BCGが経産省による「個人の健康データ利活用推進に向けたモデル実証事業」支援
BCGは経済産業省から令和5年度「ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(個人の健康データ(PHR)利活用推進等に向けたモデル実証事業)」の執行団体として選定されたことを受け、実証事業者の公募を開始したことを2023年5月に発表した。実証事業では、個人の健康データ(PHR)活用に向けた異業種企業間の連携、および医療機関でのPHR利活用促進のため、以下2つの事業それぞれにおいて実証事業者を公募・決定の上、BCGのヘルスケア領域やBCG Xのエキスパートが当該事業者を支援する。
・PHRの異業種企業間の連携を通じた新たなユースケース創出に向けた実証事業
・PHRの医療機関連携に向けたデータ標準化実証事業
PHRの異業種企業間の連携を通じた新たなユースケース創出に向けた実証事業は、PHR活用に向けた異業種企業間の連携に資する業種を跨いだコンソーシアムが対象である。国民皆保険である日本では、「自身の健康維持・増進や予防分野のサービス」に個人が費用負担をして取り組むケースは少なく、ライフログ等のPHRサービスの現状のビジネスモデルは自治体・健康経営に取り組む企業、健康保険組合が大半であるためPHRを活用したサービスの普及、マーケット拡大については発展途上の段階といえる。今後PHRを生活に密着した産業サービスと組み合わせて活用することで個人に最適な新たなサービス・体験が提供され、ヘルスケア産業の裾野拡大に貢献すると期待される。実証実験では、食事・運動・睡眠等に関連する食品メーカー、小売、飲食店、フィットネス、住宅、寝具メーカー、家電メーカー、IoTセンサー開発事業者等の生活に密着した業種横断の複数企業が連携してPHRを活用することで新たな価値体験を提供できるよう試みる。ゴールとして、将来的に多様なPHRサービスにより、健康意識が高くない層も日常生活で行動変容が促され、健康に資する活動が可視化され、健康増進に寄与する行動がとれる状態を掲げている。そこで、令和5年度の実証実験においては、事業コンセプトが消費者に受け入れられ、今後の方向性が明確になっている状態を目指すとする。
他方、PHRの医療機関連携に向けたデータ標準化実証事業では、PHRの医療機関連携に向けたデータ標準化に資する、医療機関にPHRシステムを提供している事業者が中心となり、PHRの個人向けアプリ事業者を含むコンソーシアムが対象だ。令和2年度の経済産業省の委託調査において、医師の約9割が日常生活で取得される食事、運動、睡眠情報等のライフログが院外における血圧、血糖値等のバイタルデータを含むPHRが医療機関診断時に有効であると回答しており、PHRの医療現場での活用が期待される。今後PHRの活用を医療機関で推進するために、医療機関向けのPHRシステム事業者と個人、日常的に利用することが期待されているPHRアプリ事業者が連携していく必要があるが、各社とも自社アプリと自社の医療機関向けPHRシステム間でしかデータ連携が出来ておらず、PHRの医療機関での活用が進まない一因となっている。今後PHRの医療現場における活用を促進するためにも、様々なPHRアプリから医療機関に提供されているPHRシステムにデータ連携ができるよう、環境整備を進めていく必要がある。将来的にはPHRが医療現場で容易に活用可能で、診断・治療・モニタリングが効率的・効果的に行われ、医療アウトカムが改善するとともに、医師・患者の治療体験も大きく変化することをゴールとしている。そこで、令和5年度の実証事業では、医療機関及び患者に対する価値提供をもとに一部PHR事業者間でデータ標準化・共有システムが構築され、PHRデータが医療機関と連携されている状況を目指している。