戦略系コンサルへの転職[徹底解説]
戦略系コンサルティングファームとは?
戦略系コンサルティングファームは、クライアント企業のさまざまな経営課題の解決を行うプロフェッショナルファームです。
必要に応じて、事業戦略、マーケティング戦略、M&A戦略、新規事業の立案、組織改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)、SDGs対応などさまざまなテーマのコンサルティングを実施します。
戦略コンサルは、戦略立案に関わるプロジェクトを中心に行っているというイメージをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。しかし、近年ではクライアント企業から変革のスピードや具体的な成果を求められるようになっています。そのため、中長期的な戦略立案だけでなく、現場のアクションプランを作り込み、プランがきちんと実施できるようにサポートする「実行支援」まで踏み込んでプロジェクトが行なわれるようになってきています。
戦略コンサルに分類される外資系のコンサルティングファームは、ワールドワイドに拠点をもっている場合が多く、グローバルカンパニーや大手企業を主たるクライアントとしています。
代表的な戦略系コンサルティングファームには、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストンコンサルティンググループ、ベイン・アンド・カンパニーなどがあります。
「戦略」「経営」「ビジネス」各コンサルタンティングの違い
「戦略コンサルティング」と似た用語として、「経営コンサルティング」や「ビジネスコンサルティング」があります。
一般的には上位概念として経営コンサルティングがあり、その中に戦略コンサルティング、ビジネスティング、ITコンサルティングなどが含まれると定義されます。
また、経営戦略は、企業全体の戦略にかかわる「全社戦略」、企業が抱える各事業に関する「事業戦略」、さらに「機能戦略」に分けられます。機能戦略とは事業を実行するにあたって必要となるさまざまな機能です。具体的にはマーケティングや調達、物流、セールスなどが含まれます。
従来、戦略コンサルティングでは全社戦略、事業戦略を担当し、ビジネスコンサルティングは機能戦略、業務フェーズを担当することが一般的でした。しかし、現代の戦略コンサルティングファームは業務フェーズまで担当するようになり、他方でビジネスコンサルティングファームも上流の工程から関わるケースが増えており、互いの垣根がなくなりつつあります。
戦略コンサルの業務フロー詳細
様々な産業に対して経営課題の解決を行う戦略コンサルについて、そのポジションや業務内容を見ていきましょう。
業務フロー1:提案
新規または既存のクライアントに対して、プロジェクト提案資料を作成してプロポーザルのプレゼンテーションを行い、プロジェクトを受注します。扱う経営課題やプロジェクトの方向性が定まるため、とても大切なフェーズとなります。
提案業務は、ファームの経営幹部であるパートナーや、現場のリーダーであるマネジャークラスが担当します。クライアントとのディスカッションにより経営課題を把握し、それをもとにマネジャークラスを中心として提案書を作成します。クライアントへのプレゼンテーションはパートナーがリードするのが通例です。一般の事業会社等では、営業活動は若手が行うことも多いのですが、コンサルティングファームでは、このように幹部層が主導します。クライアントが抱える経営課題を適切に見抜き、フィットする解決策を模索できるプロジェクトを提案することはとても難しく、企業経営に対する深い洞察や変革事例の豊富な知見などが必要となるため、パートナークラスが担っているのです。
提案業務は、このように難度が高く、プロジェクトの方向性を決めるやりがいもあります。しかし、成約に至らなければ、クライアントから報酬を受け取ることはできません。
業務フロー2:キックオフミーティング
クライアント企業との契約が結ばれると、コンサルティングファーム内でプロジェクトチームを組成してキックオフミーティングを行います。
プロジェクトチームは、提案に携わったマネジャーをプロジェクトリーダーとし、当該プロジェクトに必要なスキルを持つメンバーがアサインされます。
プロジェクトは、クライアント先に常駐する「オンサイト」となる場合もあれば、ファーム内のオフィスワークとなる場合もあります。アサインされたコンサルタントは、プロジェクトのテーマ、業界、クライアント企業に関する大量の情報を短期間にインプットします。
業務フロー3:中間報告
リサーチ、仮説構築、仮説検証の作業を繰り返し、ドキュメンテーション(情報の整理と文書化)を進めていきます。それらをもとに中間報告資料を作成し、クライアント企業に報告を行います。
業務フロー4:最終報告
中間報告で確認された方向性に基づいて、追加調査を行ったり、仮説を詳細化したりしながら最終報告資料をまとめます。クライアント企業にプレゼンテーションを行った上、最終アウトプットとして資料一式を納品します。
業務フロー5:実行支援(次プロジェクト)
昨今では提案までで終わらず、実行支援まで踏み込むスタイルのコンサルティングが増加しています。最終報告後に、次のプロジェクトとして、提案内容に基づいた改革の推進をクライアントから依頼されるのです。
