コーン・フェリー、役員の指名・報酬の実態調査実施
コーン・フェリー・ジャパンとグロービスは日本の大手企業約30社を対象に、役員の指名・報酬に関する実態調査を実施した。この調査でいう「役員」とは、執行と監督の双方かつ、社外取締役、執行役員も含めた広義の役員のことだ。各社の指名・報酬委員会の事務局や担当役員に対し、60~90分のインタビュー形式で定性的な調査を実施した。調査結果の概要は以下の通りだ。
1. 社外取締役は「量」から「質」へ
指名役員と報酬委員会の実効性において、社外取締役が果たす役割の大きさが明確に認識されていることにより、形式的に「量」を充足させることから「質」の確保の段階に移行しつつある。また、多くの企業の課題であるグローバル化に関し、グローバルな経営経験を有する人材の需要が高まっている一方、日本ではその経験を有する人材が大幅に不足している。しかし、海外人材を社外取締役として招聘する企業は限定的だ。
2. 役員の指名は「段階3.0」へ
「CEOの指名と後継者計画」に関しては一定の仕組みが整備されているが、CEO以外の執行役(員)の指名と後継者計画は未整備である。CDO(Chief Digital Officer)に象徴される一部の新設役員ポストに限り社外からの人材招聘がみられるが、多くは社内登用が前提である。「段階3.0」とよばれる指名委員会の審議対象をCEO以外の執行役(員)の拡大を行う企業がみられる。また、社外取締役個々人のパフォーマンスを本格的に評価する事例は見られなかった。
3. 役員報酬は従来型を踏襲
報酬委員会を通じた役員報酬は各社に大きな差異はない。多くの日本企業では社外からの執行役(員)の招聘が限定的であり、社内登用かつ日本人が中心になっているため、社外やグローバルレベルの報酬水準や職務基準の報酬体系への意識が低い。従業員においてはいわゆる「ジョブ型」が進んでいるのに対し、役員層では職務範囲が不明瞭であるため、役員の報酬水準を決定する際の基準を従来の役位とする企業が多い。社外取締役の報酬は各社ともに固定報酬を採用しており、その水準に関しては他社とのベンチマークを通じて妥当性を確認している。
人材市場が未発達で、経営執行の体制は企業ごとの文脈依存性が高く社内人材の組み合わせで柔軟に対応すべきであるという思想が根強く残っていることなどが執行役(員)の指名・後継者計画、また報酬に関する仕組みの変革を押しとめるボトルネックとなっている。「企業価値の後継的な向上」という視点から社外取締役と執行役(員)の役割を再定義し、適材適所の実現を推進するためには役員育成を通じた人材市場の充実と経営執行体制の高度化が必要だ。