ベイン「2023年春、世界高級品市場レポート」公表
2023年7月、ベイン・アンド・カンパニーは、イタリアの高級品メーカーの業界団体であるアルタガンマ財団と共同で「2023年春、世界高級品市場レポート」を発行した。2022年の個人向け高級品市場は、地政学的緊張やマクロ経済の不透明感の高まりにも関わらず、3,450億ユーロに達し、記録的成長となった。同年の成長率は9~11%で、その勢いは2023年第一四半期においても継続しているものの、地域により多少異なる様相を呈している。
2023年第一四半期にプラス成長を達成した要因は、過度なインフレの段階的鎮静化、欧州の消費者意欲の回復、中国での春節前のゼロコロナ政策撤廃と国境再開、日本や東南アジアでのインバウンド需要回復等が挙げられている。ただし、米国は景気後退の懸念から成長は減速すると見込まれている。
最富裕層は、高級品カテゴリー全体において引き続き消費意欲が高いことが明らかになった。最富裕層においては"Less but better"(少数のより良いものを)求める消費傾向がみられ、カテゴリー全体において「高揚感の追求」が超高級品の売上を後押ししている。特に、時計はトップブランドの定番モデル、ジュエリーは超高級アイテムが成長を牽引し、好調だ。バッグの人気定番モデルは資産価値が高いと捉えられていることから、活発な購買がみられる。アジアにおいては靴がブームになっており、スニーカー以外のカテゴリーにおいても人気が高まっているが、欧州においては減速している。美容カテゴリーでは、フレグランス、メイク・スキンケア用品で成長がみられる。
チャネル別では、実店舗や免税店での売り上げが回復傾向にある。免税店は、東南アジアや日本の活況を背景に回復を遂げつつある。モノブランドカテゴリーにおいては、店舗で商品を見たいと考える消費者が多く、実店舗への来客数の増加を背景に、2022年より安定的な成長が継続している。直販もオンラインやオムニチャネル3.0を活用した販売により、堅調な成長を維持している。
本レポートによる2023年以降の見通しは以下の通りだ。
高級品市場は2023年に3,600億円~3,800億ユーロまで拡大し、2022年の3,450億ユーロと比較して顕著な成長が期待される。
・楽観的シナリオ
中国市場の回復や欧州、南北アメリカ大陸での持続的成長により2023年の個人向け高級市場は安定的に拡大し、売上成長率は2022年比で9~12%の予測
・現実的シナリオ
成熟市場の減速や中国市場の回復鈍化がカテゴリー全体の成長に大きく影響を与え、高級品購入にも影響を及ぼす場合、個人向け高級品市場の売上成長率は2022年比で5~8%の予測
個人向け高級品市場は上記のような成長ファクターに後押しされ、2030年までに2020年比で約2.5倍の5,300億~5,700億ユーロに拡大する見込みだ。