PwC Japanが技術動向調査「世界のGX関連技術分析からみた日本の現在と未来」発表
PwC Japanグループは、グリーントランスフォーメーション(GX)に関する世界と日本の技術開発動向を投資情報および特許出願件数から調査した結果を「世界のGX関連技術分析からみた日本の現在と未来」として発表した。この調査ではGreen Transformation Technologies Inventory(GXTI)として定義される28の技術区分から世界全体で技術開発が進む分野や次世代技術として注目される分野等に焦点を当てている。さらに、PwC Japanが独自開発したIPランドスケープ分析ツール「Intelligent Business Analytics(IBA)」を使用して日本が置かれている状況を分析し、今後の課題について考察した。
世界的に気候変動や自然災害、環境汚染等の環境問題が深刻になる中、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一つとしてGXに高い関心が集まっている。上場企業は気候変動に係るリスクおよび収益機会が自社の事業活動や収益などに与える影響および知的財産への投資についての開示が要求されている。このような状況を受け、特許庁では2022年6月、GXに関する特許技術を俯瞰する新たな技術区分を作成し、それらに紐づけられた特許検索式と併せてGXTIとして公表した。この主要分野は「建築物の省エネ」「二次電池」「電動モビリティ」「太陽光発電」「燃料電池」などが挙げられる。
GXの主要分野を特許出願、特許保有企業への投資成長率および投資額から見た場合、2015~2020年で「電動モビリティ」「二次電池」が30%以上、「風力発電」が23%、「水素技術」が15%、「太陽光発電」が14%という高い特許出願成長率を維持している。各主要分野において一定程度の投資額があるが、特に「水素技術」と「電動モビリティ」は投資成長率が年50%弱と非常に高く、今後のさらなる成長も期待される。また、特許出願増減率で唯一増加傾向が続いているのは「水素技術」のみだ。
GX主要分野の各国・地域のグローバル特許出願件数比率から、日本は「太陽光発電」「燃料電池」「建築物の省エネ」「電動モビリティ」「二次発電」のグローバル特許出願件数が割合として多く、これらの技術開発を牽引してきたことがうかがえる。一方、GXの主要分野における日本の特許出願増減率は2016年以降減少しており、特に2018年以降急激に減少している。これに伴い、GX主要分野における日本の特許出願シェアも低下している。
今回の調査では世界的に投資成長率が高い一方日本のグローバル特許出願件数比率が低い「水素技術」に着目し、IBAを用いて詳細な分析を行った。その結果、「水素技術」のバリューチェーンにおける製造、貯蔵・運輸・供給、利用それぞれのフェーズの各技術要素における各国企業の技術スコアの平均から、各国・地域の技術力の差異、特徴が明らかになった。日本は全技術要素で一定程度の技術力を有しており、特に「製造プロセス」で高い存在感を示している。モビリティ分野が先行しており、水素の供給、利用に焦点を当てた技術開発が行われている。他方、欧州では本格的社会実装推進に向け、貯蔵・輸送を中心に技術開発が進んでいると分析される。さらに、米国や中国では水素の製造に注力していることが分かった。
日本が2019年9月に策定した「水素・燃料電池技術開発戦略」では、重点的に取り組むべき技術開発3分野10項目が挙げられている。このうち「燃料電池」分野に含まれる「車載用燃料電池」「定量用年長電池」「補機・タンク等関連システム」と、「水素サプライチェーン」分野に含まれる2項目「輸送・貯蔵技術」「水素発電」、さらに「水分解・その他」分野に含まれる3分野「水電解技術」「産業利用などアプリケーション」「非連続な革新技術」では、他国・他地域と比較し、優位になっているとは言い難い分析結果となった。