三菱総合研究所が2023年度版日本企業のDX推進状況調査結果を発表
株式会社三菱総合研究所(以下、MRI)と三菱総研DCS(以下、DCS)は、売上高100憶円以上の国内民間企業を対象とした「DX推進状況調査」を実施し、レポート「DXの突破口」をまとめた。
MRIは2021年12月の調査結果を踏まえ、DXの成果が限定的である状況克服のため、「DXリスタート」を提唱した。その後、DX推進度3段階のうち、ビジネス変革段階(第三段階)に至る企業は増加しているものの、業務改善段階(第二段階)にとどまる企業との差が拡大しつつある。2023年はビジネス変革まで至らない要因の特定と変革に成功した企業の課題解決方法にフォーカスし、MRIとDCSの共同による調査を実施した。
デジタルによる業務改善段階にとどまる企業(以下「改善企業」)と、ビジネス変革段階に至る企業(以下「変革企業」)のそれぞれの回答割合を比較した結果、3つの課題が明らかになった。また、三菱総研グループのこれまでの経験に基づき、3つの解決策を導いた。
課題の1つ目はDXの取り組み状況に対する回答で「ビジョンを計画通りに実行」と「KPIを設定してモニタリング」に大きな差があることだ。これを解決するためにはCDO(Chief Digital Officer)の任命やDX推進部署の設置など、推進責任を明確化し、全社がビジョン策定に参画し、各部署が「自分事」ととしてとらえることが重要だとする。また、ビジョンに至る道筋を変革領域として定め、定めた計画の到達度を図る指標を目的に合わせて設計・設定し、データ計測によるモニタリングを実施する事も重要だ。その過程で課題を再抽出し、状況に応じたビジョン・指標のアップデートを行う。
課題の2つ目はデータ駆動型の意思決定が行われていないことだ。データ活用が目的化しているため、ビジネス課題起点でその解決に必要なデータのみを収集・活用されているとは言い難い。ビジネス課題は組織にとって最重要である売上・利益増に関する事など、多くの人にとってメリットとなる具体的なテーマとし、社員の理解を求める。基幹系などの「今あるデータ」の可視化から着手することでデータやファクトを重視した判断を関係者議論の共通土台としての活用の習慣化を促す。
3つ目の課題はビジョンに即したDX投資を実現する階層間の連携がうまくいっていないことだ。経営層はDXの先にある飛躍的な事業成長を強く意識し、そのための前例のない巨額投資を行わなければならない。現場は「失敗」を「検証・学習」と捉え、迅速な軌道修正が求められる。また、現場実務者はビジョンの実行とKPIのモニタリングによって投資効果や進捗を可視化し、経営層へ共有する。