A.T.カーニーが最新論考「Web3があたえるインパクト」を公開
A.T.カーニーは2023年4月、Web3に関する論考「Web3があたえるインパクト」を公開した。
NFT取引やブロックチェーンゲームは2022年の大手事業者の相次ぐ倒産等により失速したようにみえる一方、Disneyやサンリオ、スターバックスといったtoC企業がWeb3ビジネスへの参入を発表するなど、より上位概念としての「Web3」は健在であり、新たな可能性を提示し続けている。しかし、Web3は広範囲な業界に影響を与えるのみでなく、その概念自体が発展途上で新たな用途・サービスが次々と登場しているためWeb3のインパクトそのものの定義自体が困難で、市場の全体把握が非常に難しくなっている。そのため本論考ではいくつかの前提を設定し、Web3市場のインパクトを2021年/2027年の断面で推計した。
本論考で使用した前提は以下の3つだ。
1:インパクト=Web3関連事業での売上
2:Web3市場の区分は「プロトコル」「アプリケーション」「コンテンツ・IP」
3:2027年時点での基本シナリオとして"Web2.5"として採用
これによると、アプリケーションのみでなく、プロトコルとコンテンツ・IPの市場成長が大きい。ステーブルコイン規制の緩和による流通・決済量増加、トークン・暗号資産の税制改正、ポイントプログラム・ロイヤリティプログラムのトークン移行などが進むことで長期的に、Web3プロトコルの成長が見込まれる。しかし、Web2.5シナリオのもとではマサダプションの途上で、コンテンツ・IPを起点としたアプリケーションが成長の中心であり、結果的に2021年時点での5兆円から67兆円への成長と推計された。日本のコンテンツ・IPがアプリケーションレイヤーの成長を押し上げやすい為、日本の市場規模はグローバル市場の規模と比較し、早いペースでの成長が見込まれる。
このような試算を受け、事業会社が取り組むべきステップは以下の5つとして提示した。
STEP1:Web3の技術動向、事業動向の適切な把握
STEP2:「消費行動変化の特定」と「蓋然性の評価」から将来シナリオの見立ての策定
STEP3:将来シナリオを踏まえて、自社事業・業界に起きる機会・脅威の特定
STEP4:それぞれの機会・脅威の定量・定性インパクトを試算して優先度を決定
STEP5:Web3対応戦略の策定と社内合意
Web3が既に盛んな北米やシンガポールでは実際のビジネスにブロックチェーン技術やWeb3の概念が組み込まれ始めており、知見の蓄積も加速度的に進んでいる。
昨今の暗号通貨不況やNFT破綻の影響を受け、世界的に暗号資産やWeb3への規制強化の動きも見え、投資が減退しつつある。このような現状を受け、信頼度の高い大手企業を期待する市場になることが予想されると結んだ。