提案内容にクライアントが満足してもらえた証でもあり、次のプロジェクトの受注にもなりますので、コンサルタントとしては大変喜ばしいことです。
このような実行支援まで行うプロジェクトが増える中、成果報酬型のフィー体系を採用するファームも珍しくなくなっています。
コンサルティング業界において、実行支援の重要性は今後も増々高くなっていくことでしょう。
戦略コンサルのプロジェクト事例(抜粋)
戦略コンサルティングファームに転職した後、どのようなテーマを扱うのでしょうか。以下で、コンサルティングプロジェクトの事例を見ていきましょう。
インダストリー別プロジェクト事例
- 自動車(大手自動車メーカーのグローバル展開支援)
- 金融(買収先事業会社のビジネスデューデリジェンス)
- メディア(大手広告代理店の営業戦略構築および実行支援)
- エネルギー(政府機関のエネルギー戦略構築支援)
- ヘルスケア(医療機器メーカーの中期経営計画策定支援)
ファンクション別プロジェクト事例
- 戦略(大手商社物流事業の海外進出戦略構築支援)
- DX(金融機関のコンタクトセンターにAIを導入、デジタル化)
- SDGs対応(飲料メーカーのプラスチック循環システム構築支援)
- マーケティング・ブランディング(大手不動産会社のコーポレートブランド戦略構築支援)
- オペレーション(日系電子機器メーカーの業務効率化の実行支援)
- 人材・人事(大手家電メーカーの人事制度構築支援)
- R&D(大手アパレルメーカーの商品開発プロセス再構築支援)
戦略コンサルタントの魅力とやりがい
戦略コンサルタントがクライアントとともに取り組むテーマは、上記のプロジェクト事例にもあるように、クライアント単独では解決が難しい、複雑かつ最先端の経営課題です。大企業の全社レベルの企業変革につながる提案を行うこともあり、関係企業を含め多様なステークホルダーにインパクトを与えます。経営者とともに、高い視座から難度の高い課題解決に取り組むことは、この仕事ならではの醍醐味といえるでしょう。
また、変革を支援する中で、クライアントの経営陣に喜んでもらえたり、クライアント企業が良い方向にかわっていく姿を見たりする機会も多々あります。人のために役に立つ喜びを味わうことのできる仕事であることも大きな魅力の一つです。
そして、経営人材を目指す上で必要となる、特定の業界や企業に限定されない「問題解決力」と「リーダーシップ」を身につけられることも大きなポイントといえるでしょう。戦略コンサルタントはさまざまな業界や企業に対して、経営者視点での問題解決をする経験を通して、汎用的な問題解決力を培うことができます。また、クライアント企業の組織や人、そのほかのステークホルダーを巻き込んでプロジェクトを推進していくことが求められるため、若いうちから高度なリーダーシップを身につけることができます。そのため、戦略コンサルティングの経験者は、転職市場において経営人材として高い評価を受けやすく、後述するように事業会社の経営幹部やPEファンドなどの魅力的なキャリアが開けています。
戦略コンサルタントの役職・仕事内容・年収
戦略コンサルタントの年収としては「ベース+賞与」という給与体系に加え、高度プロフェッショナル制度(※1)を採用するファームも出てきています。年収水準が高いことで知られているコンサルティング業界ですが、戦略コンサルタントは、中でも年齢に比して特に高額な報酬が設定されています。
※1高度プロフェッショナル制度:高度な専門知識を有し一定水準以上の年収を得る労働者について、労働基準法に定める労働時間規制の対象から除外し、個人の裁量に委ねる仕組み。“労働時間”ではなく、“労働の成果”に対して報酬が支払われる。
以下、役職ごとの仕事内容と給与をご紹介します。
アナリスト
プロジェクト内の各タスクを担当します。マネジャーや先輩コンサルタントの指示のもと、有識者インタビューやシミュレーション作成、クライアントとのミーティングの議事録作成などを主に担います。
新卒や第二新卒等はアナリストからキャリアをスタートします。年収は550万〜750万円程度。
アナリストを約2~3年経験し、それ以降は大体3〜4年ごとに職位が上がっていくのが通例です。従来、戦略ファームではその期間内に上の職位につくことが求められてきました。しかし昨今は、組織規模の拡大のために多くのファームが人材育成に力を入れており、柔軟に猶予期間が設けられるようになっています。
コンサルタント/シニアコンサルタント
アナリストの次の職位で、中途採用の未経験者等はこのクラスからジョインすることが一般的です。
このクラスになると、プロジェクトの中のある一定範囲を受け持ち、自分の判断で業務を進め、その進捗ごとにマネジャーの指示を仰ぐといったスタイルの働き方になります。自分でスケジュールを立て、セルフマネジメントしていくことが求められます。
コンサルタントの年収は約700万〜1000万円。シニアコンサルタントの年収は1200万~1700万円程度。
マネジャー
プロジェクトリーダーとして企業への提案(営業)を担当し、受注したプロジェクトの進行に責任を持つ職位です。
チームメンバーに道筋を示すことが大きな役割です。また、クライアントが満足する成果を生み出すために、経営陣の期待値コントロールや提案内容のクオリティー管理など重要な仕事を担います。マネージャーの年収は1800万〜2500万円ほど。
パートナー
