[重要]主体的なキャリア形成に必要な「転職活動の基礎スキル」

[重要]主体的なキャリア形成に必要な「転職活動の基礎スキル」

転職活動にも、押さえておくべき「基礎スキル」があります。しかし、多くのビジネスパーソンの方々が、それを知らずに転職活動を進めてしまっているのが実情ではないでしょうか。今回は、主体的なキャリア形成に向けて、知らないと損をする「転職活動の基礎スキル」をご紹介します。

「スカウトメールを待つだけ」の転職活動は、本当に賢いのか?

「スカウトメールを待つだけ」の転職活動のイメージ図

近年、登録するだけでヘッドハンターからスカウトメールが届く「スカウト型転職サイト」が急増し、転職活動が一段と身近なものになりました。今や、「サイト登録=転職活動」と捉えている方もいらっしゃることでしょう。

しかし、「スカウトメールが来るのをただ待つだけ」という転職活動は、主体的なキャリア形成という観点から見て、理にかなった方法と言えるのでしょうか。

人材業界では広く認識されていることですが、転職活動には、情報の集め方や面接の対策、応募ルートの選び方など、押さえておくべき「基礎スキル」が多数存在します。このようなスキルを身に着けないまま転職活動に取り組むと、どんなに豊富な経験や高度な能力を持っていたとしても、思うような結果につながらないことが多いのです。

以下に、転職活動において必須となる4つの基礎スキルをご紹介していきます。

①スカウトは“参考情報”と捉える

スカウトは“参考情報”と捉えるのイメージ図

スカウト型転職サイトでは、ヘッドハンターは登録ユーザーの入力情報を見て、「この経歴の人なら、この企業のこのポジションで内定を獲得しやすい」と判断し、スカウトメールを送っています。当然ですが、登録ユーザーの志向や価値観、キャリアビジョンを本人から引き出した上で、スカウトメールを送ってきているわけではありません。

そのため、スカウトメールで届いた求人案件が、ご自身の意向と合致しないケースが少なくありません。あくまでも、現段階におけるご自身の経歴で「内定を得やすい求人がどこか」がわかるだけの参考情報と認識していただければ充分でしょう。

仮に、ご自身が希望している業種・職種に関係するオファーが届かなかったとしても、そのキャリアを諦める必要はありません。キャリア設計の仕方や、選考対策の精度によっては、スカウトメールでは届かなかった魅力的な企業に入社できる可能性があるのです。

②選考対策(書類・面接)を徹底する

選考対策(書類・面接)を徹底するイメージ図

採用選考は、学歴・職歴といった過去のデータのみで評価されるわけではありません。たとえ同じ経歴であっても、応募書類の書き方や面接における受け答え次第で、結果が大きく変わります。

面接官は、「この人が入社したら、具体的にどんな力を発揮し、活躍してくれそうか」をイメージしながら、自社にフィットする人材かどうかを見極めます。

「職務経歴書には、業績を数値で書きなさい」と勧めている転職本が多いですが、鵜呑みにしてしまうのは危険です。例えば、戦略コンサルティングファームに応募する人が、「現職の事業会社での営業成績が〇〇億円です」とアピールしても、採用側にとって魅力的な人物とは評価されないでしょう。

一方で、具体的にどのような創意工夫を施し、営業成績を上げることに成功してきたかを伝えれば、「問題解決能力が高く、コンサル適性もある」と評価される可能性が高まります。ご自身の強みを一方的に伝える文章ではなく、相手の採用ニーズに沿った文脈で、わかりやすく記述することが大切なのです。

面接でも、入念な準備が欠かせません。想像すれば当然なのですが、面接官が「ぜひこの人を採用したい」と思える内容で、ご自身の経歴や志望理由を話すことは簡単ではないのです。強調すべきスキル、伝えるべきエピソードをよく吟味するといった入念な事前準備なしに、上手に話すことは困難でしょう。

ここまでお読みになって、「自分には無理だ」と心配される方もいらっしゃるかも知れません。しかし、営業職が行っているロールプレイング研修と同じように、話すのが苦手な人でも、的確な準備を行えば面接は上達します。しかも、たった数日の練習で変化が起こるはずです。転職活動の結果次第で人生が大きく変化する可能性もあるので、しっかりと準備をしてから面接に臨んでください。

③内定につながるルートで応募する

内定につながるルートで応募するイメージ図

実は、どの応募ルートを選ぶかによって、選考結果が変わってくることも珍しくありません。

転職活動では、エージェント経由の応募が一般的になっています。スケジュール調整だけでなく、オファー額の交渉もエージェントが代わって行ってくれるため、転職活動を円滑に進めることができます。

