総合系・業務IT系コンサルへの転職[徹底解説]
総合系コンサルティングファーム・業務IT系コンサルティングファームとは?
業務IT系コンサルティングファームは、業務改善、IT戦略、ERP導入、SI、BPOなど、業務全般やIT活用に関わる経営課題の解決を幅広く手がけるプロフェッショナルファームです。
クライアント企業のDX対応のニーズを受けて、急速な成長を遂げているファームが数多く見られます。
業務IT系コンサルティングファームの中でも、特に戦略コンサル部門を持つファームは「総合系コンサルティングファーム」と称されています。
総合系コンサルティングファームは、戦略立案、業務改善、システム導入・運用など一貫した支援を行い、経営レベルから現場レベルまで企業が抱える課題を幅広く解決します。
M&Aコンサル部門、企業再生コンサル部門、組織人事コンサル部門、リスクコンサル部門なども擁しており、サービスの範囲はとても広範です。
代表的な総合系コンサルティングファームには、アクセンチュアや、Big4のメンバーファームであるデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)、PwCコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)、KPMGコンサルティングなどが挙げられます。
総合コンサルの魅力
一気通貫での支援
総合系コンサルティングファームの魅力の一つは、さまざまな部門が連携して総合的な提案と支援ができることにあります。
総合系コンサルティングファームの組織は、業界(インダストリー)と機能(ファンクション)で部門が区切られており、それぞれの専門領域に精通したプロフェッショナルが在籍しているのが特徴です。
特に、大手総合ファームの場合、経営戦略やIT、M&A、組織人事などの専門性や特定業界における知見を豊富に持つコンサルタントに加えて、グループ内には公認会計士や税理士など、異なる専門性を持つプロフェッショナルが集結しています。そこでは組織の壁がほとんどない状態でコラボレーションが行われています。それぞれの専門家が知恵を存分に出し合うことで、経営戦略の立案からITシステムの導入、人事制度や会計、経理財務の仕組みの変革まで、クライアント企業の課題を一気通貫で解決できるのが大きな強みです。
大規模な組織と豊富な資金
また、大手総合系コンサルティングファームは、会社の規模が大きく、豊富な資金を持っているということも重要な点です。
豊富な資金は、新しいサービス開発への先行投資を可能にします。実際に、アクセンチュアやBig4系などの大手グローバルファームでは、研究開発チームを組成し、技術や社会の動向を踏まえた先端領域のサービス開発に力を入れています。近年では、地政学的リスクへの備えや、SDGs/ESG(環境・社会・企業統治)への取り組みなどが企業に求められるようになったことを受けて、マクロ的観点から企業へ提言を行うシンクタンク部門を設立する大手総合ファームも目立ってきました。
更にはM&Aによって新しいサービスラインの拡充も図っており、その対象は、AI企業や広告代理店、デザインファームまで多岐にわたります。
実は、コンサルティングファームもその例外ではありません。2010年代には、大手総合ファームによるグローバル戦略ファームの買収が盛んに行われました。
2014年には、100年の歴史を持つ世界的な戦略ファームだったブーズ・アンド・カンパニーがPwCグループに統合され、大きな話題になりました。現在はPwCグループの戦略コンサルティングファーム、Strategy&として活動しています。
また、ファイブフォース分析やバリューチェーンで知られるマイケル・ポーターら米ハーバード大学ビジネススクールの教授陣によって創設された戦略ファーム、モニターグループも同様です。2013年にデロイトグループに統合され、現在はデロイトグループのグローバルな戦略部門、モニター デロイトになっています。
もちろん、統合された戦略ファームにも、多様な専門家とのコラボレーションによってクライアント企業のより高度な変革支援が可能になるなど、多大なメリットがあります。
育成制度とグローバルネットワーク
資金力と規模の大きさ故の、充実した研修制度も特筆すべき点です。多彩なユニットや部門の人材の知見や経験をベースとした高度な教育制度が多数用意されている点は、大手総合ファームならではの魅力と言えます。
