PEファンドへのポストコンサル転職[徹底解説]

ポストコンサルの転職先としてのPEファンドとは?

プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)は、機関投資家から集めた資金を用いて、主として非上場会社(未公開株)を対象に投資を行い、資金提供と経営支援を通じて企業価値を高めた後に売却し、高い収益を獲得することを目指す資産運用主体です。
バイアウト・ファンドと呼ばれることもあります。

一方、上場株式など市場性のある商品を投資対象とするファンドは、ヘッジファンドあるいはアクティビストと呼ばれています。
※ただし、PEファンドも、上場株を投資対象とすることもあります。

PEファンドはキャッシュフローが安定している成熟企業に投資するのが一般的です。対して主に創業後10年以内の企業を投資対象とするのがVC(ベンチャーキャピタル)ですが、PEとVCの中間的な投資を行なう「Growth投資ファンド」もあります。

PEファンドは、一般的に、3〜5年程度かけて投資から売却までを行います。
投資先企業に対しては、中長期の成長資金を供給するだけでなく、経営に深くコミットすることが特徴です。
PEファンドの社員が社外取締役として参画したり、外部から経営人材を招聘したり、あるいはコンサルティングファームに依頼することで、経営改革を推進します。

主な投資テーマは、下記の4タイプに大別されます。

  • 大企業の子会社および非主流部門の売却(カーブアウト)
  • 事業承継に悩むオーナー系中堅企業の売却
  • MBO(マネージメント・バイ・アウト)/MEBO(マネージメント・エンプロイー・バイ・アウト)
  • 要再生企業

2000年代は、要再生企業への投資が多く見受けられましたが、現在は、カーブアウトや事業承継のケースが多くなっています。

PEファンドの運用する資産規模は数十億~数千億円となり、グローバルの運用総額が兆単位の外資系ファンドも存在します。
それでも、多くのPEファンドの東京オフィスは10~30名程度の陣容で、少数精鋭のチーム構成となっています。

世界的に著名なPEファンドとしては、カーライル、ベインキャピタル、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、CVCキャピタル・パートナーズなどが挙げられます。
また、日系の著名なPEファンドとしては、ユニゾン・キャピタルアドバンテッジパートナーズインテグラルエンデバー・ユナイテッド(旧フェニックス・キャピタル)などが挙げられます。
昨今は、買収先企業の方針を尊重しつつ、ハンズオンで深く経営にコミットするスタイルの日系ファンドの躍進を受けて、新しいPEファンドも続々と立ち上がってきています。

PEファンドの業務内容

主な業務内容には、ファンドレイズ、投資先の発掘・評価(ソーシング)、投資検討、投資実行に関わる契約(エグゼキューション)、投資先の経営支援(バリューアップ)、売却(Exit)や新規上場(IPO)があります。

ファンドレイズ

ファンドレイズとは、ファンドへの投資を募集し、資金調達をする業務です。まず投資対象、ファンドサイズ(募集総額)や投資期間、期待できるリターン、想定されるリスクなどの投資方針を決定します。
投資方針が決定したら、投資家候補へアプローチし、出資を募ります。そうして投資額が目標金額に達成して、初めてファンドが組成されます。

投資先の発掘(ソーシング)

ソーシングとは、投資方針に基づき投資先候補を調査する業務です。主な業務は以下の2つです。

  • 投資銀行や商業銀行、証券会社、FAS(財務系コンサル)、M&A仲介会社などからもち込まれた案件を分析する。
  • 投資先として魅力的な企業を発見し、直接コンタクトをとったり、その企業の取引銀行を通じてアプローチする。もしくはM&A仲介会社と協業し、アプローチを依頼する。

これらの業務を行うにあたっては、金融機関とのつながりが不可欠です。金融機関と良好な関係を構築していると良い提案を受けられる機会が増えるため、金融機関とのネットワーク形成もソーシング業務の一部といえます。そのため、ソーシングには営業力が必要となります。
加えて、効率よく企業の調査を進めていくために、その業種や業態、規模などについての見識をもつことも重要です。
なお、一般的にソーシングはエグゼクティブ層が担当しますが、金融機関とのネットワーク形成や資料の作成は若手も行います。
前述のとおり、PEファンドは基本的にキャッシュフローが安定している企業を投資対象とします。そのため、ソーシングの際は売上高のボラティリティ(価格変動)が高い業界は避け、業績の安定しやすい業界を対象とすることがほとんどです。

投資検討

投資検討では、ソーシング時の調査をより深化させ提案書を作成、社内の投資委員会に提出します。この時点の調査では、初期的なビジネスデューデリジェンス3C分析等)、モデリングを行います。
提案が投資委員会で認められると、外部の専門家を交えてさらに詳細な調査を実施します。具体的には、ビジネス・法務・財務・税務等について、更に投資対象が大企業の場合にはITや人事等のより幅広い観点でもデューデリジェンスを行います。法務や会計、ITなどのデューデリジェンスは、外部の専門家に委託するケースも少なくありません。

