BCG (ボストンコンサルティンググループ) インタビュー
世界トップレベルの戦略系コンサルティングファーム、ボストン コンサルティング グループ。
トップを走り続けるための「BCG流の思考回路」、カルチャー、BCGerの魅力などについて、パートナー&マネージング・ディレクターの丹羽様に伺いました。
インタビュアーは、BCGアラムナイでもある弊社大野と、やはりポストコンサルである朏。
同社の強さの根源を垣間見ることのでき、BCGへ興味をお持ちの方はもちろん、現役コンサルタント、ポストコンサルの方にとっても、興味深くお読み頂くことができるインタビューとなっております。
Index
#1 全てのプロジェクトにおいて「リアルインパクトを出す」
CEG 大野:
本日はBCGの特徴や社風などをざっくばらんにお伺いできればと思います。
まず、BCGで今取り扱っているプロジェクトはどのようなものなのか?という点についてお聞かせいただけますか。
弊社に相談にいらっしゃる方々の多くが興味を持たれていて、「BCGでは、戦略プロジェクトと非戦略プロジェクトの割合はどのくらいなのですか?」といった質問を受けることがよくあります。
BCG 丹羽:
大前提として、弊社が扱うプロジェクトに関して戦略プロジェクトと非戦略プロジェクトという区別はありません。
弊社が扱うプロジェクトのテーマはCEOが関わる経営のトップイッシューです。
そのため、どのプロジェクトにおいても、全社の観点からいかなる戦略をとるかという点の検討は必要不可欠な要素となってくるのです。
BCGが、プロジェクトを通じて目指しているのは、「インパクトを出す」ということです。
このインパクトの出し方は様々で、戦略を構築する事や意思決定を支援することでインパクトを出すこともあれば、実行する事の難しさという点を汲み取りながら解決策を検討する、場合によっては実行自体のサポートを通じて財務面などのリアルインパクトを出すところまでご支援する場合もあります。
いずれにしても、キーワードは「インパクトを出す」という事です。
CEG 大野:
全社的な観点から取り組み、クライアントにインパクトを生み出す、ということですね。
BCG 丹羽:
そうですね。
インパクトを生み出すためには、現状を正しく理解し、何を目指していくかを明らかにした上で、そこに到達するためのアプローチを検討することが必要となります。
例えば、競合に勝つために何を優先すべきかを検討し、それを実行するために必要なものを準備し鍛えあげ、実際に実行してインパクトを出していくということです。
つまり弊社は、「IT」や「財務会計」といった特定領域を切り出して考えるのではなく、戦略~実行の縦軸について、しっかりとしたステップに基づきインパクトを出すところまで繋いでいくことになりますね。
CEG 大野:
昔、私がBCGに在籍していたとき、プロジェクトメンバー全員がワークプランを毎日見直すということをやっていましたが、これはどのようなテーマのプロジェクトでも、その時点での情報を材料に、CEOと同じ視点で何をすべきか考えるということを繰り返していたのですね。
いわゆる実行支援と言われるテーマのプロジェクトでも、そういう目線で取り組んでいましたね。
BCG 丹羽:
まさにその通りです。
弊社には、決められたプロセスに従って粛々と進めていけばいいようなプロジェクトはありません。
戦略策定後の実行を支援する段階でも、戦略で定めた通りに実行できるのか、戦略策定時に気付いていなかった大きな見落としはないのか、例えば新たな競合の参入などを再度検討し、現場で検証していくというプロセスを回していきます。
これがメンバーにとって幸か不幸かは分からないですけど(笑)、日々ワークプランを考え直して戦略自体を見直すということを実行しています。
#2 業績好調の主要因は、徹底した「クライアントファースト」
CEG 大野:
この仕事をしていると数多くのコンサルティングファームとお付き合いをしていますが、BCGはずっとビジネスが好調に推移していますね。
BCG 丹羽:
お陰様でそうですね。
CEG 大野:
長期に渡って好調を維持できている原因について、丹羽様はどのようにお考えでしょうか。
BCG 丹羽:
当たり前な話かもしれませんが、一点目はクライアントフォーカスを徹底しているところかと思います。これは、口で言うほど簡単なことではありません。
例えばコンサルタントは、自分が得意な戦略だとか「この業界の勝ち方はこう」というようなセオリーを語りがちです。
しかし弊社はクライアントの立場に立って考え、クライアントにとって、もしくはクライアントの中の誰々さんにとって、本当に何が必要なのかということをとことん考え、議論します。
クライアントフォーカスという思考回路が癖として染み付いている点が大きいと思います。
二点目は、チーミングです。
弊社では、パートナーが特定クライアントを一人で担当するのではなく複数のパートナーでチームを組んでご支援しております。
これにより一人のパートナーではカバーできない領域や観点を補うことができ、より高い付加価値を提供することができます。
昨今は全社的なテーマに取り組みながらも、業界や機能という軸で研究グループを組織し、専門知識の研鑽・蓄積にもより力を入れています。
経営課題が複雑化している中で高度な専門性が必要となるプロジェクトも増えてきているためです。
そのような専門性を組み込むことで一人のパートナーの能力を限度としたサポートではなくて、グローバルの知見も含めたBCGという大きな箱を最大限に活用したサポートが可能となります。
これはインパクトを出すときに非常に重要な要素となってきています。
CEG 大野:
なるほど。
BCGではクライアントフォーカスという思考回路が徹底していて、それをチームで且つパートナーにまでストレッチを求めるスタンスで取組んでいらっしゃるわけですね。
今の話は、どのような人材がBCGで活躍できるか、を考える場合にも影響してくるのでしょうか?
BCG 丹羽:
当然、影響してきます。他ファームのことは私も分かりませんので比較はできませんが、少なくとも弊社では一点目のクライアントフォーカスを徹底しておりますので、自分の為ではなくクライアントの為に仕事をしたいという気持ちが強いことは、弊社で働く上で大事な要素になります。
そしてもう一つ大事な点は、インテレクチャル(知性)の強さですね。
クライアントが日々考え抜いても答えが出ないことについて、一緒に答えを出しに行くというのが弊社の使命ですので、考える力というのが非常に重要です。
従いまして、正解のない問いをあきらめずに追及する姿勢と、既存の枠組みを超え思考する力が求められています。
CEG 朏:
BCGは今、業績も好調で拡大傾向にありますが、3年や5年先といった将来的なビジョンはどのようなものでしょうか?
BCG 丹羽:
まず弊社が既存のクライアントに対してしっかりと貢献できている事が大前提ですが、まだまだ弊社が貢献できていないクライアント、つまりホワイトスペースが非常に多くあります。
ですので、貢献できるクライアント数を増やしていきたいと考えています。
同時に、クライアントという枠を超えて業界や社会に対して貢献をしていくことも非常に大事なことと捉えています。
これはプロボノ等を通じたNPO支援と言う形の社会貢献にとどまらず、クライアントに対するプロジェクトを通じたビジネス側面からの社会貢献という要素もあれば、ダイレクトに業界や官庁含めた公的機関に対する貢献ということもあります。
そういった形でクライアントだけではなく、社会全体に対して色々な側面で貢献していくことをBCGは非常に大切にしています。
CEG 朏:
なるほど。最近、課題先進国という話も良く聞きますが、そういった社会課題の解決に対して産業も含めて色々とサポートしていこうということでしょうか?
BCG 丹羽:
そうですね。
今も色々と取り組んでいますが、そのようなニーズがますます拡大していく中で、そういった部分を強めていければと考えています。
#3 成長意欲のある人材を手厚くサポートする育成の仕組み
CEG 大野:
話は変わりますが、コンサルタントというキャリアにチャレンジする場合、プロフェッショナルとしての覚悟が必要で、その上で「成長するもしないも自己責任」というのが当たり前の世界ですよね。
BCGほど手厚く成長をサポートしてくれるファームは、なかなかないと思います。
この成長サポートという点に関して、現在の取り組みを具体的にご紹介いただけますか?
