マーサー「2023年 世界生計費調査-都市ランキング」発表
マーサーは2023年6月、「2023年世界生計費調査(Cost of Living Survey)」を公表した。本調査はこれによると、香港、シンガポールは海外で働く駐在員にとって世界で最も物価の高い2都市である。香港は去年に引き続きトップを維持、シンガポールは6つ順位を上げて2位となった。本調査はニューヨークを基本都市としてニューヨークを100とし各都市と比較し、国際人用バスケットに基づき住居費、交通費、食料、衣料、家庭用品、娯楽費用などを含む200品目以上の価格を調査した。為替レートは2023年2月の平均を採用し、2023年3月に調査が実施された。
トップ10にランクインした都市は以下のとおりである。
1. 香港
2. シンガポール
3. チューリッヒ
4. ジュネーブ
5. バーゼル
6. ニューヨーク
7. ベルン
8. テルアビブ(イスラエル)
9. コペンハーゲン
10. ナッソー(バハマ)
アジアでは、49都市中9都市が順位を維持または下げた。ここには2022年にトップ10入りした北京(13位)・東京(19位)が含まれる。日本の都市では、大阪93位(56ダウン)、名古屋113位(62ダウン)、横浜115位(65ダウン)という結果だった。中国においてはほぼすべての都市が2022年と比較して順位を下げた。これは住宅市場の縮小と賃貸物件の需要減退が原因と考えられる。しかし、アジア圏トップ10には中国本土5都市、上海(12位)、北京(13位)、深圳(20位)、広州(36位)、青島(55位)がランクインしている。東南アジアではバンコク(105位)がシンガポールに次ぐ都市となった。一方、今回調査対象となったアジア49都市のうち、パキスタンのカラチ(226位)、イスラマバード(227位)は、アジア・世界のなかで最もコストがかからない都市となった。
2022年に世界経済を形成した主要因は2023年にも影響し続けるだろうとする。近年各国で導入された積極的な金融政策とそれに伴う厳格化により、今年多くの国で失業率の上昇とともに所得の伸長が鈍化すると考えられる。多くの国の債務水準は依然高く、コアインフレ率は多くの市場でまだピークに達していない。インフレと為替レートの変動は、国際的に活躍する海外駐在員の給与や貯蔵に直接的な影響を与えている。
さらにリモートワークの普及により多くの従業員が自分の優先順位を見直し、ワークライフバランスを重視し住む場所についても考えるようになった。また、このような背景から多くの企業は仕事の仕組みを再構築する必要性に迫られている。多くの企業、特に厳しい労働環境で事業展開を行う企業は、グローバルに分散した人材の管理方法が問われている。人事リーダーにとっては、エンプロイーエクスペリエンスを向上させることも優先事項のひとつだ。これは人材を惹きつけ維持するためだけでなく、全体的な企業ブランディングのためにも重要である。組織は既存のポリシーや慣行を定期的に見直し、その規定が現在の情勢において競争力を維持し、適切であることの確認が必要だ。