[2024年]コンサル業界の最新動向
生成AIの登場、外資系ファームのレイオフ…コンサル業界への影響は
生成AIの登場や外資系ファームのレイオフが、コンサルティング業界で話題になっています。今後、コンサルティング業界はどのように変わるのでしょうか。また、採用動向にはどのような影響が出るのでしょうか。「2024年のコンサル業界最新動向」についてお伝えします。
2024年、コンサル業界が直面する3つの変化
コンサル業界を取り巻く環境の変化1:生成AIの登場により急増する実行支援案件
戦略系ファームも含めて、コンサルタントへクライアントから実行支援が期待されるようになって、久しくなりました。特に最近は、DX(業務のデジタル化)を伴う業務改善系のニーズが多くなっています。DX経営(経営のデジタル化)の流れはコロナ禍により加速し、2023年までに取り組みをはじめた企業が多くみられました。2024年以降はデジタルツールを運用しながらより自社に合ったDX経営の形を築いていく段階に入る企業が増えていくことでしょう。それに伴い、さらに踏み込んだ実行支援、PDCAの運用までのプロジェクトが増加していくと予想されます。2024年も引き続きDX需要はおさまらず、さらに拡大するでしょう。
プロジェクトの需要が増す背景の一つに、生成AIの登場が挙げられます。2022年11月に登場したChatGPTは、2023年には急速にビジネス界へ浸透しました。さらに、ChatGPT以外にも有力な生成AIが次々と登場しています。これにより、生成AIを業務に導入する業務効率化案件や生成AIを活用した新規事業開発といった内容のプロジェクトが、コンサルティングファームで急増しているのです。
こうした案件トレンドの中で、大企業の変革においては、大規模なITコンサル部門を抱えて、DX・業務改善の実行支援を得意とする総合ファームの存在感が増しています。業務効率化のコンサルティングには、現場の課題把握から業務の再設計、システム実装まで踏み込み、一気通貫での支援が必要となります。そのため、多様な専門性を持つコンサルタントと多くの人手を要するので、それに応え得る、大規模な総合系ファームがその力を発揮しやすくなっているのです。
今後もDX系の実行支援案件は増加傾向にあり、それらを得意とするファームが大きく成長するでしょう。
コンサル業界を取り巻く環境の変化2:米国のインフレ・景気後退懸念による外資系ファームの失速
この数年、コンサル業界は新卒採用、中途採用ともに非常に積極的な採用を行っています。それだけではなく、採用の競争激化に伴い、給与水準や提示されるオファー条件も上昇しました。
しかし、2023年から一部の外資系ファームの失速が目につくようになってきました。欧米に本社を置く外資系コンサルの数社において、本社のリストラやパートナー昇進数の減少、中途採用の募集停止など、採用や待遇に関するネガティブなニュースが報じられています。
このようなニュースを見ると、コンサル業界の雲行きを危ぶむ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、コンサル業界のビジネスが縮小しているわけではありません。むしろ、日本のコンサル市場は拡大傾向にあり、案件数も年々増え続けています。
つまり、一部の外資系コンサルのみにブレーキがかかっており、日系ファームを中心に大半のファームは好調という状況になっているのです。では、なぜこのような差が生じているのでしょうか。
1つ目の理由は、本国からのプロジェクト単価に関する制約の問題があります。昨今の円安により、国際比較でプロジェクト単価が安くなってしまった東京オフィスは、単価の上昇を本国から強く指示されています。プロジェクト単価を上げざるを得ない中、受注数が減ってしまい、結果として日本支社の営業成績の悪化、採用の停滞といった事態が発生しています。
2つ目の理由は、海外オフィスの経営不振です。欧州の戦争や米国の経済停滞懸念、インフレなどの影響を受け、プロジェクトの依頼が減少する海外ファームが見られます。連動して、外資系グローバル企業のプロジェクトを、日本支社で受注できなくなるといった影響を受けています。また、コスト削減のために、ファーム全体で採用停止の命令が出てしまい、日本支社でも採用を停止せざるを得なくなるといったケースもあります。このように、円安と本国の経営不振の影響を受けた一部の外資系ファームは、日本支社においても昇給や採用を見合わせているのです。
外資系ファームが失速する中で好調を維持しているのが、日系総合ファームやシンクタンク、ブティック系をはじめとする国内系ファームです。単価が上がった外資系ファームからの乗り換えや中堅企業のDX需要増加に伴い、受注数を大きく伸ばしており、中途採用においても積極性を見せています。