ただし、エージェントによって得意な領域はまちまちですので、注意が必要です。

志望業界を得意とするエージェントであれば、的を射た選考対策を支援してくれます。さらに、採用企業の経営陣との強固なネットワークを有するエージェントであれば、非公開求人などの限定案件を紹介してくれたり、経営陣にダイレクトに打診することで面接の場を設定してくれたりするケースもあります。また、採用ニーズを正確に把握した上で、応募者の特徴を上手にアピールしてくれるため、内定獲得の可能性が高まります。あるいは、リアルな社内状況を共有してもらえることもあるでしょう。

しかし、志望業界に強くないエージェントに支援を依頼しても、適切な選考対策は期待できません。また、採用企業の経営陣とコミュニケーションが図れる関係性にもないため、有力な応募ルートになり得ないのです。

このように、どのエージェント経由で応募するかによって、内定獲得の確率、ひいてはのちのキャリアが大きく変わってきます。

もちろん、スカウト型転職サイトを経由してスカウトをしてくるエージェントが、実際には志望業界に精通していないというケースも多々あります。この点にも十分ご注意いただきたいと思います。

弊社にご相談に来られる方の経歴を拝見していると、「素晴らしいご経歴をお持ちなのに、なぜ前回の転職ではこの会社を選ばれたのだろう?」と、失礼ながら不思議に思うことが少なくありません。ご本人に伺うと、「より志望度の高い企業にも応募したところ、書類選考で見送りになってしまい、当時支援をお願いしていたエージェントに勧められるまま、今の会社を受けたのです」とおっしゃるのです。きちんとした書類を作成していれば、十分に選考を通過できる経歴なだけに、非常にもったいないことだと思います。

このエピソードからも、声がかかるのを待つのではなく、自分からエージェントを探すことの重要性がおわかりいただけるかと思います。

④転職市場の動向を把握する

転職市場の動向を把握するイメージ図

転職活動は、「市況の良い時に動き、悪い時には動かない」が鉄則となります。登山でも、天候の変化を見極め、適切なタイミングで行動することが求められるのと同様です。

転職市場は業界の景気に左右されやすく、転職の難易度も時期によって上下するのです。「今勤めている会社であと3年頑張ってから、○○業界に転職しよう」などのように、ご自身のタイミングだけで転職活動の時期を決めたとしても、望ましい結果につながるとは限りません。

転職市場が好況のタイミングで転職活動を始めれば、求人数や採用枠が増え、希望に近い条件や想定以上の好待遇で転職できる可能性が高まります。一方で、不況時には無理に活動を進めないほうが賢明と言えます。

なお、市況の良し悪しの把握は、ご自身だけでは難しいかもしれません。志望業界の転職市場を熟知するエージェントと、定期的にコミュニケーションの機会を持つことをおすすめします。

転職エージェント選びのポイント

最後に、転職エージェントを選ぶ際、確認いただきたい3つのポイントを紹介します。

内定獲得のためには、選考対策の支援内容も重要なポイントです。応募書類の作成時に具体的なアドバイスがもらえるか、模擬面接など実践形式の練習の機会を設けてくれるか、確認してください。

志望する企業との太いパイプを有しているエージェントであれば、内定獲得の可能性がグッと高まります。具体的には、最新の採用動向や選考傾向を的確に把握しているか、志望企業の経営幹部と直接やりとりできる関係にあるか、確認してください。

エージェントによっては、厳しい売上ノルマをキャリアコンサルタントに課しているところもあります。そのようなエージェントでは、短期的な利益を追ってしまうがために、応募者の志向に関係なく、内定を得やすい企業への応募を無理に勧めてきたり、意思決定を急かしてきたりするケースが少なくありません。この点もぜひ、確認してください。

上記のポイントに注意して、複数のエージェントと一度面談を行い、ぜひ慎重に選んでいただきたいと思います。

多くの転職エージェントは、無料でキャリア相談を受け付けています。ぜひ、ご自身の目で信頼できるエージェントを選び、主体的なキャリア形成に役立てていただきたいと思います。

著者/監修者

コンコード キャリアガイド編集部(著)

ビジネスリーダーのキャリア支援に豊富な実績を持つコンコードのコンテンツ編集チームです。独自のナレッジやキャリア設計法、転職市場の最新情報を、わかりやすくご紹介します。

コンコードエグセクティブグループ 代表 渡辺 秀和
(著者/監修者)

「日本ヘッドハンター大賞」初代MVP受賞。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』『未来をつくるキャリアの授業』は東京大学におけるキャリア設計の授業の教科書に選定。『新版 コンサル業界大研究』は東大生協本郷書籍部で第1位を獲得。