コンサルティングファームの経営幹部層です。案件獲得とファーム全体のマネジメントを担います。また、自分が関わったプロジェクトのアドバイザーとして携わることも多々あります。
既存クライアント幹部とのリレーション構築はもちろんのこと、個人的なネットワークも活用しながら営業活動を行っていきます。セミナーでの講演や執筆などの機会も増え、有名企業の経営層との議論なども含めて、とてもやりがいのある仕事といえるでしょう。パートナークラスの年収は実績によって大きく変わり、3000万~1億円以上となります。
【戦略コンサルへの転職】求められる人材要件
戦略系コンサルティングファームの多くは、未経験者をポテンシャルで評価して採用しているため、オファーを獲得する人のバックグランドは多岐にわたります。
未経験者の中途採用の場合、20~30代前半の有名大学卒の人を中心に、前職の職種に関わらず採用される傾向があります。
具体的には、事業会社や金融機関の経営企画、マーケティング、営業、経理・人事・法務などのバックオフィス、システムエンジニア、国家公務員、大学の研究職、医師、弁護士、公認会計士など様々な職種から転職してきています。
戦略コンサルティングほど幅広い職種に対してポテンシャル採用を行っている業界は見られないと言っても過言ではないでしょう。
中途採用の要件として、MBAの学位取得は必須ではありません。ただし、かつて必須項目ではなかった英語力が、近年は重視される傾向があります。戦略コンサルへの転職を検討している場合は語学力のスキルアップは視野に入れておくと良いでしょう。
【戦略コンサルへの転職】選考プロセス
戦略コンサルへの転職はしっかりとした対策ができたかどうかが成否を決めると言っても過言ではありません。以下で具体的な選考プロセスや選考内容についてご紹介します。
選考プロセス1:書類選考
履歴書および職務経歴書によって選考が行われます。志望動機書や英文レジュメの提出を求めるコンサルティングファームもあります。
一般的な転職攻略本には「職務経歴書に成果を数字で記述せよ」と書かれているケースがあります。しかし実態としては、戦略コンサルへの転職時の書類選考ではそのような内容は重視されてはおらず、むしろ成果を数字で記載しただけでは適性に疑問符がつくこともあります。
選考プロセス2:筆記試験
論理的思考能力を測るために、GMAT(※1)や判断推理(※2)を中心とする筆記試験を課す戦略系コンサルティングファームが多数です。一般的な適性検査よりも難易度が高く、事前に対策をしておかないと、優秀な人でも筆記試験で不合格となってしまうこともあります。
(※1)GMATとは、Graduate Management Admission Testの略で、ビジネススクールへの留学にあたって求められることが多く、MBA取得の実質的共通試験となっています。
(※2)判断推理とは、公務員試験の科目の一つで、論理的な思考能力を問う試験です。
選考プロセス3:面接
通常、5~6名の面接官と1対1の面接が行われます。
志望理由や職務経験を中心とする面接もありますが、多くの戦略コンサルファームでは、地頭力を見るためにケースインタビューを課しています。
ケースインタビューとは、面接官からあるシチュエーションが示され、その問題に対する解決策を答えさせるというディスカッション形式の面接です。
具体的には次のようなケースが与えられます。
「万年筆の年間市場規模は?」
「新幹線の中のコーヒーの売上を2倍に伸ばすには?」
「あなたがファーストリテイリングのCEOだったらどのような手を打つか?」
上記のような問いに論理的に回答していくことが求められます。
また、ケースインタビューでは、回答内容だけを評価されるのではなく、ディスカッションに臨む姿勢も見られているので注意が必要です。
対策なしにケースインタビューを乗り越えるのは極めて難しいのが実態です。戦略系コンサルティングファームへの転職を希望するのであれば、しっかりと対策をしてから挑みたいところです。入念な対策を行うことで、面接で高いパフォーマンスを発揮することは十分に可能です。
戦略系コンサル出身者のネクストキャリア
戦略コンサル出身者のネクストキャリアは幅広く、事業会社経営幹部・幹部候補への転職、投資銀行やPEファンドへの転職、他のコンサルティングファームへの転職などが見られます。
事業会社への転職では、外資系事業会社、大手日系事業会社、ベンチャー企業、オーナー企業が主な転職先となります。
経営幹部ないしは経営幹部候補をはじめ、経営企画部門やマーケティング部門の中核メンバーとして転職先で活躍する人も多く見られます。
昨今、ベンチャー企業でのキャリアが注目される中、ご自身で起業というキャリアを選択する人も珍しくありません。
また、M&Aやファイナンスへの関心や高い報酬などの魅力から、投資銀行やPEファンドなどの金融業界へ転職される人もいます。
他のコンサルティングファームへの転職でも、戦略系、財務系、業務・IT系、シンクタンク系など選択肢はとても幅広いです。転職先のコンサルティングファーム内で昇格を重ねてパートナーとなる人や経営コンサルタントとして起業される人も見られます。
外資系戦略コンサルについての詳細は、下記の記事も参考になります。ご確認ください。
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