さらにグローバルとのつながりが深いことも注目点です。特に外資系大手総合コンサルの場合、グローバル企業の拠点となるほぼ全ての国・地域で事業展開しており、世界中のオフィス間で連携・交流が盛んに行われています。
総合コンサルの仕事内容について
総合系コンサルティングファームの社内には多くの部門があり、それぞれ専門領域や仕事内容が異なります。例えば、戦略コンサルティング部門は経営戦略に関する構想設計を主に担当するのに対し、ビジネスコンサルティング部門は業務改善や実行支援など、ITコンサルティング部門はシステムの開発や導入を行います。
近年は競争環境の激化を背景に、多くの企業が大規模な変革をスピーディーに行う必要に迫られており、戦略立案のみならず実行支援まで含めて一気通貫で支援してほしいという要望から総合コンサルへの依頼が増加しています。さらに、現代の企業経営においては、経営戦略や業務改革、人事制度、経理財務などの管理体制に至るまで、あらゆる領域でデジタル活用が前提となりました。そのため、IT・デジタル領域の課題解決に強い総合コンサルへのニーズが高くなっています。
戦略コンサルと総合コンサル
一方で、戦略コンサルの総合コンサル化も進んできています。戦略コンサルティングファームでも、実行支援まで踏み込んだプロジェクトを行うようになったうえ、デジタルトランスフォーメーション(DX)コンサルチームを持つファームも登場しました。
このように、総合コンサルの戦略部門やビジネスコンサル部門と戦略コンサルでは、プロジェクトによって経験できることに大きな差はないといってもよいでしょう。実際、総合ファームの出身者は戦略ファームで高い評価を得られるため、両者の間ではコンサルタントの転職も活発であり、個人のキャリアとしての垣根も徐々になくなってきています。
総合コンサルの役職・年収
総合コンサル内の階層と昇進
コンサルタントにはクラス(職位・階層)があり、経験や実績によってプロモーション(昇進)をしていきます。クラスごとの呼称やプロモーションする年数の目安は会社によって異なります。
一例ですが、まずビジネスアナリストを1〜2年経験したのち、コンサルタントを3年程度、シニアコンサルタントを3年程度経験します。その後マネジャー、シニアマネジャー、ディレクター、アソシエイトパートナー、パートナーといったクラスへプロモーションしていくというようなケースが一般的です。
【階層別の年収例】
・ビジネスアナリスト:500万円台~
・コンサルタント:600万〜800万円程度
・シニアコンサルタント:800万〜1000万円程度
・マネジャー:1000万〜1500万円程度
・シニアマネジャー:2000万円程度
・パートナー:3000万円程度。1億円以上という高額なケースも。
昇進について
コンサルティング業界は、一定期間で昇進できなければ退職させられる、いわゆる「アップオアアウト(Up or Out)」というスタイルで、厳しく成果が求められる印象を持つ方もいらっしゃるかと思います。かつて、コンサルティングファームが小規模な組織で運営されていた時代は、クオリティーの担保のためにそのような厳しさが求められていたファームもありました。しかし、現代のコンサルティング業界では、研修体制も整備され、丁寧な人材育成を行っているファームが大半です。特に、クライアント企業からのニーズに応えるため、積極的な採用を続ける総合系コンサルティングファームでは、社員が解雇されることは稀です。与えられた責務をきちんと果たし、経験と実績を積んでいけば、基本的には昇進していくことができるでしょう。
ただし、パートナークラスへの昇進については、案件を受注するという高度なスキルと能力が求められるため、容易ではありません。パートナーを目指す場合には、特定領域における高度な専門能力の形成や社外への露出なども含めて、意識しながらキャリアを形成していく必要があります。
総合系コンサルティングファーム・業務IT系コンサルティングファームに求められる人材要件
業務IT系コンサルティングファームでは、コンサルティング未経験者については、20~30代の人でIT関連の業務経験者を中心に採用しています。
また、IT関連の業務経験が無い場合でも、出身業界や経験職種が勘案され、該当領域のコンサルタントとして採用されるケースもあります。
例えば、金融機関向けのコンサルティング部門で保険業界出身者を採用するなどの事例が挙げられます。
総合系コンサルティングファームの未経験者採用は、多くの場合、年齢、出身大学名と経験業界・経験職種などが総合的に勘案され、該当領域のコンサルタントとして採用されます。