ビジネスデューデリジェンスは、自社で行う場合とコンサルティングファームに委託する場合が半々程度、一方モデリングは自社で行うことがほとんどです。対象企業がどの程度成長可能か見積もり、バリューアップフェーズでやるべきことを洗い出します。
また、投資対象企業の役員に直接話を聞いたり、対象の業界に対して深い知見をもつ有識者に対して、エキスパートインタビューをしたりすることもあります。
これらの調査にはコストがかかりますし、対象企業にも負担となるため、やみくもにすべての投資先候補に対して実施することはできません。一次入札後にデューデリジェンスを行いながら交渉を行い、その結果をもとに二次入札等のプロセスへ進むのが一般的です。
こういった調査を通じて投資先企業の価値を正確に判断し、適切な投資判断をすることが、PEファンドの利益確保には重要です。

契約(エグゼキューション)

上記のような調査を行った結果、投資対象に値すると判断した企業の買収を実行します。

バリューアップ

企業の買収後は、中長期的な経営プランを立てたうえで、管理体制を強化したり、KPIを設定するなどして、経営に関与して企業価値の向上に取り組むことが重要です。
バリューアップにおけるPEファンドの関与には、以下の4つの段階があります。

■モニタリング

モニタリングとは、経営が順調に行われているか、問題が発生していないかなど、PEファンドの社員が投資先企業を観察することを言います。
PEファンドは投資先企業の過半数の株式を取得するため、自社の社員を取締役として投資先に派遣し、取締役会で状況を聞くといった方法でモニタリングを行います。PEファンドの投資先への関与のなかでは、もっとも程度の軽いものです。

■経営支援

経営支援とは、取引先や仕入れ先の紹介など、投資先の会社経営を円滑にするための支援のことです。モニタリングのみでは投資先の価値向上が難しいと判断した場合に行われます。

■CxOを派遣する

CxOの派遣は経営支援よりもさらに踏み込んだ、PEファンドによる投資先への干渉です。CxOとは、CEOやCFO、CTOなど、企業の業務および機能の最高責任者の総称です。しかし、CEOの派遣は経営陣の変更に近いものとなるため、このフェーズではCEOを除く責任者が派遣されることになります。

■経営陣を変える

経営陣を変えることは、PEファンドにとってはもっとも程度の重い投資先への干渉といえます。

以上の4段階のうち、PEファンドは2と3の間程度の措置をとることが平均的です。

5. IPOや売却(Exit)

非公開株式の上場(IPO)や企業の売却(M&A)で、投資した資金を回収します。上場や売却で得た金額から、元本と投資家に分配するリターンを引いた金額がPEファンドの利益となります。PEファンドが得られる報酬は、Exitで回収した資金が元手の何倍であるかによって決まります。つまりファンドの報酬は成果に応じたものとなります。
PEファンドの報酬は、投資家との契約内容によりますが、一例を挙げると「ファンド全体のリターンが2倍の場合、増加分の2割程度がファンドの報酬として分配される」というような具合になります。
PEファンドの事業成功としては、Exitで元手の2倍の資金を回収することがひとつの目安となっています。
PEファンドでは1件あたりの成功時のリターンは、2倍から大きければ5倍程度になります。一方、VCの場合はアーリーステージでの投資になるため、大化けした場合はリターンが100倍を超えることも少なくありません。そのため、PEファンドの場合はVCよりも1件当たりの投資成功率を上げる必要があります。具体的には、10件の投資に対して7件の成功が目安といえるでしょう。
こういったリターンの考え方をもとにしているので、投資対象は前述の通り安定キャッシュフローの会社であることを重視する傾向があります。

ポストコンサルがファンドへ転職する魅力

意思決定者の側面を持ち、実行まで携わる

PEファンドでは、コンサルティングスキルを活かしながら、株主という立場から経営に参画できるため、ポストコンサルにとって非常に魅力的な環境といえます。

コンサルタントのよくある悩みとして「提案したプランを実行してもらえない」という声があります。コンサルタントは、あくまでクライアントである経営者のサポート役という立場です。
しかし、PEファンドであれば、株主という立場で経営支援に参画することができます。意思決定者として、改革プランを強く推し進めていくことも可能です。企業価値の向上に責任を負い、当事者として多岐にわたる経営課題に対応していくことになります。企業経営に対する責任やリスクを経営者と共有している分、裁量が大きく、主体性をもって業務に取り組めることがやりがいにつながりやすいでしょう。

また、コンサルタントには、「クライアントに提案したプランがどのように実行されるのか見届けたい」という声もよく聞かれます。
PEファンドでは、投資後、数年にわたって経営支援に入ることが多いため、戦略から実行まで携わりたいポストコンサルにとって、その点でも魅力的な転職先と言えます。
このようにPEファンドは、収入の高いプロフェッショナルファームに所属しながら、企業経営者に近い経験もできるという魅力的なキャリアとして、ポストコンサルの有力なネクストキャリアのひとつとなっているのです。