BCG 丹羽:
まず、成長し続けたいという気持ちを持っていることが大前提になります。
成長に向けて自身で努力していくことが絶対条件で、これがある限り我々はサポートしますし、成長機会を提供します。
その上で、育成を加速するための3つの仕組みがあります。
一つ目はOff -JTで、入社時だけでなく、定期的な研修も含め国内外問わず幅広いトレーニングを実施しています。
二つ目はプロジェクトを通じたOJTです。徒弟制度に近いようなもので、プロジェクトの中で必要なスキルを身につけていくというものです。
三つ目は、非公式なトレーナーと呼ばれる人たちがいることです。
BCGはおせっかいな人が多い組織なので(笑)、何か悩み事があるとか、この人の話を聞きたいとか、この人について行きたいという人がいた場合、積極的に相談にのる風土があります。
このような関係を築いていく中で個別にトレーニングを実施するなど、私的な徒弟制度もできています。こういった非公式なトレーニングがあるのもBCGの特徴ですね。
具体的にはこの3つで育成の仕組みが成り立っているのですが、それとは別に個々人に対してキャリアアドバイザーがついています。
キャリアアドバイザーがプロジェクト単位を超えて個々人のキャリアをどのように設計していくかを一緒に考え、サポートしていくというオフィシャルな機能があります。
また、プラクティス・グループ(業界・機能に関するテーマ別研究グループ)単位でも個々人をサポート、育成しています。
CEG 大野:
成長意欲の有る方にとり、理想的な環境が整っているように思います。
私がBCGに入社したときは36歳でしたが、困ったときに若いアソシエイトの方に随分助けられ、色々アドバイスをいただきました。
忙しいのに助けを求めると快く教えて下さる方ばかりで、そうした方々、そうしたBCGカルチャーに、今でも忘れず、感謝の気持ちを持っています。
BCG 丹羽:
おっしゃる通り、ここはBCG”らしさ”の一つの源泉なので是非大事に残していきたいカルチャーですね。
CEG 朏:
今、カルチャーの話が出ましたが、BCGのカルチャーを一言で表すとどのようなものでしょうか?
BCG 丹羽:
難しい質問ですね(笑)。
昔はよく動物園という言い方をしていました。
私の解釈では多様性を重視するカルチャーであるが故に色んな動物がたくさんいて、同じ檻に入れると面倒くさいので別々の檻に入れて鑑賞しなければならないというイメージで、動物園と表現していたのではないかと(笑)。
それを今で言うと・・・少し違う軸で表現したほうが当てはまると思うのですが、熱さを持った様々な色が集まった集団になってきていると思います。
先ほどインパクト思考と申し上げましたが、自分なりのインパクトをどのように出すのかを真剣に考える傾向が社内で強くなってきています。
真っ赤に燃えさかる炎のような人がいれば、青白いが消えずにしっかり燃え続ける炎をもっている人もいて、この炎が色々あるんですよね。
そういう意味でぱっと見で分かる動物園とはちょっと違う形になってきています。
ある種では多様性を持っていて、その多様性がクライアントや社会を変えるインパクトに向かっているというところが今のBCGの特徴だと考えています。
とっさにイメージするとこうなりますね(一同笑)。
CEG 大野:
素晴らしいですね。
そんなBCGで働いていく中で、やりがいや喜びを感じるところは人それぞれだと思うのですが、この点についてお聞かせいただけますか?