ただし、インダストリーとファンクションごとに部門が分かれているため、M&Aコンサル部門では財務系の経験が求められたり、組織人事コンサル部門では人事経験が求められたりと、採用要件は部門ごとに大きく異なるので注意が必要です。
また、クライアント企業のグローバル化に伴い、昨今は高い英語力をもつ人が好まれる傾向が強くなっているのも特徴の一つと言えるでしょう。
総合系コンサル・業務IT系コンサルの選考プロセス
選考プロセス1:書類選考
履歴書および職務経歴書によって選考が行われます。一部の業務・IT系、総合系ファームでは、志望動機書の提出を求めることがあります。志望動機に関するロジックがしっかりと構成されていることは、他のコンサルティングファーム同様、大切なポイントです。
戦略系ファームと比べて、スキルや業務知識を重視する傾向があるのでその点を踏まえて、前職などで習得した専門スキルをアピールした書類作成を行う必要があります。
選考プロセス2:筆記試験
一部の総合系ファームおよび業務・IT系ファームでは、論理的思考能力を測るために、適性検査を課しています。筆記試験に自信がある人でも、久しぶりに受験すると本来持っている力を十分に発揮できないものです。事前に傾向を押さえ、しっかりと対策を行うことが大切です。
選考プロセス3:面接
3~4名の面接官と1対1の面接が行われます。通常、志望理由や職務経験のインタビュー中心とする面接となります。また、論理的思考能力やディスカッション能力を確認するためにケースインタビューを課すファームも珍しくありません。
ケースインタビューは、ディスカッション形式の面接で、論理的な思考能力や問題解決能力、問題解決に臨む姿勢などが様々な角度から見られます。ユニークな面接のため、入念な対策なしに乗り越えることは難しくなっています。
尚、ファームによっては、職種・部門ごとに採用を行うこともありますが、ジュニアクラスでは入社後に本人の希望と社内リクルーティングにより配属が決まるケースもあります。その場合は、入社後に優先順位をつけて複数部門に応募を出し、各部門で評価に基づいた選考が行われて、配属が決定するという流れが一般的です。
昨今は、戦略部門の人気が高く、競争率が高い傾向にあります。
総合系コンサル・業務IT系コンサル出身者のネクストキャリア
総合系および業務・IT系コンサルティングファーム出身者のネクストキャリアは、外資系事業会社やベンチャー企業の経営幹部/幹部候補、他のコンサルティングファームへの転職(コンサルtoコンサル転職)など幅広い選択肢があります。ただし、経験するプロジェクトや所属する部門によって、習得できるスキルとネクストキャリアも異なってくるため、その点には注意が必要です。
勿論、転職せずにファーム内で昇格を重ねてパートナーとなる人も見られます。専門性を活かして、起業をする人も珍しくありません。
総合系コンサルティングファームの中でも、戦略コンサルティング部門では、外資戦略系ファームと同様の業務経験を積むことができるため、ネクストキャリアも戦略ファームと同様に、経営企画、事業開発系の経営幹部/幹部候補としてのキャリアなどがひらけています。
他のコンサルティングファームへの転職では、培った経験をもとに、戦略系、財務系、総合・業務IT系、シンクタンク系など、幅広いオプションがあります。
事業会社への転職では、大手事業会社で経営企画や事業開発に携わったり、ベンチャー企業の経営幹部へ転身したりするケースが多くなっています。
また、現在はITやデジタルの力を使って企業の変革を起こしていくDX系のプロジェクトの経験者が、多くの業界の企業で引く手あまたになっています。
なお、コンサルティング業界外に転職する場合は、20~30代までに転身するケースが大半です。40~50代のディレクター、パートナークラスになると、社会へ与えることができるインタパクトの大きさ、自由度の高さ、報酬面での魅力などから、コンサルティング業界に残るという選択をする人が多くなります。そのため、他のコンサルティングファームに同等以上の条件で転職したり、現職に残りながらスタートアップ支援を行ったり、大学での教育活動を行うなど活動の幅を広げる傾向にあります。
代表的な総合系コンサルティングファーム
- アクセンチュア
- IBM
- プライスウォーターハウスクーパース(コンサルティング)
- デロイトトーマツコンサルティング
- アビームコンサルティング
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング
- KPMGコンサルティング
- クニエ
- シグマクシス