NTT Dataが最新レポート「将来的な社会的処方の実装に向けた官民協働サービスモデルの可能性」を公開
NTT Data経営研究所は2023年4月、最新レポート「将来的な社会的処方の実装に向けた官民協働サービスモデルの可能性」を発表した。レポートでは、日本における社会的処方の検討動向、想定課題に触れながら、将来的な社会的処方実装に向けた民間サービスを活用した官民協働モデルの可能性について考察する。
社会的処方とは、健康の社会的決定要因、つまり社会・経済的因子や環境が健康状態に大きな影響を及ぼすことが明らかになる中で既存の制度枠組では届きにくい支援に対する課題解決の方策として、2006年にイギリスで言及されて以降2016年ごろから普及し、現在も急速に浸透している政策のひとつだ。社会的処方の主な構成要素は「社会的処方者」「リンクワーカー」「紹介先(社会資源)」の3つであり、それぞれ課題を抱える住民とのタッチポイント、アセスメント・ニーズに応じた社会資源への仲介、医療的サービスに限定されない社会参加やインフォーマルケアの場の役割を担う。
日本においては2022年6月7日に閣議決定された「骨太方針2022」における「孤独・孤立対策」の一環として「いわゆる『社会的処方』の活用」という記載があり、2021年度からは厚生労働省が「保険者とかかりつけ医等の協働における加入者の予防健康づくり事業」として複数の都道府県において社会的処方のモデル事業展開を行っている。具体的には、医療保険者はかかりつけ医との協働において、加入者の健康面のみでなく、社会生活面の課題の解決も必要になる場合、地域社会で行っている相談援助等につなげていくことを目指している。
社会的処方を実装、持続化するためにはいくつかの課題が残っているとされるが、大きく以下の5つの要素に大別されると考えられいる。
1. 医療制度および文化的背景
2. 実施・運用体制、情報共有基盤の整備
3. 住民とのタッチポイントとリンクワーカ―の担い手
4. 処方先としての社会資源の活用
5. 事業の持続性の確保
レポートでは課題解決のために、具体的に民間サービスの活用例を想定。
下記の通り紹介している。
・住民とのタッチポイントとのなる(リンクワーカ―と”連携する”)こと。
・リンクワーカ―を充実させる(リンクワーカーを”まとめる・育成する”)
・リンクワーカ―の活動を促進する(リンクワーカ―を”支える”)
さらに、将来的な官民協働モデル案についても考察している。リンクワーカーの活動を持続的なものとするため、「リンクワーカ―業務への報酬支払」と「専任での活動可能性」が重要な要素になると推察する。また、住民とのタッチポイントから社会的資源としてのインフォーマルサービスの提供者まで、社会的処方の実装支援に民間サービスは広範囲に支援できるとする。筆者は、医療や介護福祉などオ単一な分野にとどまらず、既存制度を分野横断的に活用し、多様な民間事業のアセットを展開しながら地域全体で住民の自立支援を促進する「官民協働でのサービス提供モデル」に期待したいとしている。