ケース面接の目的と評価ポイント

ケース面接とは~その目的と評価ポイント

ケース面接は、コンサルティングファームの選考プロセスで広く用いられる面接形式です。面接官から設定されたテーマについて、短時間で検討をした上で、面接官とディスカッションを行います。

設定されるテーマは、「日本にある温泉旅館の数は?」「ユニクロの売り上げを伸ばすには?」「都心の渋滞を緩和するには?」といったものなどです。これらの問いに対して、論理的に回答することが求められます。

特殊な面接ですので、コンサル適性がある方でも、全く準備せずに臨むと太刀打ちできません。一方で、「数学の公式のように、解き方を覚えれば何とかなる」「実際のデータやフレームワークを多く暗記しておけば大丈夫」といった類のものでもありません。

確かにケース面接の考え方にはコツがあり、知っておいた方が良いデータもあります。しかし、それだけでは面接を突破することは困難です。難関のケース面接で合格を勝ち取るため方法をお伝えする本特集。第1回では、ケース面接の概要を整理し、次回以降で具体的な対策方法を解説します。

ケース面接の実施方法

コンサルティングファームの面接では、ケース面接が中心となります。面接官との簡単な挨拶が済んだ後、いきなりケース面接に入ることも多いです。

ケース面接の進め方は、空中戦パターン、プレゼンパターンの2つがあります。

ケース面接には空中戦とプレゼンの2パターンがある

1.空中戦パターン

面接官から「大学ではアメフト部に入っていたんですね。では、日本のアメフト人口を増やすにはどうしたら良いと思いますか?」などと聞かれ、考える時間が与えられることなく、そのままディスカッションに入るような形式です。

空中戦パターンは、このように自然な会話の流れでケース面接がはじまる点に注意が必要です。「○○を行えば、増やせると思います」などと、思わず即答しそうになりますが、ぐっと堪えてください。思いつきのアイデアを話すと、「なぜ、そう思うの?」と突っ込まれて、答えに窮することになります。

答えを急がずに、順序立てて議論を進めましょう。また、面接官との会話の中で、ケース面接がはじまったと気づけることも大切です。

2.プレゼンパターン

面接官よりテーマが設定され、シンキングタイムが与えられた後で、検討内容をプレゼンする形式です。具体的には以下のような流れが多くなります。

①テーマに関する説明

面接官より出題内容が設定されます。設定された内容に関して不明瞭な点があれば、この段階で面接官に質問して認識を合わせましょう。

②シンキングタイム

応募者が1人で検討する時間が与えられます。設定される時間は、5分~10分程度のことが多いです。

③プレゼンテーション

検討内容を面接官に説明するパートです。オフィスでの面接の場合、ホワイトボードを用いて説明することもあります。

プレゼンにおいては、検討結果の結論を述べるだけではなく、結論に至るまでのプロセスを論理的に説明することが重要です。制限時間が設けられることは稀ですが、冗長な説明を避け、分かりやすく説明しましょう。

④面接官からの質問・ディスカッション

プレゼンの内容について面接官から質問があり、そこからディスカッションがはじまります。20~30分程度のディスカッションを行うこともあり、評価に最も影響があるパートと言えるでしょう。

ケース面接の目的

コンサルティングファームの選考では、なぜこのようなケース面接を実施するのでしょうか。この「ケース面接の目的」をしっかりと理解することが、選考突破のカギとなります。

ケース面接は、「ディスカッションパートナー」としての適性を判断するため行なわれています。コンサルティングファームで一緒に働く仲間としてふさわしいのかが問われていると言ってもよいでしょう。

ケース面接の目的はディスカッションパートナーとしての適性判断

もちろん、頭の回転の速さや論理的思考力など、いわゆる「地頭の良さ」を試すという面もあります。一方で、どれほど地頭が良くても、自分の考えに固執しすぎたり、面接官の指摘を素直に受け止められなかったりすると、「この人とは一緒に仕事ができない」と判断されるでしょう。逆に、面接官からの指摘に何も返せないと、ディスカッションパートナーとしては物足りなく映ってしまいます。

実際のプロジェクトにおいても、先輩コンサルタントたちの高度な議論に何とか食らいついて、自分なりの意見を出さなければなりません。ケース面接ではそうした素養を判断するため、面接官とのやりとりの中で建設的に議論を重ね、より良い結論を粘り強く目指せるかどうかが重視されるのです。

ケース面接で評価されるポイント

ケース面接の目的を踏まえると、以下2点が重視されると言えます。

1.「モレ」のなさ

ケース面接では、出題される問題に対して最適な解を導く「問題解決能力」が求められます。この問題解決を進める上では、「論理的思考力」が不可欠です。

論理的思考においては、「MECE(ミーシー)」の考え方が基本となります。とは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略語で、「モレなくダブりなく」と訳されることが多いです。課題を分析する際に、網羅的に全体像を捉え切れているか、分類が重複していないかなどを確認する手法であり、ケース面接においても重要な観点となります。

ケース面接に欠かせないMECEの考え方

特に、モレがある回答は一見して分かりやすく、それゆえ面接官から指摘されやすくなります。たとえ面白い回答だとしても、「なぜこの要素を検討しないのか」「この要素を踏まえると別の方向性もあるのではないか」と突っ込まれてしまうでしょう。

ケース面接においては、結論の内容よりも、結論に至るまでの検討プロセスこそが重視されます。そしてそのプロセスにおいて、「全ての要素を検討した」と言えるよう、モレなく筋道立てて考えることが必要なのです。

2.粘り強さ

前述の通り、ケース面接では面接官とのディスカッションが重視されます。そのディスカッションにおいては、たとえ厳しい指摘があったとしても食らいつく「粘り強さ」がカギとなります。

「粘り強さ」と言っても、自身の意見にこだわり、何が何でも主張を貫き通すこととは異なります。ディスカッションを通じて、より良い結論へとブラッシュアップしていくことが目的なので、面接官と議論を積み重ねていくことが大切です。

たとえば、自身の考えに対して矛盾点を指摘されたとしても、「いや、そうではないと思います」などと反論して終わるのではなく、「ご指摘を踏まえると、・・・・・・という考え方ではどうでしょうか」といった形で、面接官の意見を踏まえて改善案を出せると望ましいでしょう。

面接官はコンサルタントとして活躍している方々です。指摘は鋭く厳しいものが多くなります。そのため、つい思考停止して諦めてしまいそうになるかもしれません。それでも諦めず考え、意見を返せるかどうかが、合否を分けることになるのです。

ケース面接を正しく理解して、対策を進めよう

今回はケース面接の目的や評価ポイントについて解説してきました。ケース面接は小手先の知識やテクニックを身に付ければクリアできるわけではありません。ケース面接について正しく理解した上で、準備を行うことが重要です。

次回は、ケース面接の出題タイプや、具体的な準備の進め方について解説していきます。

著者/監修者

西谷 有生

西谷 有生

コンコードエグゼクティブグループ|マネージングディレクター

新卒で外資戦略ファームのBooz & Company(現Strategy&)に入社以降、戦略コンサルを4年半経験。前職リクルート社にてケース面接対策セミナーの講師を担当。現職コンコードでも外資系を中心に戦略ファームへの転職支援で豊富な実績を持つ。