マッキンゼー「生成AIの出現」と題したレポートを公開
マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下、McK)は2023年5月、「生成AIの出現」と題したレポートを公開した。本論では、ChatGPTをはじめとする生成AIがビジネスもたらす社会の変化について活用法や懸念点を提示しながら論じている。
生成AIやその他の基盤モデルは、AIの競争原理の変化、支援技術の新たなレベルへの引き上げ、アプリケーション開発時間の短縮、技術の専門家ではないユーザーの能力の強化など、多くの変化を生み出している。ChatGPTやGitHub Copilotなどをはじめとする生成AIはかつて人間にしかできないと考えられていた領域にテクノロジーをもたらしつつある。生成AIによりコンピューターは創造性を発揮できるようになっている。入力されたテキストに応答し、学習したデータやユーザーとのやり取りをもとにオリジナルコンテンツの作成が可能だ。さらに、ブログの作成やパッケージデザインのスケッチ、プログラムの記述、生産過程のエラー理由の理論化等の領域への応用もできる。最新型生成AIは多くのトピックを網羅する膨大で広範な非構造化データセットを学習した大規模な深層学習モデルである基盤モデルから誕生した。
このような新たな可能性がある一方、導入されたばかりの技術には留意すべき点もある。例えば、ChatGPTは時折「幻覚(ハルシネーション)」を引き起こし、ユーザーの質問に対しあたかも事実かのように不正確な情報を生成する場合がある。このように生成AIは誤った事実を生成する事例が散見されることや不適切コンテンツを検出するフィルターが不十分であるという欠点もある。また、システム的なバイアスに対処する必要もあり、個々の企業の価値観が反映されるわけではない。クリエイティブなコンテンツ作成も可能な反面、知的財産権についても議論の余地があるなど、実用的かつ倫理的課題も残存している。
このようなメリット・デメリットを鑑み、経営リーダのための初期ステップを提示する。導入初期の現在、テクノロジーの急速な進化も予想されるため、導入には慎重になるべきだとする。事業において役立つ点、破壊する可能性のある点についての考察や生成AIに対する方針や体制のあり方についての検討を行う必要がある。その一方、組織全体でイノベーションを促進していくためには実験環境と併せて予想外のリスクを回避するための「適切なガードレール」を設置することも不可欠だ。
生成AIが、あらゆる規模の事業や技術的な熟練度に火をつける可能性があることは実に刺激的である。ただし経営者は、このテクノロジーの初期段階に存在するリスクをしっかりと認識しておく必要があるだろうという結論を、今回のレポートでは出している。