EY、グローバル気候変動リスクバロメーターの最新レポート発表
EYは2022年11月、今年で4回目となる「EYグローバル気候変動リスクバロメータ―」の最新レポートを発表した。
このなかで、世界中の組織が気候変動のリスクと機会をどの程度開示し、どの程度リスク低減のための策を講じているかを検証している。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言で推奨される11項目に基づき、47か国、1500以上の企業による情報開示の取り組みを検証。TCFDの提言する開示の数(開示率)と各開示の範囲、詳細さ(品質)に基づき企業のスコアリングを行った。この検証により、世界中の企業は気候リスクに関する情報開示を改善し始めているものの、こうしたリスクに対処し、投資家や顧客ニーズに対応するために強く要求されている措置をまだ取れていないことが明らかになった。
この調査において、規制当局が推奨する各項目について一定レベルの情報開示を行っている組織は増加し、開示率の平均スコアは84%と、昨年の70%から大幅に増加した。一方、品質面においては依然として課題が残り、平均スコアは44%(昨年比+2%)にとどまった。例えば、調査対象となった企業のうち、財務諸表に気候変動の影響を報告している企業はわずか29%にとどまり、これは報告するために必要なデータがないか、その影響を計算していないことを示している。さらに、この29%の企業が財務諸表で言及した気候変動の影響の過半数は定性的なものであり、定量的なものではなかった。
このほかの分野では良い傾向がみられる。全世界で調査した組織のほぼ半数(49%)がTCFDの推奨事項である起こりうる特定のリスクの規模とタイミングを検討し、最悪の結果に備えるためのシナリオ分析を実施したと回答。また、75%がリスク分析、62%が機会分析、61%が脱炭素化戦略開示を実施したことが明らかとなった。
過去数年に比べ、企業が多様なリスクに対してバランスの取れた検討を行うようになったことも示されている。気候変動に起因する経済変化によってもたらされる「移行リスク」と気候変動の直接的結果である「物理的リスク」の両方に注意を払っている。特に改善がみられる分野は気候リスクに関する戦略策定だ。このスコアは昨年の65%から81%に上昇し、多くの企業が少なくとも何らかの開示を行ったことを示唆している。
開示の量、質は国によって大きく異なるが、厳格な気候開示規制を敷き、気候変動問題に積極的に関与する投資家コミュニティがあり、政策立案者が強力なメッセージを発する国の方が高スコアな傾向がある。韓国、アイルランド、東欧、中欧、南欧において品質が高く、英国は品質、開示率の両面において最高スコアを獲得している。