年収

「収入にレバレッジを効かせたい」という悩みも、コンサルタントの声としてよく挙げられます。
コンサルティングファームは年収が高いとはいえ、基本的に労働集約型ビジネスです。毎回のプロジェクトで一生懸命頑張ったとしても、起業家や経営者のように大きな収入をまとめて得ることはなかなかありません。

一方、PEファンドの給与は、ベース(年俸)と一般的な意味でのボーナス(賞与)、キャリーボーナス(成功報酬)、それに社員自身がファンドに出資して得られるリターンの4つの合算で構成されています。PEファンドでは、担当事業が成功すればキャリードインタレスト(Carried Interest、通称:キャリー)などのインセンティブで大きな収入を得られることがあります。

キャリードインタレストの原資はPEファンドが受け取る成功報酬です。社員への分配方法は、各社によっても、ポジションによっても異なりますが、場合によっては、生涯働かなくてもよいほど多額の収入を得ることもあります。

ワークライフバランス

ワークライフバランスの視点も重要です。
担当企業にもよりますが、戦略コンサルティングファームよりもPEファンドのワークライフバランスの方が良いことが多いようです。
企業へ投資する意思決定時や投資後に成長の軌道にのるまでは忙しさを極めますが、しばらくして投資先企業が成長軌道に乗っていけば、日々の業務は戦略コンサルタントほど忙しくはなりません。

ポストコンサルがファンドへ転職する際の留意点

このようにPEファンドは、ポストコンサルの転職先として多くの魅力があるキャリアです。しかし、PEファンドの採用枠は大きくありません。
PEファンドへの転職は、魅力が大きい分、ポストコンサルにとっても念入りな選考対策が必要となる、難易度の高い転職となっています。

PEファンドへのポストコンサル転職では、ハンズオン型ファンドに入社した方が活躍しやすいでしょう。ハンズオン型ファンドは、資金的な投資だけでなく投資企業内に深く入り込んで経営支援を行うため、コンサルティングスキルが十分に発揮されます。
自身の考えやスキルセットにフィットするPEファンドを選んで入社することが大切です。

また、“担当運”に恵まれるか否かによってキャリアが変わるという側面があります。
担当企業で、出資前には想定していなかったような事実が発覚したり、トラブルが続いたりすることで、経営支援に苦戦する場合があります。
しかし、PEファンドでは、一度始まった案件の担当から外れることもなかなか難しいのが実情です。
そのままパフォーマンスをあげられないと、インセンティブボーナスも少なくなる上、PEファンド内でのキャリア形成そのものも厳しくなることがあります。

経済動向の影響を大きく受けるファンドビジネスのジレンマも理解しておく必要があります。
例えば、株価が著しく低下している時期に、ファンド側が市場に連動した安値で企業を買収しようとしても、企業側が安値での売却を渋ってディールが進まないことがあります。
ファンド側はやや高値で買収してもリターンが出せると考える一方、出資者への説明責任から市場に連動した安値でなければ買いづらく、なかなか投資が進まないこともあります。

PEファンドのポストコンサル採用傾向

リーマンショック後には、多くのファンドが業績を落として採用が止まっていましたが、現在はポストコンサルを含めて採用が積極的に行われています。
PEファンドは時期によって採用が完全にクローズしてしまうことも珍しくありませんので、注意が必要です。
PEファンドを目指すポストコンサルにとって、今が好機といえるでしょう。

外資系PEファンドや一部の日系PEファンドでは、20代を中心に、M&A関連のプロジェクト経験がある、投資銀行出身者や戦略コンサルファーム出身者、財務系コンサルファーム(FAS)の出身者を採用する傾向があります。
一方、財務モデリングに関するスキルが問われず、ハンズオンで経営支援をできるリーダーシップの高い20代後半~30代のポストコンサルを採用している日系PEファンドもあります。

PEファンドは採用枠が狭い上、ポストコンサルや外資系投資銀行の出身者に、とても人気の高い転職先となっています。
そのため、応募書類の準備、面接対策などをしっかり行うことが大切です。
面接の回数は各社によって異なりますが、ファンドのシニア社員全員と面接を行うことが通例です。
さらに、PEファンドによっては、財務モデリングのテストが課せられることもあります。
PEファンドへの転職を成功させるためには、各PEの選考プロセスの傾向を踏まえた選考対策が必要となります。

代表的なPEファンド

PEファンドへの転職支援実績Track Record

  • 33歳 (男性) 東大卒

    外資戦略系ファーム

    マネージャー

    1600万円

    PEファンド

    ヴァイスプレジデント

    1700万円+賞与
  • 26歳 (男性) 早大卒

    財務系ファーム(FAS)

    コンサルタント

    600万円

    PEファンド

    アソシエイト

    700万円+賞与
  • 34歳 (男性) 慶大卒

    シンクタンク

    マネージャー

    1300万円

    PEファンド

    ヴァイスプレジデント

    1200万円+賞与
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