PwCが第26回「世界CEO意識調査」の結果を発表
PwCは2022年10月から11月にかけて、世界105か国・地域のCEO4410名を対象に実施した「第26回世界CEO意識調査」の結果を発表した。この調査によると、CEOの73%が世界の経済成長は今後12か月で減速すると考えている。CEOのこの厳しい見解は、12年前にこの質問を開始してから最も悲観的な結果となった。2021年、および2022年にCEOの4分の3以上が景気回復を予想した前向きな見解から大きく後退した。
困難な経済環境に加え、CEOの40%近くは現在のビジネスのやり方を継続した場合、10年後には自社が経済的に存続可能な状況にないと考えている。この傾向は通信(46%)、製造業(43%)、ヘルスケア(42%)、テクノロジー(41%)、と広範なセクターで共通していた。また、今後10年間で自社の業界において収益性に直接的な影響を及ぼす複数の問題が生じると考えており、その要因として、過半数が消費者の需要や嗜好の変化、規制の変更、労働力・スキルの不足を挙げる。
前回の調査ではサイバーリスクや健康リスクがCEOの懸念事項の上位を占めたが、今回は経済の変動による影響を反映した選択肢がトップとなった。インフレ(40%)、マクロ経済の変動(31%)が短期的及び今後5年間においてCEOにのしかかるリスクとして挙げれた。これに続き、CEOの25%が地政学的対立のリスクによる財務面への影響を懸念する一方、サイバーリスクと気候変動は相対的に順位を下げた。ロシアによるウクライナ侵攻や世界の他の地域における地政学的紛争に関する懸念の高まりは、CEOが自社のビジネスモデルの在り方を再考するきっかけとなっている。地政学的対立による影響を懸念するCEOのほぼ半数がサイバーセキュリティやデータプライバシーへの投資拡大、サプライチェーンの見直し、現在の市場におけるプレゼンスの見直しや新規市場への進出、製品やサービスの多様化などにより、想定される広範囲に及ぶ混乱の軽減策をシナリオ策定や企業運営モデルに導入している。
現在の経済情勢を受け、CEOはコスト削減や売上拡大を考えている。約半数が事業コストの削減を報告している一方、価格引上げや製品・サービスの多様化を挙げるCEOも約半数に上る。しかし、60%は今後1年間における自社の人員規模の削減は計画しておらず、80%は報酬削減を予定していないとする。
気候変動は他のグローバルリスクに比べ短期的リスクとして大きく注目されなかった一方、気候リスクがコスト面、サプライチェーン、物質的な資産への影響を続けると想定。特に、中国のCEOは気候リスクの影響を受けると感じており、その多くが自社の温室効果ガス排出削減に加え、気候変動に配慮した新たな製品・プロセスの開発、データに基づく全社レベルでの排出量削減と気候リスク軽減に向けた戦略策定などの取り組みを既に始めていることが明らかになった。
CEOは長期的に社会的価値を創出するためには信頼を築き、持続的な成果を上げるために幅広いステークホルダーと協力する必要があると認識している。今回の調査により、企業が非営利団体と連携する際には持続可能な開発(54%)、DE&I(49%)、教育(49%)を目的とすることが明らかになった。また、自社の人材や技術変革への投資も積極的に行う必要がある。技術的には約4分の3の組織がプロセスやシステムの自動化、重点分野における人材のスキル向上の仕組みを導入するなど、様々な取り組みを行っている、しかし、多くのCEOは組織が直面する一段と複雑なリスクに取り組むに当たり、組織の権限移譲や起業家精神にとって重要な前提条件(企業価値との整合性、リーダー層による反対意見や議論の奨励等)が自社に備わっているかどうか疑問視する。