EY調査、通信事業者が直面するリスクのトップは「生活費高騰への対応」
EYは2023年1月、『2023年版 通信事業者が直面するリスクトップ10』を発表した。
この調査によると、通信事業者が消費者心理の変化にうまく対応できないことが、電気通信業愛が直面する最大のリスクであることが分かった。消費者は生活費の高騰により、支出の優先順位の変更を加速させている。あるEYの調査によると、60%の家庭がブロードバンド回線の定額使用料の値上がりを不安視している。
2023年の通信事業者が直面するリスクトップ10は以下の通り。
1. 生活費の高騰に苦しむ顧客に対して十分な対応をしていない
2. プライバシー、セキュリティ、信頼面における喫緊の課題の変化を軽視している
3. 従業員の構成とスキルセットの強化に難航している
4. サステナビリティへの取り組みの管理がずさんである
5. 社内のデジタル化計画を拡大する能力が欠如している
6. インフラの到達範囲とレジリエンスを確保できない
7. 新たなビジネスモデルを活用する能力が欠如している
8. インフラ資産の価値を最大化できない
9. 外部エコシステムとの関わり方が効果的ではない
10. 規制環境の変化に適応する能力が欠如している
このランキングでは、「プライバシー、セキュリティ、信頼面における喫緊の課題の変化を軽視している」リスクが3位から2位へランクアップしている。セキュリティ上の脆弱性が高まる一方で、取締役会でそれに見合った検討が行われているか否かには大きな乖離が発生している。EYの調査によると、通信事業者の最高情報セキュリティ責任者(CISO)の39%が、セキュリティは自社の戦略的投資の一部だという的確な捉え方がなされていないと考えている。さらに、コロナ禍において、より広範なビジネスとの関係性が不十分だというリスクが顕著になっていたにもかかわらず、セキュリティ機能がこのリスクのため脅かされている。また、通信事業のCISOのなかで、プロダクト開発チームと中~高レベルの信頼関係を構築できていると考えているのは31%にとどまった。セキュリティのリスクをさらに複雑にしているのが、顧客の不安の増大だ。46%の消費者はインターネット使用時に個人情報を確実に保護することは不可能だと考えているという調査もある。
「サステナビリティへの取り組みの管理がずさんである」というリスクが前年の5位から今年度は4位に上昇した。これは電気通信業界にとってサステナビリティがますます差し迫った脅威となっていることの反映だ。EYの調査によると、あらゆるステークホルダーが通信事業の具体的なアクションプランを求めているにもかかわらず、調査回答者の39%が、ネットゼロ戦略、エネルギー移行計画、脱炭素化戦略についての情報公開を行っていなかった。サステナビリティ分野における顧客の期待は大きくなっているため、通信事業者はその期待にこたえ続けるプレッシャーを受けている。消費者の39%がインターネット接続プロバイダーは、サステナビリティ問題に今以上に取り組む必要があると考えており、大手プロバイダーの68%は、これまで以上にサステナビリティ関連の目標実現の助けとなる5Gのユースケースに関心を示している。