ジェンダード・イノベーションズ
ジェンダード・イノベーション(Gendered Innovations)とは、「研究開発やビジネスにおいて、生物学的性別、社会学的性別、年齢や宗教等の要因の交差分析を行うことで、イノベーションを創出する概念」を指す。
これまでの研究開発では、生物学的性別や社会学的性別などの性差が考慮されない事例が生じ多くのステークホルダーが見落とされてきた。たとえば、シートベルトは、男性の体型を前提に開発されているため、妊婦が事故に遭った場合に胎児が死亡するケースが多いことが分かってきた。このように性差を考慮せず開発した製品で、命を落とす原因になってしまったケースもある。
こういったことを防ぐために、研究やビジネスにジェンダード・イノベーションを取り入れることによって今後、日本でも性差を考慮してデータを蓄積、分析し、新しい知見や個人に合った新しいサービスが生まれることが期待される。これが進むことで、多くの人のウェルビーイングの実現に向け推進することも可能だ。
2005年にスタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授によってジェンダード・イノベーションは提唱された。
2009年からスタンフォード大学にて「Gendered Innovationsプロジェクト」が始動し、2011年に欧州連合、2012年には米国国立科学財団もプロジェクトに参画した。このプロジェクトを筆頭に欧米諸国やアジアにジェンダード・イノベーションの概念が広まり、各国がジェンダード・イノベーション推進に向けた取り組みを開始した。
各国の取り組みには大きく分けて3つの特徴がある。
1つ目は、ジェンダード・イノベーションの適用事例の紹介だ。ジェンダード・イノベーションは、事例を知ることで、より理解を深めることができる。すでにジェンダード・イノベーションが適用されている事例を紹介することが有効な取り組みになる。
2つ目は、性差を考慮した分析を実施するための統計データの整備である。男女別のデータを有していなければ性差を考慮した分析を実施が難しい。性差を考慮してデータを収集し、提供することは、ジェンダード・イノベーション推進への大きな貢献となる。
3つ目は、ジェンダード・イノベーションを適用した分析「Sex/Gender分析」を、政策や研究資金の応募要項等に組み込むこと。それにより性差を考慮した研究を推進することが可能になり、ジェンダード・イノベーションを推進するうえで、有効な取り組みとなる。
日本では、2020年12月に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画における「第4分野 科学技術・学術における男女共同参画の推進」のなかでジェンダード・イノベーションが言及され始めた。
また、2021年3月に閣議決定した第6期科学技術・イノベーション基本計画でも女性研究者を増やすことでジェンダード・イノベーションを推進していくことが提唱された。
ジェンダード・イノベーションには、社会の変革を促し、暮らしをより快適で、便利にする可能性が大いにある。さらに、企業にとっては他社との差別化や新しいマーケットを創出することにもつながる。政府の後押しもあることから、今後、各産業界で急速に広まっていく概念となると考えられている。
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