【マッキンゼー】活動紹介書を公開「児童生徒の『主体的・対話的で深い学び』の更なる質向上に向けて」
マッキンゼーは2023年3月、「児童生徒の『主体的・対話的で深い学び』の更なる質向上に向けて」と題する活動紹介書を公開した。
グローバル化・技術革新が加速度的に進む今日において、将来を担う子供たちは従来求められてきたスキルに加え、新たなスキルを獲得する事の重要性が世界中で叫ばれている。日本では新たなスキル獲得に向け、2017年に小中学校の学習指導要領などが改定され、「主体的・対話的で深い学び」の重要性が明示された。それ以降、学校教員は授業や生徒指導を通じ、そのような学び実現に向け、支援する役割が期待されるようになった。
しかし、日本の教員は新たなスキル習得につながる指導手法の実践頻度が他のOECD加盟国と比較し少なく、社会の期待に応えられる指導体制が整備されているとは言い難い状況にある。マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンはこの学習形態実現において必要な能力を分析したところ、コンサルタントとしてクライアント企業に提供している能力開発と多くの類似点を見出した。そこで、社会貢献活動の一環として日本の公立小中学校の教員に向けたワークショップをパイロット事業として実施した。
今後、子供たちが獲得することを期待される能力は、3つある。
1つめは論理的思考に基づき問題解決をするための「高度な認知スキル」、2つめは他者との協働を促す「社会情動的スキル」、3つめは技術革新のメリットを最大限に享受するための「技術的スキル」だ。
文部科学省の定義する「主体的・対話的で深い学び」とは、「児童生徒自身が学習プロセスに能動的あるいは体験的に関与すること」である。これは話し合い学習法や教科横断的な学習などによって実現され、これにより育成される行動特性は児童生徒が将来必要とされる各スキルを自ら構築していくことを可能にする点で重要だ。このような能力育成のためには教員が授業でそのような学びを児童・生徒に与えられる能力を十分に備え、授業で実践することを可能にすることが求められる。
しかし、日本の教員は「主体的・対話的で深い学び」につながる指導手法の実践頻度が他のOECD諸国と比較し、少ないという指摘もある。教員自身が十分な研修を受けていないため新たなスキル習得につながらないのだ。マッキンゼーでは、このような現状を受け、「主体的・対話的で深い学び」の視点での指導実践につながる教員の能力開発機会を増やすことは児童・生徒に将来求められる能力を習得させる観点で有効かつ重要だとし、マッキンゼーの成人教育に関する豊富な知見・実績を活かし、教員向けの能力開発機会を提供することとした。
日本において「主体的・対話的で深い学び」を実現させるためには、教員に必要な職能開発の機会提供が肝要だとし、そのための取り組みの発端として教員の職能開発を目的としたワークショップをパイロット事業として実施した。このワークショップには東京都三鷹市、神奈川県横浜市、鎌倉市の3自治体から計40名の教員が参加。ワークショップでは教員が授業内で児童生徒の「主体的・対話的で深い学び」促進のために求められる3つの能力「問題解決の能力」「他者と協働する能力」「助言を与え成長を促す能力」の開発に関わる職能開発に着目したプログラムを実施。ワークショップに参加した教員からのポジティブな評価により、ビジネスで求めらる能力と学校での「主体的・対話的で深い学び」実現で必要となる能力に深い親和性がみられた。今回のパイロット事業の大きな成功を受け、今後自治体や教育専門家、民間企業などの幅広いステークホルダーと連携し、この取り組みを拡大していくことを予定している。