスカッションや提言する際は、論点が明確でロジックもしっかりしている。でも、それだけでなくて、誰かが違う意見を述べたら、それも受けとめてくれる。困っている人がいれば、助けようとしてくれる。受容されていると感じて安心できるな、と。その人が持っているもともとの素養もあるでしょうし、IQもEQも持ち合わせている人に囲まれることで、そのような人材へさらに近づけるようにも感じます。
CEG 竹端なるほど。クールさと温かさの両面があってこその結果主義なのでしょうね。他にはありますか?
Bain 大原私たちベインのメンバーと一緒に働きたいと感じてくれる人ですね。ベインで働くことに誇りはもってほしいですが、それがブランド志向やカッコいいからという理由だと、実態とは違うかなと思います。
Bain 能上実は、私がベインに入りたいと思ったのも、このような人たち一緒にと働きたいと思ったからですよ。面接の際、30分という短いケース面接にも関わらず、担当者の方が私のことをとてもよく見て、有意義なフィードバックをくれました。この会社は人を大切にし、成長させてくれる会社だと思ったことを覚えています。
CEG 竹端面接のプロセスの中でも、人の育成に貪欲なのですね。
Bain 大原面接は人が人を見る場です。互いにスクリーニングをしあう場でもあり、出会いの場でもある。面接を通して少しでも、次の成長につながるようなフィードバックをしたいと思っています。
CEG 朏最後に御社への入社を考えている方に、メッセージをお願いします。
Bain 能上ありきたりな表現ですけども、すごくいい会社です。クライアントの価値を最大化させることを追求できる環境があります。その上で、ベインには本当にいい人がそろっています。私はコンサルティング経験もなく、英語も得意ではありませんでしたが、ここまでやってこられたのは、社内にいる先輩、同僚たちが本当に素晴らしいからだったと改めて思います。
中途で入社される方は、特に若手の方だと不安も多いと思いますが、安心して飛び込んでほしいと思います。
Bain 大原私から伝えたいことは2つです。
1つは、ビジネスパーソンとして、また、リーダーとして間違いなく成長できる機会があるということ。自分の成長に貪欲な人はぜひ来てください。能上が言うように、ご自身の経歴や自己認識している能力を必要以上に気にする必要はありません。それは入社してから私たちがサポートしますから。
そしてもう1つは、コンサルティングの仕事は社会に役立つ仕事だということ。私たちは日本を代表する企業に対してコンサルティングを提供させていただいています。大企業が変わると、日本が変わります。大企業をトランスフォームするということは、日本をトランスフォームすることと同じだと私は思っています。
自分が関わっている世界をより良い世界に変えたいと思いませんか。そのような視座を持った方は、ぜひ私たちと一緒に変革を担っていきましょう。
編集後記
カフェや公園でコーヒーを飲みながら、気軽にパートナーや上司に相談できる、というエピソードからも伝わってくる通り、ベインには居心地の良い空気が流れています。本インタビューでも、大原パートナーが柔らかく話しやすい雰囲気をつくり出される中、笑いの絶えない時間となりました。私たちにも、ベインの組織には温かく、強固な信頼関係が築かれていることが伝わってきました。
お話の中でたびたび出てきたキーワード 「True North」、「フルポテンシャル」、「コラボレーション」。ベインの最大の特徴である「徹底した結果主義」は、まさにこのようなカルチャーに支えられているのでしょう。
助け合う風土が定着している証左として、ベインはグラスドアの従業員が選ぶ「働きやすい企業ランキング」で、コンサルティングファームでは唯一14年連続4位以内にランクインしています。
「日本や世界を代表するクライアント企業をトランスフォームすることは、世界をトランスフォームすることでもある」と大原パートナーは話されていました。信頼、尊敬できる仲間と日本や世界をより良くしたい、という熱い志を持つ皆様に、ぜひおすすめしたいコンサルティングファームです。
10年以上にわたり、電機・電子機器メーカー、自動車、産業財、消費財、サービス等の幅広い業界の国内外のクライアントに対するコンサルティングに従事。全社ポートフォリオ戦略、成長戦略、コスト構造改革、デジタルマーケティング 、ディール実行や買収後の統合支援まで含めた国内外のM&A支援等、多岐にわたるテーマのプロジェクトを手がけている。
経歴:東京大学法学部卒業。パソナ、外資系コンサルティングファームを経てベインに入社。
電機・電子機器メーカーを中心に、金融、サービス等の幅広い業界の国内外のクライアントに対するコンサルティングに従事。成長戦略や構造改革、IR支援など多岐にわたるテーマのプロジェクトを手がけている。
経歴:東京大学工学部卒業。ベンチャー、起業を経て2018年よりベインに入社。