また、FAS系ファームの好調も続いています。その理由は、M&A戦略支援の需要増加にあります。既存事業の先行きの不透明さから、多くの事業会社がM&Aを一般的な経営戦略として用いるようになり、FAS系ファームへの支援依頼は右肩上がりとなっています。
なお、円安と本国の経営不振により、採用数が縮小傾向にある一部の外資系ファームも、春以降は採用再開の計画をしており、採用再開は思ったより早そうです。
コンサル業界を取り巻く環境の変化3:第二新卒の採用縮小と中堅層の採用拡大
従来、コンサルティングファームによる未経験者の採用は、第二新卒~30代前半の人材を積極的に受け入れる一方、30代後半以上の人材についてはハードルが高くなっていました。しかし、2023年頃から第二新卒層の採用ハードルが上がり、40歳コンサル未経験者の採用例が増えるようになっています。
この変化の背景には、主に以下のような事情があります。
まずは、新卒採用の動向による影響です。近年、コンサルティングファームは新卒採用において、名門大学の学生を中心にとても人気の高い業界となっています。一方、新卒採用は中途採用と比較した際の内定辞退率が高く、辞退を見越して採用予定人数よりオファーを多めに出すのが通例です。しかし、人気に拍車がかかったコンサル業界では内定辞退がほぼ出ず、結果的に新卒採用数がこの数年で計画以上に多くなっています。このような中、若手コンサルタント数が過剰になり、中堅・マネジメント層が不足するという人員構成のアンバランスが起きているのです。
また、案件トレンドの影響もあります。業務改善の実行支援案件の増加により、事業会社でのプロジェクト推進経験を持つ人材が求められるようになりました。また、SDGsやESG投資、地政学、AIやIoTをはじめとするテクノロジーなど、新しいテーマのプロジェクトが増加したことで、特定領域に専門的知見を持つ人材も貴重な存在として扱われています。このように、コンサル未経験であっても豊富な経験を積んだ人材が、高く評価されるようになってきているのです。
さらに、コンサルティングファームの中堅層が、コンサル業界外へと流出していることも大きな理由です。この数年、スタートアップ企業や事業継承に悩む企業が、魅力的な条件を提示して、コンサル経験者を抜擢するというトレンドが続いています。特に資金調達に成功したスタートアップ企業は待遇面においてもコンサル業界に引けを取らないほど優れており、高賃金やストックオプションなども魅力となっているのです。その主な対象は、マネージャークラスとなります。これによりファームにとっては中堅層が減少することとなり、人員構成のバランスに影響が出ているのです。
このような状況の中、コンサル業界は中堅であるマネージャー層が大きく不足しています。今後もマネージャー層もしくは、マネージャーに準ずる層の積極採用が、未経験者も含めて続くと予想されます。
2024年のコンサル業界はどう変化するのか
IDCJapanが発表した「国内コンサルティングサービス市場予測」によると、2020年に8,623億円だったコンサルティング業界のマーケットは、2025年には1兆2,551億円に達すると予測されています。さらに、生成AIなどデジタルツールの進化により、それらを活用したコンサルが今後ますます増加することは、ほぼ間違いないといえるでしょう。
採用動向としては、一部の外資系ファームが調子を落としているものの、日本のコンサル市場は依然好調であり、日系やFAS系ファームが大きく力を伸ばす年になりそうです。コンサル業界が成長する中、転職市場もそれに合わせて活況といえるでしょう。今後しばらくは、従来よりもやや高い年齢層の未経験者も含めて、積極的な採用が行われることになりそうです。
2024年のコンサル業界の動向について、ここまで予想してきました。しかし、新型コロナウイルスによるパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻のように、予期せぬ事態で市況は大きく変わります。市況により、採用市場もまた大きく変わるため、定期的に情報収集をすることで転職機会を逃さないようにしたいところです。そのためにも、信頼できるエージェントを見つけたり、メルマガ等に登録し、市況の変化を敏感に察知できるようにしておくことをお勧めします。
著者/監修者
ビジネスリーダーのキャリア支援に豊富な実績を持つコンコードのコンテンツ編集チームです。独自のナレッジやキャリア設計法、転職市場の最新情報を、わかりやすくご紹介します。
「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』『未来をつくるキャリアの授業』は東京大学におけるキャリア設計の授業の教科書に選定。『新版 コンサル業界大研究』は東大生協本郷書籍部で第1位を獲得。