監査法人アドバイザリー部門への転職[徹底解説]
監査法人アドバイザリー部門とは?
監査法人アドバイザリー部門とは、監査法人内に設置された一つの専門部署として、経営コンサル、ITコンサル、リスクコンサルなどのコンサルティングサービスを提供するプロフェッショナルチームです。
そもそも監査法人は、財務書類の監査又は証明を組織的に行うことを目的として、公認会計士5人以上が集まり設立される法人のことで、監査証明を主たる業務としています。
そのため、監査先のクライアントに対して提供できるコンサルティングサービスは、監査の独立性や透明性を保つ範囲でのテーマに縛られますが、クライアント企業に対する深い理解に基づいて専門性の高いコンサルティングサービスを提供しています。
昨今、大企業だけなく中規模の企業もコンサルティングサービスを活用するようになっている中、全国にネットワークを持つ監査法人アドバイザリー部門に対して、地方企業からの問い合わせも増えています。
そこで、大手監査法人は、アドバイザリー部門のコンサルティングサービスを成長領域と位置づけて、事業を拡大させています。
転職先候補として見ると、大手監査法人に所属するというキャリアの安定感や、全国的な拠点で勤務できる可能性などが大きな魅力です。
そのため、近年、コンサルティング業界への転職を考える人からの人気も高まってきています。
なお、監査法人の業界全体を俯瞰して見ると、グローバル化で企業取引グループ全体での国際的な会計監査が必要となることも多くなったため、大手の監査法人への寡占化が進みつつあります。
日本でも、あらた監査法人、あずさ監査法人、監査法人トーマツ、新日本有限責任監査法人が“4大監査法人”と呼ばれており、上場企業の監査の大部分を担っています。
また、4大監査法人は世界規模の大手会計事務所のネットワーク(Big 4)と提携関係にあり、あらた監査法人はプライスウォーターハウスクーパース(PwC)と提携、あずさ監査法人はKPMGと提携、監査法人トーマツはデロイト トウシュ トーマツ(DTT)と提携、新日本有限責任監査法人はアーンスト&ヤング(EY)と提携しています。
監査法人のポジション
・アナリスト(スタッフ)
・コンサルタント&シニアコンサルタント(シニア)
・マネージャー&シニアマネージャー
・パートナー
求められる人材要件
監査法人は公認会計士や会計士試験合格者でないと採用されないイメージをお持ちの人もいらっしゃいますが、アドバイザリー部門は該当領域の業務経験者やコンサルティング経験者を中心に採用しており、会計士資格を持っていなくても問題ありません。
監査法人のアドバイザリー部門は、経営コンサル、組織人事コンサル、官公庁向けコンサル、医療機関向けコンサル、金融機関向けITコンサル、セキュリティコンサル、統合型リゾート向けコンサルなど、多様な領域で専門的なサービスを展開しています。
それぞれのチームで業界知識や専門スキルを持つ人材を採用しているため、専門性を活かしてコンサルティング業界へ転職をしたいと考える人には大変フィットします。
監査法人アドバイザリー部門の選考プロセス
書類選考
履歴書および職務経歴書によって選考が行われています。
業界知識や専門スキルが重視されているため、全体構成やクローズアップさせるべき経歴などを踏まえた慎重な書類作成が求められます。
筆記試験
筆記試験の有無は監査法人によって異なります。
筆記試験が課される監査法人に応募する場合には、事前の対策が必要となります。
面接
監査法人の面接は、志望理由や業務経験などを問う一般的な内容で構成されています。
但し、監査法人アドバイザリー部門内にもコンサルティングファーム出身者が徐々に増えてきていることから、ケースインタビューが課される場合もあります。
しっかりと事前対策を行ってから面接に臨むことが大切です。
監査法人アドバイザリー部門出身者のネクストキャリア
監査法人アドバイザリー部門出身者のネクストキャリアは、事業会社への転職、他コンサルティングファームへの転職など多岐にわたります。
ただし、所属するチームや積んだ職務経験によって、ネクストキャリアは異なってきますので、注意が必要です。
経営コンサルの経験者であれば事業会社の経営企画部門や他経営コンサルティングファームへ、ITセキュリティコンサルの経験者であれば事業会社の情報システム部門や他の業務・ITコンサルティングファームへといったように、培った専門性を活用しながらの転身が主流です。
また、安定した顧客基盤を持つ組織であることから、監査法人アドバイザリー部門内でキャリアを形成し、長期間勤務される人も多数いらっしゃいます。
なお、監査法人の監査部門出身者(公認会計士)のネクストキャリアは、他会計事務所やコンサルティングを中心とするプロフェッショナルファームへの転職、ベンチャー企業や大手企業の経理財務部門が多くなっています。
プロフェッショナルファームへの転職では、会計領域の専門知識を活用して、財務系コンサル/FASやPEファンドへ転身するケースがあります。
また、高いポテンシャルを活かして、戦略系コンサルファームやシンクタンクの戦略コンサル部門へ転身する人も多数いらっしゃいます。
事業会社への転職では、ベンチャー企業のIPO準備室の責任者、CFOとしての転職も目立っており、公認会計士ならではのネクストキャリアと言えるでしょう。
代表的な監査法人
- PwCあらた有限責任監査法人
PwCあらた有限責任監査法人はプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のメンバーファームです。旧中央青山監査法人から独立した新しい法人で、ベンチャースピリットを感じさせる社風が特徴的。
2015年7月に「あらた監査法人」から「PwCあらた監査法人」に、次いで2016年には設立10周年とともに有限責任監査法人へと移行し、「PwCあらた有限責任監査法人」に名称を変更しました。 - 有限責任あずさ監査法人
有限責任あずさ監査法人は、2003年に設立されたあずさ監査法人と朝日監査法人が、2004年1月に合併して設立した監査法人です。2010年には有限責任監査法人に移行し、名称を有限責任あずさ監査法人に変更。全国主要都市に拠点をもち金融業、製造・流通業、IT・メディア、官公庁、ヘルスケアなど業界特有のニーズに対応した専門性の高いサービスを提供しています。
- 監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、1968年創業の日本最大級の会計事務所です。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援、ファイナンシャルアドバイザリーサービスなど幅広いサービスを展開しています。
- EY新日本有限責任監査法人
アーンスト・アンド・ヤングインターナショナルの常任理事国(10ヶ国のうちの一つ)を務めています。不動産・建築分野を中心とした幅広いクライアントを抱え、公会計部門に強みを見せるなどの特色があります。
2007年8月には、みすず監査法人から業務移管を受け、国内最大規模の監査法人となり、2008年7月1日には日本で最初の有限責任監査法人となりました。 - 太陽有限責任監査法人(太陽有限責任監査法人と優成監査法人が合併)