2010年問題
※ここでは製薬業界における「2010年問題」について記載します。
IT関連の「暗号の2010年問題」についての記述ではありません。
2010年問題とは、製薬業界の大手メーカーが、2010年前後に経営不振に見舞われる可能性が問題視されたものである。そこには、大きく2つの要因がある。
一つは、2010年前後に大手製薬メーカーの収益を支えてきた大型医薬品の特許失効が相次ぐことにある。特許失効により、独占販売制限が解かれ、市場シェアが縮小、価格が低下することで大幅な売上減少が懸念された。
医薬品メーカーが、一つの新薬を世の中に送り出すまでには、一般的に10~20年ほどの年月がかかると言われている。研究開発、臨床試験、承認申請により審査を経て、製造・販売となる。新薬の場合は特許を取得する。新薬の独占販売が可能な特許の最長期間は25年(5年延長を含む)である。
とくに世界最大の市場を持つ米国では、この事態の影響が顕著だったが、欧州や日本なども例外ではなく、世界的な製薬業界の問題となった。
大型薬の特許失効により、特許満了した薬(長期収載品)という位置づけになり、他社も類似医薬品の販売をしやすくなる。さらに、後発品を製造するジェネリック医薬品メーカーにとっても医薬品開発の幅が広がり好都合である。日本では、政府も医療費削減を目指し、後発医薬品を後押しする政策を行い、後発医薬品メーカーの収益は上昇傾向にある。
もう一つの要因として、特許失効を迎える大型主力品は、80~90年代に開発されたものが多く、それ以降大型新薬がほとんど生まれていないことが挙げられる。
それまでの技術で開発できる有効新薬の完成度も高く、その先は、より複雑な疾病の治療に使う新薬が求められる。たとえば、がん、アルツハイマー、精神疾患などだが、そのための大型新薬の開発はさらに長期化している。
昨今では、新しい技術となるバイオテクノロジーを取り入れた「バイオ医薬」「抗体医薬」の開発が進んでいる。2010年以降、市場シェアの確保、新たな研究開発力の強化を目的とする製薬業界の世界的M&Aも活発化している。大手メーカーの後発医薬品事業への参入、海外展開も盛んになり、製薬業界のビジネスモデルも大きな転換が起こった。
このように、大規模な再編が進む製薬業界は、コンサルティングファームにおいても注力業界とされており、製薬業界専門のチームを持つ大手ファームも多い。ケース面接においても、製薬業界の業界再編はテーマとして取り上げられることも多いので、基本的な潮流は押さえておきたい。
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