BCG 丹羽:
よく我々は3つのやりがいがあると言っています。もちろん、これは人それぞれで正解というのはありません。
一つ目はインパクトが結果として見えたときの喜びです。
例えば朝起きて新聞をみたら、自分がサポートしたクライアントの成果が記事に載っているというように、自分の仕事が世の中に結果として出てくる事がやりがいにつながる人もいます。
二つ目はクライアントなど、直接的に誰かに喜んでもらうことです。
三つ目は真理追究派と呼んでいるのですが、誰も見えていなかったものが見えるようになったときです。
もちろんインパクトは全員が大事にしていることですし、全てのやりがいはインパクトに繋がるのですが、どういうときにより嬉しいと感じるのか人それぞれです。
CEG 大野:
3つのやりがいが、コンサルタントとしての成長に伴い、大きくなっていくのかもしれませんね。
日々のプロジェクトの中で、例えば作成したスライドが認められ採用されるとか、一回褒められたとか、そういう小さなことから積み上げていき、だんだんできなかったことができるようになり、生み出せるインパクトも大きくなっていって、真理も見えてくる。
そうして、3つのやりがいがそれぞれ大きくなっていくのかなと思います。
これからBCGに入社される方にはそこを目指して頑張ってほしいなと思います。
BCG 丹羽:
是非そうしてほしいですね。
#4 BCGへの応募に際して
CEG 大野:
採用に関するBCGの特徴をお伺いできればと思います。
例えば、ケース面接では特にここに注目して見ている、こういうところでNGになる等、具体的な点をお聞かせください。
BCG 丹羽:
これを言ったからNGになるということやこれを言えばOKということは特にありません。
ケースバイケースですが、弊社が重視しているところはまさに先ほどお伝えした3点ですね。
一つ目はインテレクチャル(知性)です。これは弊社の仕事にとって不可欠なものですので、しっかり見ています。
二つ目は、クライアントの為に働くという気持ちがどれぐらい強いのか。
三つ目は、チームの一員としてちゃんと機能することができるのか。
チームワークには、他人に対する尊敬という側面が含まれています。BCGには、一人で完結できる仕事はありません。個々人に任された仕事をしっかりこなすのはもちろんですが、お互いの業務をすり合わせてクライアントに提示するので、必然的にチームワークが重要になってきます。
CEG 朏:
今後BCGに応募を検討している方に対して、メッセージをいただけますか?
BCG 丹羽:
少しでもBCGに興味をお持ち頂いたら、是非応募してみてください。
BCGはこういう方じゃないと合わないといった、型に嵌った判断をする会社ではありません。
色々な方にチャンスは広がっていると思いますので、ご自身で線引きをしてしまわずにぜひご応募いただければと思います。
選考プロセスというのは、弊社にとっての選考であるのと同時に、候補者の方にとっても弊社を選考する場であると思っています。
もしBCGに入社いただく事になれば、その期間は我々と濃密に過ごすことになるため、応募される皆様に覚悟を決めて来ていただく必要があります。
ある意味BCGを選考するくらいの気持ちで臨んできてほしいですね。
CEG 大野:
BCGを卒業して社外に出て気づいた点で言うと、すごくフラットですよね。
例えばプロジェクトの中で若手のアソシエイトがパートナーに対して、ファクトとロジックを武器に「より面白いインサイトを出そう」と挑むことを許容する土壌といいますか、誰が何を言っても良いっていうカルチャーは、今考えると非常に魅力的だと思います。
そこは今でも変わりませんか?
BCG 丹羽:
はい。そこは今でも変わりませんし、これからも変わらないようにしなければならないというのが、パートナー含めBCGとして考えていることですね。
クライアントフォーカスに重きを置くと言うことは、裏を返せばクライアントに最善のソリューションを提供するためには、階層や役割の上下に関係なくおかしいところは指摘するというカルチャーを大切にすることかと思います。
CEG 大野:
だからこそ、このカルチャーが維持できているのですね。パートナーが、“いつでもケンカ売って来い”と言っているのは、すごく貴重なカルチャーだと思います。
本日はどうもありがとうございました。
編集後記
昔からBCGのコンサルタントに「BCGはなぜ強いのか?」とよく尋ねるのですが、それぞれまちまちな回答が戻ってきて、定説というものがなく、まさに多様性を重視するBCGらしい話と考えていたものでした。
今回のインタビューを通じ感じたのは、そうした多様なメンバーがポジションの上下に関係なく一つのチームとなって「クライアントにインパクトを生み出すこと」にとことんこだわっていることこそが、BCGが最高のバリューを生み出し続けることができる根源的な強みなのではないか、ということです。
「何がなんでもクライアントに貢献したい」「世の中に価値を生み出したい」
そんな強い思いをお持ちの方にぜひチャレンジいただきたいファームですね。
慶應義塾大学経済学部卒業。
国際協力銀行、ローランドベルガーを経て現在に至る。