水素社会
次世代のエネルギーとして注目される「水素」
「水素社会」とは、日々の生活や経済活動などにおいて、水素をエネルギー・燃料として活用する社会のことだ。現在、日本は石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に、エネルギーの大部分を依存している。経済産業省の調査によると2021年の日本国内の発電量のうち、化石燃料を使った火力発電は約73%を占めている。
しかし、化石燃料の利用には二酸化炭素の排出や資源の枯渇といった課題がある。そのような課題を解決するエネルギーとして、期待されているもののひとつが水素である。
地球上で最も軽い気体である水素は、空気の約14分の1程度の重さしかない。また、水素は多様な資源から製造できるため、燃料電池自動車が商用化されるにつれて、国内での製造や、海外からの資源調達が増えている。国内製造の増加や資源調達の多様化により、水素はエネルギー供給や調達リスクの低減に資する次世代のエネルギーとして注目されている。
2014年4月に日本政府が策定した「第4次エネルギー基本計画」では、「水素社会」について検討を進めるべきであると盛り込まれた。これを受け、2014年6月には「水素・燃料電池戦略ロードマップ」がとりまとめられた。また、2017年末に閣僚会議で決定した「水素基本戦略」は、水素を「カーボンフリーなエネルギー」の新しい選択肢のひとつとして位置づけた。
「水素基本戦略」は、水素エネルギーの利用拡大を目指す国家戦略だ。水素エネルギーの利用によって、化石燃料の使用を減らし、温室効果ガスの排出を削減するのが目標となっている。具体的には、水素の製造、供給、貯蔵、利用という全体のサイクルを効率的に構築するための技術開発を国全体で推進することを目指している。
日本は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、水素の社会実装を重要視、水素を「つくり」「はこび」「ためて」「つかう」取り組みを世界に先駆けて推進している。また、国主導だけではなく、民間企業で一体となり、下記のような取り組みを進めている。
- 【トヨタ自動車】
2014年に、トヨタは世界初の量産型燃料電池自動車(FCEV)である「ミライ」を発表。燃料電池は水素を電力に変換するものを搭載。水素エネルギーの推進においては、燃料電池自動車の開発が不可欠であり、トヨタはこの分野でリーダーシップを取っている。
- 【日立製作所】
水素を用いたエネルギーソリューションの開発に注力している。特に、水素を利用した発電技術の開発と、そのための水素供給インフラの構築に力を入れており、2022年には余剰電力で水素製造し、既存のガス配管で供給するシナリオを発表している。
- 【東京ガス】
都市ガスと水素ガスの共通供給インフラを整備することで、水素の使用を推進する計画を進めている。
- 【三菱重工業】
水素ガスを安全に運ぶための水素船の開発に注力。さらに水素製造技術の開発や、水素ガスの効率的な利用を可能にする技術の開発でも注目を集めている。
水素社会には多くのメリットもあるが、水素社会を実現・構築するためには、多くの課題もある。そのなかでも最大の課題はコスト高だ。
水素エネルギーを大量に調達・保存・利用するための技術が不足し、供給インフラの整備が整っていないのが現状である。多様な資源から水素エネルギーを作り出すために、課題を解決したうえで低コスト化を実現させる必要がある。
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