クニエがルーマニアでスマートシティの実現に向けた実証実験実施
コンサルティングファームの株式会社クニエは、総務省より「ルーマニアにおけるICTを活用したスマートシティの実現に向けた実証試験等」を受託し、ルーマニアのクルージュ・ナポカ市において調査実証を実施する事を発表した。
本事業は総務省が2022年7月に策定した「総務省海外展開行動計画2025」にて、今後強化すべき重点分野として掲げる「ICTソリューション」の取り組みの一環である。本実証試験ではクルージュ・ナポカ市の協力のもと、暗号技術、AI、ブロックチェーンを含む分散型台帳技術、および生体認証技術を組み合わせてセキュリティを確保した自己主権型のデジタル証明アプリ「ClujID(クルージュID)」を開発し、その効果を検証する。
近年、欧米を中心に、自らの意思で自律的にデジタル社会と関わっていく「デジタル・シティズンシップ」の考え方が普及している。2021年6月、欧州委員会は「欧州デジタルID枠組規則案」を発表し、現在国民IDカードを有するすべての人が国境を越え、EU域内のどこでも認識されるデジタルIDを持つ権利を実現すべく、欧州全体のデジタル・アイデンティティ・アプリケーション(電子的身分証明、認証および信頼に係るサービス)構想が進められている。この構想では、EU市民は公的/民間サービスを利用する際、身分証明等の情報を自ら管理・共有し、自律的にデジタル社会に関わっていくことが期待される。EU加盟国であるルーマニアでは、デジタル化推進機構(ADR)がデジタルIDプラットフォーム構築を推進しており、中でもクルージュ・ナポカ市は統合都市開発戦略やデジタルトランスフォーメーション戦略を通じ、デジタルIDを活用したスマートシティサービスの開発に積極的に取り組んでいる。
クニエは、これまでも総務省から調査実証を受託し、2023年2月よりコロンビアにおけるスマートシティ実現に向けたICT技術検証を実施している。そして今回新たに「ルーマニアにおけるスマートシティ実現に向けた実証試験等」を受託し、クルージュ・ナポカ市とともに調査実証を開始した。
本調査実証では、プライバシーとセキュリティを重視した信頼できるデジタルIDの実現によりルーマニアのデジタルIDプラットフォーム構想に寄与することを目指している。クルージュ・ナポカ市と連携し、暗号技術、AI、ブロックチェーンを含む分散型台帳技術、および生体認証技術を組み合わせることでセキュリティを確保した自己主権型のデジタル証明書アプリ「ClujID」を開発し、その効果を検証する予定だ。具体的には、市民は安全なアプリ上で秘匿性の高い情報を「検証可能な資格情報(VC: Verifiable Credentials)」として自己管理を行えるようになる。これにより、市民はサービス提供者に対して必要最低限の情報のみを、自らが許可した範囲内で連携すること等も可能になり、第三者による情報漏洩リスクを低減しつつ、安全に信頼性の高い情報管理を実現できるようになる。また、オンライン上で情報の信ぴょう性を確認できるVCを活用するとにより、市民は各種証明書の発行等で市役所等に行く必要がなくなるため、効率的に公共サービスへのアクセスを行うことが可能になる。