マッキンゼーが『経営におけるデザインの価値』を発表
マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下、マッキンゼー)は、3月10日『経営におけるデザインの価値』と題し、各企業の財務パフォーマンスに対し、デザインが与える影響を分析したレポートを発表した。このレポートは上場企業300社が過去5年間でデザインをどのように実践してきたかの追跡調査や経営陣などへのインタビューや調査を通じ、企業のデザイン能力が財務パフォーマンスとどのように関連しているかを明らかにしたものだ。デザイン能力において財務パフォーマンスの向上と最も相関性の高い12の行動を見出し、これらのアクションを4つの大きなテーマに分類した。
今回の分析は、マッキンゼーが開発したMDI(Mckingsey Design Index)という診断ツール使用し実施された。この結果、MDIスコアの高さと優れた経営の成果との間には強力な相関関係があることが判明。分析した医療技術、消費財、リテールバンキングのすべての業界に当てはまった。これは企業の重点分野に関わらず、優れたデザインを行うことの重要性を示唆したものであるとマッキンゼーは見解を示している。また、MDIスコアにおいて上位25%以下の企業においては、株主総利回り(TRS)と収益の差はわずかであった。すなわち、他よりも抜きんでた企業のみが市場から集中的に見返りを獲得するという分析結果となっている。
このレポートで明らかになったテーマは下記の4つだ。
(1)デザインパフォーマンスを収益やコストと同等の客観性、厳格さで評価し、積極的に活用する
(2)物理的製品、デジタル製品、サービスデザインの垣根を取り除く
(3)社員全員がユーザー志向のデザインについて責任をもって取り組む
(4)エンドユーザーとともにヒアリングし、プロトタイプをテストし、改善を繰り返すことで開発におけるリスクを軽減する
MDIのスコアの高い企業ではデザイン志向のビジョンが掲げられ、経営陣とデザインが強力に結びついていた。一方で、経営陣がデザインについて客観的な意思決定を下せる企業は5%未満にとどまった。分析レポートでは、経営陣のみでなく、社内全体が協力し、ユーザーを巻き込みながら「学び」「試作し」「継続的な反復改善を行う」ことが重要であると指摘している。
マッキンゼーは今回のレポートにおいて「部門横断的なチームの中で優秀なデザイン人材を育成し、部門ごとの機能を維持しながらも、ユーザー体験を向上させることに共同責任を持ち、常に反復改善していくことが今後求められる」と結論付けている。