自社株買い
自社株買いとは、企業が市場に発行している自社株を自社が買い付けることを指す。企業は、自社資金を集めるために株式を発行しているため、買い戻しともいえる。
通常、企業が自社株買いを行う主な目的は、「株主(投資家)への利益還元」と「従業員のストックオプション(持ち株制度)」の二つのためである。
企業の株主に対する利益還元の方法は、「配当金」という形式と、自社株買いを実施することで「一株当たりの価値(利益)を上げること」である。株主に喜ばれる施策である。
2020年4月に、ソフトバンクグループが2.5兆円にもおよぶ大規模な自社株買いを発表し、話題となった。
ストックオプションは、自社株を従業員が一定の価格で購入できる権利を与える制度で、持ち株制度ともいわれる。株価が上がれば、自分(従業員)の利益も増えるため、従業員のモチベーションアップにもつながる。それを企業の業績アップにつながることを期待するインセンティブ制度ともいえる。
株価を上昇させて買収のハードルを上げ、買収されるリスクを下げる狙いで実施する企業もある。
もしくは、買収の際に現資金を動かすことなく、かつ、株価を高めて株式交換を行えるなど、M&A対策としても活用される。
自社株買いによって、どのように株価が上昇するのか。そのプロセスは下記の通り。
ある時点での利益が一定であるとして、発行済みの株式数を減らすことにより、一株当たりの利益が上がる。株主の配当金の分け前を増やせるとともに、株価が高くなれば「株価水準」も上昇する。
会計的にも、買い戻した分には配当金を支払う必要がなくなるため、配当金総額が減少する。経営指標のROE(※)が改善し「資産価値」が上がるため、投資家に対する魅力の向上にもつながっていく。
※ROEは「当期純利益 ÷ 自己資本」で算出する。自社株買いを実施すると、自己資本額が減り、ROEは上昇する。株主側の視点では、出資金がその企業で効率的に使われているかどうかを見ることのできる指標である。
自社株買いは上場企業の資本政策の一つ。上述の通り、M&A対策などとしても用いられることから、FAS、あるいは投資銀行などで扱われるテーマの一つでもある。
当該企業を受ける際には、自社株買いの効果について今一度整理しておくと良いだろう。
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